第2話

 他の隊員も加わり、7人全員の魔力回路と中央の魔方陣がつながった状態となる。つまり、同期をするには、全員が息を合わせる必要がある。高度に訓練されていなければ不可能である。


 そして魔方陣を基盤に新たな魔方陣を空中に編んでいく。編み上げていくのは偽情報のような結界を張る魔法ではなく、レーザービームによって敵を焼き殺す魔法である。


 2時間待ったのはだるかったがほぼ最高のコンディションでいた俺たちは、過去最高の5段まで魔方陣を組むことに成功した。城壁塔の屋上の空中に巨大な魔方陣が浮かんでいる。


「ふぅ、ふぅ」


 極度の集中によって皆限界が近く顔が上気して汗を流していた。


 ・・・すべてやった。我々にできることはすべて。


「フレイムレーザー!!」


 その瞬間、魔方陣から特大の光線が敵のほうへ放たれた。


 光線は街道を堂々と歩くミョルニルへ一直線に向かった。なお、街道は交通規制によってすっからかんなので巻き添えを食らう人はいない。


「やった!やったぞ!」


 意味不明な敵ではあったが、全力を出し切った達成感があった。


 隊員たちと喜びを分かち合おうとした・・・のだがそれは叶わなかった。


「た、隊長!生きてます!」


「え?」


 隊員が敵のほうを指さす。再び望遠魔法で確認すると・・・


 本当に、いた。先ほどと変わらぬ様子で歩く金髪ショタが。なんで??


 周りは黒焦げになっていた。下草は火の粉を散らしているし、地面もよくわからないがレンガみたいに固まっていた。それなのにそいつだけが無駄に立派な服をキラキラさせている。


「ミョルニルが魔方陣を構築しています!」


 いつの間にかそいつが、両手を上にあげてそこから魔方陣を編み上げていた。


 ん?なんだあれ。一人で作るにしては無駄に大層なつくりだな。あれは、なんだ。あれは・・・。


「攻撃魔法です!」


「即席共同魔法、ヘビーシールド!」


俺の号令によって、隊員たちは陣形を作り、再び魔力回路を連結して同期を図る。魔方陣は使いきりなので「共同魔法」というまた違う方法を使う。


 ミョルニルの攻撃魔法に対してヘビーシールドで防御しようとしているわけだが、俺たちは敵の攻撃魔法がどんなだかよく知っている。よーく知ってるとも。


 だって・・・だって俺たちがさっき作った魔方陣と全く同じだから!!


 本来7人がかりで作る魔方陣を一人で作ってる!おかしい!!そしてなぜ!?なぜ、そんなしなくてもいいことを・・・。


 そして俺は気づいた。奴の表情がいたずらっぽく笑っていることに。


 やばい。やばいかもしれない。


 その表情は、幼い体格と顔にとても似合うものであるが、頭上に巨大魔方陣を浮かべながらの表情としては間違ってる。間違ってるよね??


 少しするとついに魔方陣が完成し、さっき敵に向けて撃ったその光線が、今度はこちらに飛んでくる。


「ヘビーシールド、展開!!」


 ぶっちゃけ、防ぎきる自信はなかった。準備にかかる労力も消費魔力量も全然違うからね。


 ヘビーシールドは、魔力を消費して敵の魔法攻撃を防ぐ魔法だ。シールドに光線が当たり、あっという間に魔力を消費していくのを感じた。魔力が底を尽きると、俺の意識は消えた。

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