第8話 濡れた全身
君は目を覚ますと身体が濡れていた。
手に力が入り自分で上体を起こすことができる。
この濡れている原因は何かと見ると、汗だった。
信じられないくらいの量の汗がベッドに流れ落ちていて染みになっている。
君は立ち上がり、シーツを取り換えようとするとシェルが部屋に入ってきた。
「全身……ずぶ濡れですよ?」
シェルは驚いた様子で固まっていると、君の持っているシーツを見て静かに受け取った。
シーツが汗で濡れている事をシェルに伝えると、意外にも大丈夫ですと返答がくる。
「そんな事を言っていたら洗濯できません」
風邪を引くから早くこちらにと、シェルが部屋から出る。
君は慌ててシェルの後を追うように付いていく。
シェルが部屋に入るとそこは石で造られている部屋った。
水の入った桶にシーツを入れる姿を見ると、部屋の隅にある穴が気になった。
その小さな穴には網目状の蓋がしてある。
シェルは君の見ている物に気付いて教えてくれた。
「これは排水口といって汚れたお水を流して捨てる場所です。そんなに珍しいですか?」
君は頷くと、続けてシェルが答えてくれる。
「城下町の家には排水口が付いているのが一般的です。もちろん、他の町や村では排水口がある場所は少ないと思いますけど」
そう口にすると、シェルは君の着ている服を脱がそうとしている。
君は慌てて自分で脱ぐと伝えると、着ていた物を渡した。
「下着はどうします?」
君は慌てて首を振って否定して自分で洗うと伝えた。
シェルは少し笑うと、部屋の奥のほうに石壁に彫刻した竜の前まで連れていかれた。
竜は大きく口をあけており、威嚇をしているようで君は少し怖くなる。
「大丈夫。この壁の部分を押してもらうと水が出ます」
シェルが壁を押すと、勢いよく水が出てきて君の顏に直撃した。
君は慌てて当たる部分を調整して水を浴びる。
その慌てぶりがおかしかったのか、シェルはころころと笑った。
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