9-26【人形たちからの戦利品】

俺は朝早く目が覚めた。


屋敷の窓から外を見てみれば、まだ少し薄暗かった。


こりゃあ完全な早朝だわな。


夜明けですわ。


俺はベッドから出ると欠伸と同時に背を伸ばす。


「ああ、まだちょっと早いが目が覚めちゃったぜ……」


俺が独り言のように声を出すと部屋の扉がノックされた。


「んん?」


扉の向こうからヒルダの声が聞こえて来る。


『アスラン様、お目覚めですか?』


「あ、ああ……」


これはヒルダさんは寝てないパターンだな。


きっと扉の向こうで、ずっと待機していたのだろう。


流石はミイラメイドだぜ。


不眠不休かよ。


なんとも凄い奉仕精神だな……。


『では、朝食にいたしましょうか?』


「ああ、じゃあ飯を食ってから屋敷を出ようかな」


『では、食堂で頂きますか、それともこちらにお持ちしましょうか?』


「じゃあ、ルームサービススタイルで頼むは」


『畏まりました。しばしお待ちを』


じゃあ、待っている間に昨日の戦利品でもチェックしようかな。


それにレベルも上がってるから新スキルのチェックもかな。


そう俺が考えていると、部屋の扉がノックされた。


『アスラン様、朝食をお持ちしました』


「はやッ!!」


そして俺は部屋のテーブルで運ばれて来た朝食を頂くことにした。


てか、俺が起きる前から準備されてたのかな?


とにかく、完璧なメイドたちだわ……。


さてさて、今日の朝食は~。


メニューは、白パンと肉入りコーンスープとサラダの盛り合わせだった。


あっ、あと茹で卵もあるや。


庶民の朝食にしては豪華なメニューである。


『では、失礼します。ごゆっくり朝食をお楽しみくださいませ』


ミイラメイドたちが一礼すると部屋を出て言った。


俺はテーブルに付く前に異次元宝物庫から戦利品を出して床に並べる。


今回見つけたマジックアイテムは、シミターが三本、羊皮紙のスクロールが一つ、それとノミ、鉋、ノコギリなどと複数の工具だ。


俺はテーブルの上からパンを掴むと口に運んだ。


パンを噛りながらアイテム鑑定を始める。


じゃあまずは工具からかな。


そして鑑定の結果は工具すべてが+1だった。


能力はそれぞれだったが、ほとんどが戦闘用ではない。


ノコギリは切断作業の向上や、金槌は釘打ち作業の向上とかだった。


これは職人さんには凄い道具なのだろうが、クラフトスキルなんて持っていない俺には関係無いアイテムばかりだ。


これは纏めてセットで売ればいいだろうな。


単品でバラバラに売ったら、売れ残った工具が出てくると面倒臭いからね。


よし、じゃあ次はシミター三本だ。


一気に行くぜ。


【シミター+1】

攻撃力が向上する。


【シミター+1】

命中率が向上する。


【シミター+1】

攻撃速度が向上する。


あー、全部がちょっとずつ違う+1だな~。


これなら売ってもいいが、とりあえず使ってシミタースキルを習得してから売りかな。


まあ、少し使ってみるか。


さて、アイテム鑑定の最後は羊皮紙のスクロールだ。


どれどれ、どんな魔法かな~。


【魔法サモンパペットオークLv1】

薪からオーク人形を召喚して、簡単な指示を与えることができる。召還時間5時間。一日に魔法レベル分だけの回数使える。


パペットオークか~。


プチゴーレムだね。


これは単純な労働力を産み出す魔法だな。


おそらく戦闘力は低めだろうさ?


それでもインプよりは強いかな?


パペットオークは薪を触媒にするから少し時間が長いのかな?


まあ、今度使って試してみるか。


てか、まだウィル・オー・ウィスプすら使ってないよね~。


今度使わんとな~。


さてさて、最後に新スキルチェックだな。


「ステータス、オープン!」


すると──。


『アスラン様、何かお呼びでしょうか?』


「呼んでねーよ!!」


俺は扉の向こうから声を掛けてきたヒルダさんに言う。


「いや、独り言だから気にしないでくれ……」


『はい、畏まりました』


その言葉の後にヒルダが退室する。


「あー、びっくりしたわ……」


俺は少し落ち着いてからステータス画面を見た。


新スキルは一つだけだった。


ちょっと寂しいな。


まあ、一つだけだから期待を込めて見てみようか。


どれどれ~。


【爆炎魔法耐性スキルLv1】

爆炎系魔法攻撃に対して抵抗力が向上する。


あら~、炎耐性スキルとは違うのかな?


魔法限定なのか?


今回はファイアーボールを自爆とかさせてたから、これなのかな~。


って、ことはだ。


切腹とか繰り返していたら、刃物耐性スキルとか耐久性スキルとかを獲得できるのかな?


できるなら切腹をしちゃおうかな。


いやいや、そこまで俺はクレイジーなサイコパスじゃあねえよ……。


こりゃあヤバイM思想だな。


やめだやめだ!!


それとロングソードスキルとショートソードスキルにツーハンドウェポンスキル、それにロングボウスキルがレベルアップしている。


戦闘スキル系は、ヘルムクラッシャーがレベルアップしていた。


更にスライディングスキルとフットワークスキルに、炎耐性スキルと霊感探知スキルもレベルアップしているぞ。


なかなか細々とレベルアップしているから、俺もだいぶ強くなっていることだろう。


まあ、今回はこんなもんかな~。


よし、そろそろちゃんと飯を食うか……。


そして俺は戦利品を異次元宝物庫に仕舞ってからテーブルに付いた。


「あー、ちょっとスープが冷めてますがな。しゃあないか、まあ食うべ食うべ」


トントン───。


ノック?


「なんだ、ヒルダさん?」


するとヒルダが扉を開けて畏まりながら言った。


『アスラン様、よろしければ冷めたスープを温め直しましょうか?』


「いや、いいからさ……。ちょっとゆっくり食べさせて……」


『畏まりました』


「マジで奉仕の鬼だな……」


そして俺が朝食を食べ終わるころには窓の外は明るくなっていた。


賑やかな鳥の囀りも聴こえて来る。


俺は部屋の外に向かって言った。


「ヒルダさ~ん、食器を下げてくれないか~」


するとヒルダとミイラメイドが部屋に入って来て食器を下げて行く。


さて、どうするかな。


流石に今さっきメイドさんに食器を下げてもらってから直ぐに引っ越しってわけにはいかないかな。


先に俺は冒険者ギルドに報告してから戻って来ようかな。


「ヒルダさん」


『はい』


俺がヒルダを呼ぶと彼女が部屋に入って来る。


「俺はこれから冒険者ギルドに行って来るから、俺が帰ってきたら引っ越しにしようか」


『畏まりました。では、それまでに私たちの準備を済ましておきます』


「じゃあ、行ってくるわ~」


『お気を付けまして』


俺はヒルダに見送られて屋敷を出た。


ソドムタウンに向かってアキレスを走らせる。



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