第15話 残忍な悪意

 部屋を出た先には倒れているシェルが見えた。

 そして大男が立っていた。

 人を何とも思わないような、蔑むような目。

 そこから人を値踏みする卑しい視線。


「この家はガキしかいねえのか!」


 倒れているシェルの頭を掴み持ち上げると、同じ高さの目線で大男は一方的に話しかけている。


「おい、ガキ。金を持っている親はどこにいるんだ。オラ、答えろ!」


 頬を叩かれたシェルは口の端から血を流しながら、頭を左右に揺さぶられる。

 君はその行動に怒りを感じた。

 大人が理由もなく子供を殴るべきじゃないと伝える。


「うるせえな、またガキかよ。久々のシャバでいい気分が台無しだ。どうしてくれるんだ?」


 大男はシェルを離すと君に歩み寄ってくる。

 その歩き方に隙がまったくない。

 逃げようとすれば首を掴まれその場で折られるだろう。


 目の前で歩みを止めると、お互いに対峙する。

 見上げる形になるが君は怯まずに謝罪するように伝える。


「この俺様に謝れだと? 頭が悪いのか、このガキは?」


 君は頭を掴まれると足が床から離れていく。

 ジロジロ舐めるような視線に気持ちが悪くなる。


「生意気なガキだが、中々いいツラしてるじゃねえか。2人とも売っちまえば、しばらく隠れて暮らせそうだな?」


 君は大男の腕をどうにかして掴むと、頭から手を放せと伝える。


「この手をどけてみろ。早くしないと頭が割れちまうぞ?」


 この大男の手に力がこもり、頭が軋む音が聞こえてくる。

 早く手をどうにかしないと君の頭は割れてしまうだろう。

 

 君はこの手をどけるために……。

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