第8話

「お前、その怪物をかばう気か?・・・なら、説明してやろう。俺たちはな、はそれをやっつけないといけない理由があるんだ」


 フランクは、急に優しい顔つきになって話し始めた。


「まずそいつは、ここまで来るのに町の衛兵など、多くの人にけがをさせた。さらに店の物を無賃で食べたり、それ以外にもこのオルトメーン王国の法律をいくつも犯している」


 ざわっと、私たちを遠巻きに見ていた人たちが少し動揺したそぶりを見せる。


「え!?そうなの?」


 私は男の子ほうを見て尋ねた。


「え・・・ご、ごめんなさい・・・」


 男の子は、見るからに申し訳なさそうにうつむいた。


「え、ホントなの?」


「で・・・でも!死ななかったし、そのあとに困らないようにちゃんとケガも直したよ!」


「は!怪我を治すというのはどうことだ!そんなこと国王様が持つ専属の回復魔法術師しかできないだろう!どちらにせよ、人に怪我をさせたのは変わらない。危険な怪物は今のうちにつぶしておくべきだ。そうだろう皆の者!」


 フランクは周囲に呼びかけた。周りの反応は様々だったが、一様に、まだ状況を見守ろうという感じだった。


 フランクは続けた。


「そいつの罪はまだある!そいつは自身の力をちらつかせて、店で無銭飲食を行った。もはや暴力に等しい!」


「ちがうよ。分けてくださいって言ったら作ってくれたんだよ」


 ここで、群衆の中から一人前に出てきた。


「いいや、この子供は確かにうちに来た。そして、魔法で店を荒らされたくなかったら、飯をよこせと言ってきたんだ」


 周りが色めきだつ。


「あ、あれは・・・欲張り亭の店主!」


 周囲の誰かが言った。店主と呼ばれた人は、エプロンを着たちょっと痩せ型の男性だった。


「嘘だ!ぼくはそんなこと言ってない!」


「嘘つきはそっちだろう!悪魔だ!そいつは、可愛い姿で人を惑わすんだ!」


 店主が声を荒げると、野次馬たちのいくらかがぎょっとしたそぶりを見せた。


「あ、あのいつも穏やかな店主が・・・」

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