怪物と一緒

キャビアうどん

第1話

 俺たちはとある国からの特殊任務のために、城壁の上に立ち、円陣を組んていた。俺たちの中央には、立派な魔方陣が描かれている。


 魔方陣を囲む俺たち7人は、国中から集まる魔術師たちから選び抜かれた国王直属の最高位魔術師部隊「黒の杖」である。軍隊が持つ使い捨ての魔術師部隊と違って、戦争ではなく特殊な任務に使われるために少数精鋭であり、国内で最強の魔術師だと言われている。


 そして俺は、「黒の杖」の隊長である。


 そんな俺たちに下された命令が、「何やらでたらめに強い怪物が来ているので、退治してほしい」というものだった。


 ちょっと待った、なんだ「でたらめに強い」って。こんな命令初めてだ!ドラゴンとか、敵国の精鋭とかじゃなくて?


 聞けば、ドラゴン最上位種のホワイトドラゴンよりも強いとのこと。これを検証したのは情報収集に特化した「銀の杖」で、彼らによると「ホワイトドラゴンよりも定量魔力が11倍以上ある。って言っただけだから期待はしないでね!てへっ☆」だそうだ。定量魔力は、魔術師や魔物がどれくらい魔法が使えるか指標になる数値だ。


 そんな怪物のコードネームは「ミョルニル」。ホワイトドラゴンでさえ全く気が抜けないのに、それよりも強いとなると、常に最高級の警戒をしなければならないことになる。


 ここまで説明を聞くと、俺も「でたらめに強い」という表現に納得してしまう。もはやこの国の運のなさに嘆くしかない。


 さて、話を戻すと、俺たちは城壁の上、正確には壁門を左右から挟むように建てられた塔の屋上で魔方陣をいつでも起動できるように定位置で待機していた。魔方陣は魔力を保有しており淡く輝く。


 そしてこの城壁は、都市に3重もある城壁のうち、一番外側のものだ。城壁の内側は都市の中核でぎっしりと家が並ぶ。外側の壁門近くは内側の都市からあぶれたかのようにちょっとした街があるのだが、それ以外は農地がだらだらと遠くまで続いている。


 もちろん、そんな目立つところで魔法を使おうとしたら目立ってしょうがないので、「都市の結界を張りなおす」という偽情報を流してある。これは特別変わったことではなく、都市に結界が張ってあるのも本当だし(気休め程度の残念な効果だが)、これを張りなおす必要があるのも本当だ。だから偽情報としては十分なはずだ。


 そんな外側の景色をにらみ敵はまだかと待機することもう2時間以上。


 幸いなことに、敵は移動速度が人と同じ程度であるということなので、この王都にのこのこやってくるところを城壁の上で待ち伏せするという作戦になったわけだ。ドラゴンの類はその移動能力も脅威であるため不幸中の幸いである。


 そしてその姿は・・・


「発見しました!金髪・場違いに貴族のような服装・幼い男児のような小さな体!間違いありません、『ミョルニル』です!」


 その姿は、金髪ショタである。


 叫んだのは望遠魔法で索敵していた隊員の一人である。望遠魔法は5キロも離れたものをまじかで見るように詳細に見ることができ魔法だ。


「魔方陣起動!同期開始!」


 全員が敵の姿を見たのを確認した俺は、隊員とともに魔方陣との同期を始める。体の中に隠されていた体内魔力回路と魔方陣を連結させ、うまく魔力の流れを制御して、同期をする。体内魔力回路は思い通りに動かせるが、魔方陣は動かせないため制御がとても難しい。

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