1-9【ロング•オブ•ロング】

俺はマジックトーチの魔法が掛けられたボーンクラブを持ち直すと先を急いだ。


ただひたすらに続く真っ直ぐなダンジョンを頭に被った呪いの汚いパンティーと共に進むのであった。


もう、スリルとかロマンとか良いから地上に出たい。


どうやらこの真っ直ぐなダンジョンでは水も食料も手に入りそうにないからだ。


俺は頭に被った汚いパンティーを手で擦りながら話しかける。


「地上に出たら、この骨と一緒に埋葬してやるからな。フローネちゃん、もしくはレベッカお姉さんよ」


俺の個人的な供養だが、それでこいつも成仏してくれるだろうさ。


まあ、どちらにしても姉妹のどちらかの霊が憑依しているパンティーならば、粗末にも扱えない。


俺は無条件で女性には優しい男なのだ。


ただひたすらに俺は、パンティーの股間部分を指先で丹念に擦りながらトンネルダンジョンを歩き続けた。


少し卑猥な指の動きだったかも知れないが、不思議と俺のペナルティーで胸は傷まなかった。


何が違うのか条件が分からないが、俺はこの期にパンティーの手触りを堪能した。


このパンティーは大人っぽいお姉さんキャラのレベッカさんのパンティーだろうか?


それとも甘えん坊なロリキャラのフローネちゃんのパンティーだろうか?


どちらにしろヒロインとして合格な設定である。


もうドキドキわくわくものだな!


……っあ、胸がグルジィぞ。


やっぱりダメじゃんか……。


まあ、ただただ長く続くトンネルダンジョンを進むのにあたって、呪いのパンティーは心の支えになっていた。


これが本当に呪いのパンティーだとは思えない。


えへっ♡


ぐふっ!


や、やっぱり痛み出すんだよな……。


そんでもって更に一時間ぐらい果てしない通路を歩いていたら、上りの階段に行き当たる。


やっとだ!


やっと廊下以外の建造物が出てきたぞ!


嬉しい!


とにかく嬉しい!


変化に嬉しいのだ。


しかも、階段だ!


上りの階段だ。


地上に出れるかも知れない。


階段を見て、こんなに喜んだのは生涯で初めてだろう。


何せ二時間ぐらいも真っ直ぐなトンネルをただひたすらに歩いていたんだもん。


スゲー嬉しく感じるぞ。


よし、上るぞ!!


そして、俺の感激は直ぐに絶望に変わった……。


それは……。


上りの階段も長い……。


足の骨が砕けそうなぐらいに、長い……。


上が、先が、天が、まったく見えてこない。


もう太股も脹ら脛もパンパンだ。


腰も痛くなってきた。


両足が産まれたてのバンビのようにガクガクと震えている。


てか、この通路と階段を作った人がスゲーよ。


だって、ファンタジーだと建築文化とかは低いでしょう。


機械も無ければ、道具も粗末だろうし。


なのに、こんな長い通路と階段を作っちゃうんだもの。


何年ぐらいかかったんだろう?


根性あるよな。


一生涯掛けて作ったレベルだぞ、これは。


それとも魔法でチョチョイのチョイで作っちゃったのかな?


あー……。


魔法、あり得るぞ。


ファンタジーの世界だから、後者のほうが可能性が高いのかな。


まあ、そんな詰まらないことを考えながら無限に続くと思われていた階段を、俺は上り続けた。


そんなことでも考えていなければ心が折れそうだったからだ。


もう、呪いのパンティーだけでは折れかかった心を支えきれない。


足の骨も折れそうだ。


それに足の筋肉が悲鳴を上げている。


階段を上り続けるのは辛い……。


単調なのも精神に響く攻撃だ。


上り始めて、何もないまま三時間は過ぎただろうか……。


いや、まだ三時間は過ぎていないだろう。


何故ならマジックトーチの制限時間が五時間だからだ。


でも、そろそろマジックトーチの制限時間が近いだろうさ。


マジックトーチは五時間しか継続出来ない。


五時間が過ぎたら再び真っ暗になってしまう。


それだけは避けたい。


しかし───。


「や、やべぇ……。もう無理ぽ……」


もう、足が折れるどころか、砕けそうだ。


心も砕けそうだ。


体力も限界が近い。


でも──。


通路で二時間ぐらい、階段で三時間ぐらい過ぎたところで、上る先に光が見えて来た。


光である!


明るい!


まさに希望の光だった!!


俺は生涯で光を見て、こんなに嬉しかったことはないだろう!


心の闇が光に払われた気分である。


とにかく本日は生涯初の喜びが複数だった。


俺は心が踊って上る歩みが速くなる。


光を目指してひたすら上る。


そして、光が徐々に大きくなり、ついには出口の四角い形が分かるほどになって来た。


「やった~、出口だぁ!」


喜びのあまり感激な思いを声に出してしまう。


まあ、誰かが聞いてるわけじゃあないんだから構わんか。


そして、俺は光の枠から外に飛び出た。


「眩しい!」


太陽光が眩しくて、俺の瞳に突き刺さって来る。


空気も新鮮だ。


すると手にしていたボーンクラブからマジックトーチの明かりが消える。


どうやら制限時間が過ぎたようだ。


五時間ギリギリで一本道のダンジョンを抜けたらしい。


「危なかったかも……」


それよりもだ。


俺は片手で日傘を作ってから周りを見回した。


「ここは?」


そこは、遺跡のように荒れ果てた場所だった。


周りの景色から標高の高い場所だと分かる。


廃墟の印象は、ギリシャのパルテノン神殿に似ていた。


でも、柱だけ残して天井は崩れ落ちている。


偶然なのか、俺が上って来た階段は、崩れた天井の岩が丁度良く避けられている感じだった。


もしかしたら誰かが後から、どかしたのかも知れない。


もしも、崩れた天井に出入口が塞がれていたら、俺の五時間近くの苦労は無駄になっていたんだろうな。


それを考えると怖い。


すげー、怖い……。


引き返したらトータル十時間じゃんか……。


マジックトーチの有効時間は五時間のはずだから帰り道は真っ暗だぞ。


それって絶望以上の絶望だろうさ。


俺の心も砕けて廃人になってまうがな。


それで、この物語もそこで完結してまうぞ。


まあ、とりあえず外に出れたのだ、ここは喜ぼう。


それよりも、水、飯、女は居ないか!?


俺は崩れた岩の上に乗って辺りを見回す。


この遺跡は山の上に建築されていた建物だったようだ。


そこそこ広い規模の廃墟だった。


周りは岩ばかりの険しい山脈に囲まれている。


緑はほとんど伺えない。


目に入るのは、埃っぽい砂漠色の乾燥地帯ばかりだ。


そこから察する。


「み、水はなさそうだな……」


海に向かうはずが山中に出てしまったらしい。


そして山の下を見下ろしたら、500メートルほど先に小さな村が見えた。


ボロ小屋のような家が数件見える。


人が居るのか!?


人里なのか!?


ならば水が飲めるぞ!


女の子も居るはずだ!


とりあえず、向かうしかない。


きっと、希望と、水と、食事と、暖かい布団と、可愛い娘かセクシーなお姉さんが居るはずだ。


ここで皆が待っていたラブイチャヒロインの登場だぜ!


絶対に口説いて甘い甘いラブロマンスな後にネッチョネッチョなチョメチョメ行為をしてやるぞ!


あ、あぁ……。


また胸が苦しい……。


この程度の妄想も駄目らしい……。


本当に判定がシビアだわ。



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