第18話 君を助けた理由
ついさっきまでシェルと一緒にいた部屋に君はいる。
ここでブラウズに待つように言われたからだ。
しばらく待っているとブラウズは戻ってきた。
「まずはシェルを守ってくれた礼を言う。ありがとう」
君は頷くが、自分も助けられた事を伝えるとブラウズに止められる。
「違うんだ。助けたのは……そうだな、少し長くなるけど聞いてもらえるか?」
君は頷いた。
ブラウズの助けた理由を知りたかったからだ。
「その頃の俺は冒険者をしていた。偶然、この町の支部から受けた依頼をこなしていた時だった。そこで今は亡き妻、アンジェリカに出会ったんだ」
改めてブラウズとアンジェリカにとっての思い出の場所なのだと君は認識する。
「この城下町は水の整備が整っていてね、橋の付近にある下水道の近くに隠れていたんだ。アンジェリカは怪我をしていて、怯えていた。儚げで今にも消えそうな感じだった姿を見て、俺は家に連れて帰って治療をした。怪我は程なくして完治したけど、ずっと何かに怯えていた」
君は怯えていた原因が何だったのかブラウズに聞いた。
「それは聞いても教えてもらえなかった。怪我も大きなものではなかったから、聞く必要もないと思っていたんだ。その頃くらいから、城の地下牢から脱走する犯罪者が多くなってきた」
それが原因でアンジェリカが怪我をしていたのだと君は納得した。
そしてブラウズが兵士長をやっている理由は恐らく一つだと考える。
「城下町自体は治安はいいんだがな。夜になると危険だからアッシュも気を付けるんだぞ」
ブラウズの心配が君にも伝わる。
頷いて返すと、ブラウズは満足そうな表情を見せる。
「話が逸れたな。それで、家にいるのは怪我が完治するまでのはずだったんだが、彼女がお礼にと家の手伝いをしてくれて……そうしている内にお互いにな……そしてシェルが生まれたんだが、しばらくしてアンジェリカの容態が急変して亡くなった」
そして、手にしたペンダントをブラウズは君に見せた。
晴天の空を思わせるような透き通るような綺麗な水色。
限りなく薄い透明な色に君は……。
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