9-27【ガイアの子分】
俺は早朝にソドムタウンに帰って来ていた。
流石にまだ朝早いよな。
門を過ぎてメインストリートを眺めたが、まだ露店は一軒も開いていない。
大通りには人の数も少ない。
あともう少ししたら人も増えて来る時間なのだろう。
俺は冒険者ギルドに立ち寄る前にスカル姉さんの空き地に向かった。
スカル姉さんに預けた無限合法ロリ少女のガイアが少し心配だったからだ。
上手くあの輪に加われているだろうか?
我が儘をぬかして皆に爪弾きにされていないだろうか?
もしも苛められていたらどうしよう。
正直なところ、スカル姉さん以外にあんな糞餓鬼を預かってくれる知人は知らないのだ。
もしもスカル姉さんが面倒見きれずに投げ出したら、俺も投げ出さなければならない。
うん、別に俺がガイアを預かる義務はないのだから構わんよね!?
まあ、それは冗談だとしてだ。
とにかく仲良くやっててもらいたいな。
そんな感じで俺が空き地に戻るとガイアが一人で焚き火に薪をくれていた。
その周りに六匹のシルバーウルフが寄り添うように寝ている。
火の番でもしているのかな?
それにしてもシルバーウルフに囲まれているのは暖かそうだ。
ガイアの身形も変わっていた。
縁起の悪い死に装束から白い安物のワンピースにだ。
スカル姉さんが選んで買ってやったんだろうが、また安物を選んだようだな。
流石はケチなスカル姉さんだわ。
もうちょっと可愛らしい服でも買ってやればいいのにさ。
そして、俺が空き地に踏み込むと、気配を感じ取ったシルバーウルフたちが首を上げてこちらを見た。
そのシルバーウルブスの行動を見て、ガイアも俺に気が付いたようだ。
「あっ、アスランお兄ちゃん、おかえり」
「ただいま、ガイア」
俺も焚き火に近寄り座って火に当たった。
「ガイアは朝早いな。慣れない土地で眠れないのか?」
ガイアは相変わらず淡々とした棒読み的な口調で答えた。
「私は眠らなくても死なないから」
「あれ、趣味は食っちゃ寝じゃあなかったっけ?」
「それはそれ、これはこれ」
「なにがなんで、どれがどれなんだよ?」
まあ、いいか……。
俺は周りを見回した。
スカル姉さんたちはテント内で寝ているのだろうが、オアイドスだけがテントの外で寝ていた。
しかもまだリストレイントクロスの魔法で光の拘束具に束縛されたままだった。
あの魔法の拘束時間って、そんなに長いのか?
まあ、今はいいか。
話をガイアに戻そう。
「で、ガイア」
「なに、アスランお兄ちゃん?」
「ここの暮らしに慣れそうか?」
「空き地の暮らしに?」
「ちゃうがな。ここの人たちとの暮らしにだ」
「それは問題無いわ。皆、基本的には善人ばかりだもの。ただ……」
「ただ、なんだ?」
「ただ、スカル姉さんは怠惰だし、ゴリさんは筋トレばっかりだし、バイマンは焚き火を眺めながらぶつくさ言ってるし、オアイドスは全裸だし、皆して全然ガイアと遊んでくれないの。私と遊んでくれたとしても、七時間を経過すると、まだ遊ぶのかって言い出すのよ。本当に根性が無いわよね」
「あー、大人と子供の差だよ」
「大人と子供の差?」
「大人に成長するとな。皆して遊びに対しての集中力が衰えるんだ。昔は無限に遊べていた遊びが、ある日突然に長々と遊べなくなるんだよ」
「アスランお兄ちゃんもか?」
「これは俺の親父の台詞だ」
「そうなのか……」
ガイアは詰まらなそうに焚き火の炎に視線を落とすと、ただ優しくシルバーウルフの頭を撫でていた。
「わかった、ガイア。お前に子分を授けよう!」
「子分ならここに六匹の狼が居るぞ?」
うわー、こいつ、シルバーウルフたちを子分だと思ってるよ。
ペットじゃあないんだね……。
「そいつらは子分じゃあないぞ。ペットだ。ペットは家族なんだぞ」
「ペットは家族なのか? 初めて聞く定義だな。ペットは番犬だとかステータスの一部だと言うやからは沢山見てきたがな」
あー、この世界だと、そうだよね。
俺が生きた現代社会とは違うものね。
まあ、俺はペットなんて飼ったことがないから分からんけれど。
「まあ、そいつらはペットだ。これから紹介するヤツは子分だ。子分はお前の弟と同様だからな。子分だからって奴隷と勘違いするなよ。子分は血こそ繋がっていないが、義理の息子や兄弟って言う位置付けだからな」
「私のブラザー?」
「そうだ。では、紹介しよう!」
なんだ、いつも冷めた眼差しのガイアが瞳を輝かせていやがるな。
相当に期待しているのか?
ならば、俺は異次元宝物庫を開いてパンダの剥製ゴーレムヘビメタバージョンを招き出した。
異次元宝物庫から悠々とした足取りでパンダが出て来るとガイアが言った。
「パンダやーー!!」
おお、言い反応だぞ。
期待した通りだぜ!!
ガイアは立ち上がるとパンダのお腹にハグした。
しかし、パンダはガイアの体に両手を回すと上手投げで放り投げてしまう。
そして、ガイアが空き地にゴロンゴロンと転がる。
「うわ、不味いか!?」
虐待パンダだわ……。
俺がビックリしていると、ガイアは微笑みながら立ち上がると再びパンダに抱き付き再び上手投げで投げられていた。
そこからしばらく同じ光景がリピートされる。
何度も何度もガイアがパンダに投げられる。
俺は安堵して腰掛けた。
そして、近寄って来たシルバーウルフたちの頭を撫でながらガイアとパンダの相撲を見守った。
あー、分かったことがある。
シルバーウルフは誰でもいいんだね。
ただ集まって寝るのが習性なのかな?
それとも寒いだけなのかな?
そして、しばらくガイアとパンダの相撲は続いた。
空き地の皆が起きて来るまでだ。
子供って、本当に飽きないよね。
いつまでも無限に遊べるやね~。
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