第9話 王子の謎

「フィオ、姫を王子から守れ」


 ダンスホールに降り立ち、シルヴィ先生が剣を抜く。


「そんな、イザーク様が襲撃の犯人だなんて!」


 ヴァンダ王女も、信じられないという様子だ。


 たしかに王子が襲撃犯なら、顔の傷はブラオがつけたのだろう。あの傷は、まだ新しい。しかし、確実な証拠とはいえなかった。


「何を言い出すかと思えば、妙な言いがかりだな! あの者を捕えろ!」


 王子が、部下に指示を出す。王子の配下が、先生を取り囲んだ。


 それでもなお、先生は笑みを消さない。


「お縄につくのは、お前の方だ」


「証拠はあるのか?」


「これでも、自分が王子だと言えるかな? 連れて参れ!」


 手当をされた状態のボロボロの男性が、王都の兵隊より連れてこられた。


「え、王子が二人!?」


 ヴァンダ王女が、負傷した男性と王子を交互に見る。


 ボクも、同じような状態になった。


「違う。彼こそ本物の王子だ。フィオ、お前と二人で攻略したダンジョンに、この方はとらえられていたのだよ」


「なんですって!?」


「コイツは、王子の姿をしているコイツは魔物だ。変装しているのだ」


 姿を似せるには、生きている王子が必要だ。なので牢に入れて、野盗に監視させていたのである。


 本物の王子は救出時、自分が何者かさえ認識できていなかった様子だったらしい。記憶すら操作されていたようだ。


「それを仕組んだのは、すべてソイツだ!」


「バレては仕方ない! 姫はいただいていく!」


 王子が本性を表し、術士の姿となった。姫の腰を抱く。


「ブラオ!」


 ボクは抜剣して、ブラオを召喚する。先生とブラオと共に、術士に飛びかかった。


 しかし、姫を盾にして術士は逃げてしまう。


「追うぞ!」


「はい。大きくなれ、ブラオ!」


 ボクが指示を出すと、ブラオがウマのような大きさに。


 社交場の人たちが、大きくなったブラオを見て驚く。


「先生、乗ってください」


 シルヴィ先生を後ろに乗せて、ブラオを走らせた。


 召還獣に追いかけられているというのに、術士はすごい速さで逃げていく。


「待て! 姫をどうする気だ?」


「彼女には、魔王様の供物となってもらう!」


 先頭を走る術士が、走りながら印を結ぶ。


 空間が裂けて、巨大な塔が姿を表した。


「あんな塔、どこにあったんだ?」


 一瞬で建てたにしては、大きすぎる。建設している段階で、存在が発覚してもおかしくはない。あんなもの、どこにあったんだ?


「この地にあるのではなく、別の世界に通じているんだ」


 ボクたちは、塔のある空間までダイブした。

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