第11話

 男の子が突然声を上げた。


「あ!」


「え?」


「ぼく先に攻撃したから、セイトウボウエイにならないじゃん!」


 ああ、そういえばそんなことも言ってたな。死なないようにする話のすぐあとぐらいに・・・・・て、それどころじゃないでしょ!


「あの、フランクさんは本当に死なないの?このまま放置しても大丈夫なの?」


「あ、あー・・・だいじょばない。とりあえずこれ引っこ抜かないと」


 戦槌の柄の部分は、まだフランクの腹から背中に貫通したままだ。


「うん、めんどくさいから適当でいいや」


「え、ちょっとまっ・・・」


 フランクが何か言いかけたが、男の子は戦槌を力いっぱい引き抜いた。


「ぎゃあぁああ!」


 ブシャアア!


「きゃっ!」


 あまりの流血に声が出てしまった。


「よし!」


 え、何が?


「あとは何とかして血の量をもとに戻すだけだね!」


 そう言うと男の子は、地面に飛散した血液の一つに人差し指を伸ばして、ちょんと触れた。それからその指を上向きにすると、その先に小さな魔方陣が現れて、今度は指先についた血液がブクブクと膨れ上がっていく。


「うわ、なにこれ」


 男の子の指先には、どろどろの血液の塊が浮いていた。


 男の子は、その指をうずくまって動かないフランクの背中に突き刺した。すると、空中の血液が、指とフランクの背中の皮膚の隙間に吸い込まれていく。


 なんだかよくわからないけど、とんでもない荒業じゃないのかなぁ。


「よーし、これにて一件落着!」


「え、フランクさん、全然動かないけど大丈夫なの?」


「うーん、これぐらいなら休んだら治るんじゃない?」


 えー・・・広場の石畳の上に放置するのはちょっとさすがにダメでしょ。


 すると、後ろから声がした。


「あ、リンちゃん!大丈夫?ケガはない?」


「アーヤ先輩!」


 駆け寄ってきたのは、きれいな長い髪を持った女性の、アーヤ先輩だ。先輩は同じ巫女見習いの年上で、幼いころから仲が良くて姉のよう慕う人物だ。


「ちょうどいいところに!このフランクさんを介抱してあげたいの」


「え・・・血が、血がめっちゃいっぱい出てる」


 アーヤ先輩は近づいてからようやく私たちの惨状に気が付いた。


「違うよ。出血はもう止まってるから、全然大丈夫だよ」


 男の子が答えた。

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