【第20章】喧嘩祭り編

20-1【再び旅立つ】

神殿から帰って来た俺は、現在のところスカル姉さんの診療所に居た。病室の一つで装備を整えている。今晩の内に旅立とうと思っているからだ。


神官長マリアの話だと、俺の呪いを上書きできる呪術師が居るらしい。なんでも呪いのスペシャリストで、ソドムタウンから東に一週間ぐらい馬で旅をした町に住んでいるそうな。


普通の馬で一週間だから、アキレスならば、その半分で到着できるだろう。まあ、その呪術師に依頼して呪いを上書きしてもらう予定だ。なので久しぶりの冒険なので、ちゃんと装備のチェックをしているところである。


まずはアクセサリーをベッドに並べて確認する。


ネックレスは三本だ。シルバーネックレス+2、ゴールドネックレス+1、メイジネックレス+2。全部まとめて首に掛ける。ちょっとジャラジャラと五月蝿いが革鎧の下になるから問題ないだろう。


腕輪は五つだ。シルバーブレスレット+1、パワーブレスレット+1、ランゲージリング+2、スタミナブレスレット+1、水中呼吸の腕輪+1。全部右手に嵌めておこう。ちょっと重いな。


問題は指輪とかの小物だな。ゴチャゴチャといっぱい在りすぎだよ。


ディフェンスリング+1、レジストリング+1、スピードリング+1、スタミナリング+1、プロテクションリング+1、ファイヤーボールリング+2、ドラゴンルビーの指輪+3、不運の指輪+1、幸運の指輪+1、耐火の御守り+1、耐冷の御守り+1、魔法の耳飾り+1。


指輪は九個。それぞれの指に嵌めてっと。指がなんとか足りたぜ。


お守りや耳飾りはネックレスの一つに全部まとめてぶら下げて置いたらだめかな。試してみるか。


お守りをネックレスのチェーンに通して~。よし、完成だ。これで首に掛けたら~。


おお、効果がステータスに反映してるぞ。なら、これでいいじゃんか。やってみるもんだな。


次は防具だ。上半身はレザーアーマー+3を着込んで、左腕はプレートメイルの左腕+3を装着して、その上からウィザードローブ+3を羽織る。ローブが無いと視線を隠せないからな。


そして腕にはディフェンスガントレット+2を嵌めて、足にはプレートブーツ+2を履く。バックラーはもう要らないかな。何せ左腕が鋼鉄だもんな。


ダガーは+2のヤツを三本だけベルトに指しておこう。ヘルムは要らんな。カッコ悪いから。


あとは黄金剣の大小を左右の腰にぶら下げて準備完了だ。これで旅に出れるぞ。


すると病室の前を通り過ぎようとしたスカル姉さんが話し掛けてきた。


「あれ、アスラン。装備なんか着込んで冒険にでも出るのか?」


「ああ、そろそろ傷も治ったから冒険を再開しようかと思ってさ」


「主治医の私としては、もう少し休んだほうが良いと思うのだがな。まあ、お前が冒険を再開させたいのなら止めはしないが、スバルちゃんには言ってあるのか?」


「まだ、これから話すよ。それから旅立つ積もりだ」


「そうなのか。でえ、今度は何処に行くんだ?」


「東の町で、ドズルルだ」


「ドズルルの町にか。何しに行くんだ。何も名物が無い寂れた町だぞ」


「ギレン・ザビエルって呪術師に会いに行くんだ」


「なに、呪術師ギレンに会いに行くのか……」


なんだろう。ギレンの名前を聞いてから、スカル姉さんが露骨に嫌な顔をしやがった。もしかしてギレンって悪い野郎なのかな?


「スカル姉さん、ギレンって呪術師を知ってるのか?」


「会ったことはない。だが、昔から悪い噂ばかり聞いているぞ」


「悪い噂ってなんだよ?」


「ギレンって呪術師は、お金次第で誰でも彼でも呪い殺す悪党だと」


「めっちゃ、悪い野郎なのか?」


「アスラン。なんでそんな奴に会いに行くんだ?」


「神官長のマリアに、聞いたんだ。ギレンなら俺の呪いを上書きできるかも知れないってさ」


「呪いって、エロイことを考えると胸が痛み出すってやつか?」


「そう、それを上書きして貰おうと思ってさ」


「まあ、マリア様が言うなら、上書きできるんだろうけれど……。でも、評判の悪い野郎に頼むのは頂けないな」


「でも、そうしないと俺はスバルちゃんと結婚してもエロイことが出来ないじゃあないか」


「確かに、結婚したら子作りせんとならんからな」


「子供は要らないけれどエッチはしたいんだ、俺」


「鬼畜発言だぞ……。旦那としては最低な言葉だな」


「だってエロイことが出来ないのに結婚する意味がないじゃんか」


「それ以上しゃべるな。人格を疑われるぞ……」


「そうなん?」


「今言ったことは、絶対にスバルちゃんには言うなよ、アスラン……」


「なんで?」


「エロイことが出来なくなるぞ!」


「なら言わない」


「それと、私は呪術師ギレンに呪いの上書きを依頼するのは賛成できないな」


「なんでさ?」


「むしろギレンと関わるべきでは無いと思うんだ」


「心配しすぎだってばよ。まあ、とにかく俺は行って来るぜ」


「分かった。だが、用心しろよ……」


「了解」


俺は敬礼したあとにスカル姉さんとの会話を中断すると診療所を出た。そして、魔王城街に一度戻ってからスバルちゃんに旅立つ前の挨拶をしてからソドムタウンを出発する。


俺はアキレスを走らせながら少し考えていた。


確かにスカル姉さんの言うことは一理ありそうだ。呪術師なんか怪しい野郎に依頼していいのだろうか?


なんか、俺の予感に不吉な思いが過り出した。考えすぎだろうか……。



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