第9話
フランクの話術によって、周囲の雰囲気がだんだんと尋常ならざる感じになっていった。
私の近くに男の子がいて、その反対にフランク一行、それらを取り囲むように野次馬たちがいた。みんな、殺気立った目で男の子を見ていた。
「お嬢さん、わかっただろう。そこを離れなさい」
フランクはそう言うと、再び武器を構えて自らも殺気のこもった目でことらのほうを睨みつける。
怖い・・・離れなきゃ・・・・・でも、周り中怖い男の人ばかりだ。
結局、私は男の子と、野次馬の中間くらいの何もないところにへたり込むことしかできなかった。
涙で頬が濡れるのを感じる。
情けない・・・こんなことで怖気づいて、本当は男の子を助けてやりたかったのに、これではもう、何がしたいんだかわからない。
せめて私にもう少し度胸があれば・・・。
でも、私から少し離れたところにいる金髪の男の子の発した声は案外明るかった。
「え、もしかしてぼくと戦おうとしてるの?うーん、僕は手加減しないからね。死なないようにはするけど」
・・・え?
「そっちが先に攻撃してね。そうじゃないとセイトウボウエイにならないからね!」
この子には恐怖心がないのだろうか。私とは大違いで全く怖がる様子がない・・・それどころか、さっきと打って変わってわくわくしたそぶりを見せている。
「貴様、その自信はどこから来るんだ。先ほどまではあんなにしおらしかったのに、明るく振る舞っても貴様の罪が清算されるようなことはないのだぞ」
「え?よくわかんないけど、ぼく絶対負けたりしないからね」
男の子とフランクとそのパーティーである「大槌」達が対峙する。
「よーし、行くよー!」
あれ、正当防衛は?
男の子はすたっと駆けだした。瞬間、フランク達も動き出す。
フランクは戦槌を振りかぶり、魔法使いは魔方陣を展開して、射手は引き絞った弓を話して矢を射った。
私は、思わず目をつむった。
戦いは、目をつむった一瞬のうちに終わったらしい―――――魔法使いの女性は地面に倒れ、射手の腕には矢が刺さっていて、僧侶の男性はなぜか服が全部はだけて全身があらわになっていた。
そして、金髪の男の子は戦槌の頭の部分を両手で持っていて、その柄の先がフランクの腹部を貫通していて、血が出ていた。
え、なにこれ、結構グロい。
「に、逃げろー!」
「大槌」が戦闘不能になったのを見た野次馬たちが一斉に逃げ出した。
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