第2話 事実確認

「ならば、いつどこで私が貴女の頬を叩いたのでしょうか? 詳しく教えてください」

「ふん! そうやって逃れようとしても無駄だぞ。思い出すのも辛いだろうが、証言したことをもう一度改めて言ってくれニアミーナ」


 ユリアンカは、ニアミーナと知り合いだったのかどうかについては一旦置いておくことにした。そして、イジメを行ったという話について確認するために質問した。


 淡々とした雰囲気で質問するユリアンカを見て、事実を明らかにしてやると考えるアーベルト。改めて証言したことを、この場で言うようにとニアミーナに指示した。


「え、えぇ。あれは、確か、いつだったかしら……」


 頬を叩かれた時の事について証言するように言われたニアミーナは、しどろもどろになった。すぐに答えられず、思い出そうと必死に。


「やはり思い出すのも辛いか? 二ヶ月前のことが」

「そ、そうでした。二ヶ月前に学園の廊下で、あの女に強く叩かれましたッ! 頬が赤くなった跡が残るほどに。それで、そんな状態では人前に出れず授業も休むことになって……。あの日は、とても辛く悲しい日でした。なんで、こんな事をするのかと悲しくて辛くて……」

「……二ヶ月前?」


 証言を聞いたユリアンカは、疑問に思った。


「二ヶ月前ということは、○月✗日でしょうか?」

「そ、そうよ!」

「場所は、学園で間違いありませんか?」

「そうよ! 学園の廊下で、ばったり出会って急に!」

「他に誰か居ませんでしたか?」

「誰も居ないわよ! その時は誰も居ない廊下だったから」

「時刻は午前でしょうか? それとも午後?」

「えーっと、お昼の後よ!」

「詳しい時間は? 何時頃でしょうか?」

「そんなの、ハッキリと覚えてないわよッ!」

「止めろ、ユリアンカ! そんな無駄な質問ばかり繰り返して! 彼女に辛い記憶を無理やり思い出させるなんて!」


 無表情のユリアンカが、矢継ぎ早に質問を繰り返す。それを慌てて答えていくニアミーナ。それを横で見ていたアーベルトが止めた。そんな行為は無駄だと言って。


 だけど、ユリアンカにとっては必要な質問だった。


「○月✗日に私は学園には居ませんでした。とある用事があって、休んでおりましたので」

「そ、そんなはず無いわ」


 そもそも、ユリアンカは学園に行っていない。だから、ニアミーナに会えるはずもないので頬を叩くことは出来ない。


「いえ、日付は私の勘違いだったわ。叩かれたのがショックで記憶も曖昧なのッ! だけど、酷いことをやられたのは、それだけじゃないわよ!」

「ならば、すべての話を詳しく教えてください」


 記憶違いだったと言うニアミーナの様子は、とても怪しく見えた。堂々とした態度で、話を聞きたいというユリアンカ。ちゃんと全てを確認するために。


 誰がどう見ても、ニアミーナが嘘をついているとしか思えなかっただろう。なのにアーベルトは、ユリアンカを睨み続けている。彼女が悪だと確信して。

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