第19話 愛しき人の形見

 君は綺麗な水色に魅入られそうになる。

 内側から輝くような光に惹かれるのだろうか。

 どうしてもペンダントから目が離せなくなってくる。


 あまり長く見るのは良くないと君は判断するとペンダントから視線を外す。


「このペンダントはアンジェリカの形見なんだ。それがアッシュに反応している。あの時、アッシュが倒れた時にペンダントに違和感があった。だから……アッシュを助けたんだ」


 君はブラウズの話を聞いても尚、そんなことはないと伝える。

 確かにペンダントが反応したかもしれない。

 だけど、それが助ける理由にはならないはずだと。

 町の中で見ず知らずの子供なんてどこにもいるからだ。


「ペンダントは理由にならないか……あの時、アッシュを見て何故か思い出してしまったんだ。アンジェリカの事を」


 まるで思い出したことを恨むようなブラウズの声色だった。

 ペンダントを置くと、ブラウズは片手で目を覆って隠した。

 確かにキラキラと微弱な輝きが内側から発しているようで宝石のように美しかった。


「俺はアンジェリカの事を思い出したくなかった。あいつの居ない毎日を意識すると、楽しかった思い出がひとつずつ消されていくような気がしてな。忘れようとして、生きてる日々が俺にとって何一つ意味のないものになってしまっているんだ」


 急に部屋の中の気温が下がったかのように寒く感じた。


「忘れたいと願った……だが、アンジェリカも……お前アッシュと同じように名を持っていなかったんだ!」


 ブラウズから怒りとも悲しみともつかないようないびつな感情が伝わってくる。


 このペンダントには二人の楽しかった思い出が詰まっているのだろう。

 内側から発している宝石のような煌めきが、強い思いが、君に何かを伝えてくる。

 私の事は忘れてもいいけど、かけがえのない楽しかった日々の思い出だけは覚えていてほしいと、そう訴えかけているように聞こえた。


 君は、そのペンダントから伝わる思いを……。

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