第9話ライブ配信シーン9

俺達は突如現れたモンスターを撃退し馬車に揺られると…とうとうステードの村に辿り着いたんだ。

するとカルマが口を開く。


「さあ、着いたわ!ここがステードの村よ。」


先程の街道から森へ向かう為、脇道に入り込んできて馬車は走る事…一時間程度で目の前には深い森が見えてくる。

そして、そのまま森の中を進む事30分程でようやく村へと辿り着いたんだ。

その村は深い森の木々を利用し家や色々な物を作っているように見える村で、人はざっと五十人程度が暮らしているような小さな村だったんだ。

俺達の乗った馬車は停止するとオッサンは馬用に水を貰いに行くとの事、俺達は旅の準備をする為、村のアイテム屋へと足を運ぶ事にしたんだ。

俺が歩いていると聞こえてくるコメント。


『うおおおおおっ!!すげえな!ファンタジーの村!』

『私もそんな村に行ってみたい!』

『クロノ!この村の名物って何かないのかな?』

「ああ…まあ確かに食い物なんか気にはなるか。」


俺がそう呟くと隣を歩いていたカルマが反応する。


「この村はね、『アキナイモ』っていうおイモが有名なの…」

「へえ…美味そうだな」

「そうね…私達のいた世界の「サツマイモ」よりもっと甘みが増してホクホクなおイモよ。」


そう言ったカルマはニコニコ話していた。


『うわあああっ!!マジでカルマちゃんの笑顔最高!!』

『クロノばっかずるいぞ!!』


俺は呆れ気味にコメントに答えようとするとカルマは突然俺のマイクに口を寄せてくる。

急に身を寄せてきたカルマに俺はドキドキしていると彼女は小さく呟いた。


「皆さん…ありがとう。」


すると興奮したリスナーのコメントの嵐。

俺はふぅっと息を吐くとカルマに一言。


「はぁ…やれやれ…カルマ!さて行こうぜ」


俺の声にニコニコ笑っているカルマ。

そして耳に入ってくるコメントはハートの嵐だった。

食べ物屋は後回しにして俺達はまず装備品を見てみる事にしてアイテム屋へと入る。

アイテム屋の見た目は古びた小屋に看板が貼り付けられ英語で『Itemu』と書かれている。

俺達は小屋の扉を開き中に入ると椅子に深々と座り雑誌を読んでいたおじさんがこちらに気づき雑誌を置くと声をかけてくる。


「ん…客か…。」


店主らしき人物はそう言い、気難しそうな顔をして俺を見ているのだが…。


「ヤシュアさんこんにちは!」


俺の後ろから、ひょこっと顔を出しカルマは店主に声をかける!

俺が驚いているとカルマの声に店主は彼女の見て急に笑顔になると軽快に話し始める。


「おお!カルマちゃんか、いつもありがとうのう!」

「いえいえ!こないだのハイポーションは本当に助かりました!」

「あれは特別いい商品だったからカルマちゃんに譲れて本当に良かったよ!」

「ところで…」


「ヤシュア」とカルマがそう呼ぶ男は俺の方をじっと見ているが…何やら俺を品定めしているかの様に見ていたんだ。

すると店主は椅子から立ち上がるとカルマに目配せをし奥の部屋に入っていく、そしてカルマは俺の目を見て一言呟く。


「クロノ…着いてきて。」


俺は頷きカルマの後ろについていく。

小屋の奥の部屋には地下へと降りる階段があり俺達二人も店主の後に続き階段を降りていくと薄暗い部屋へと辿り着く。


「ここは…どこだ?」


俺がそう呟くと店主は机越しに座りこちら側には俺達二人が椅子に腰をかけると店主は灯りを灯し…そして口を開いたんだ。


「よくぞここまで来てくれた…魔神を従えし者達よ。」


アイテム屋の店主の正体とは一体何者なのか、先程までとはガラリと雰囲気を変えた店主に俺はゴクリと唾を飲み込む。

すると、隣に座るカルマがその口を開いたんだ。


「クロノ…ここまでくるのに全てを話せなかった事…本当にごめんね。この方は、この世界で私達の唯一の味方になってくれる御方…名は『大賢者ヤシュア』様、そしてここからは私と一緒に彼からこの世界の話を聞いて欲しいの。」


カルマはそう言うとヤシュアに話をバトンタッチするようだ。

俺が視線をカルマからヤシュアに移すとヤシュアは語り始めたのだった。

よいか?ではワシがこの世界の歴史と世界…そして我々の力、目的を説明していこう。

まずはこの世界…お主達の世界からすれば異世界と呼んでもおかしくはない世界だ。

カルマちゃんと以前、話をした結果、ここはお主達の世界と地形というものはあまり変わらないらしくてな、じゃが、この世界では人間を含め、エルフ族、ドワーフ族、そして闇の魔族と呼ばれる者達、そして勿論モンスターも沢山生息している世界なのだ。

この世界の大多数を占めるのは繁殖力からいっても人間族、獣人族だ。

だから国によって住み着く種族も様々だが大体は同種族で国を建てていると言っても過言ではないのだ。

だが…今でこそ、比較的平和な世界に統一されてはいるが遥か昔…魔族の中に魔王と呼ばれこの世界を支配しようとする者が現れ、あらゆる種族を皆殺しにし魔族だけの世界を作り上げようとしたのだ。

だが、エルフ族やドワーフ族は自力で自分達を守る事に長けていた為、エルフは天樹へ、ドワーフは地中へと逃れ独自の平和を築く事ができたものの…人口の多い人間族、獣人族は簡単には魔族から逃れる事は叶わなかったのだ。

その為、魔族は人間族、獣人族を支配しようと攻め立てたのだ。

誰もが人間と獣人の滅亡を止められないかに見えたのだ。

そんな時ある一人の女性がどこからともなく現れた…魔族との攻防に多大な成果を次々と上げていったその女性は、いつしか勇者と呼ばれる様になっていったのじゃ、その女性は特殊な能力を持っていてな、魔族の中でも最も力を持つ者達『魔神』と呼ばれる存在の者を次々とその能力により封じていったのだ。

それにより魔族の戦力は激減し戦況は逆転!

その戦いは『勇者様』による魔王の封印と共に終止符が打たれたのだ。

そして勇者様は魔神を封じたアイテムを『魔神具まじんぐ』と名付けると人間、獣人に守護させ封印を施して解かぬよう命じどこかへ消え去っていったのだ。

それから数百年の時を経た現在…剣と魔法の世界である事は現在も変わってはおらぬのだが、ある時、この村から数十キロ離れた王国『グランドバズ王国』の北にある遺跡『キャニオン遺跡』で…ある魔神具が発掘されたのだ。グランドバズ王は緊急事態と全世界へこの事を伝えるとその魔神具を王国の地下深くへ運び再び封じようと試みたのだ。ところが突然その魔神具は意識を持ちはじめると一言。


『この世界の者よ、我は目覚める!!我が力を使える者を我は探すとしよう…。』


そう言い放った魔神具は…光の速さでその場から飛び去ったのだ。

この事件は全世界に広められ緊急事態として世界に知らされた。

それ以来…この世界の魔神具は少しずつ復活する様になっていったのだ。

それがお前達の持つ魔神具もそうじゃがワシも偶然、魔神具を得てこの力を手にしてしまった…という訳じゃ。

ヤシュアはそこまで話すと置いていたお茶をすすると、ふぅっと息を吐く。


「お前達の持つそのアイテム、カルマはその本…そしてお主が持つ腕輪はかつての封印された魔神を宿した『魔神具まじんぐ』と呼ばれこの世界ではその力を操れる者を魔神の化身として『魔神具を操るマジェスト』と呼んでいるのだ。」


ヤシュアはそう言うとお茶をゴクリ。


「よいか…まずは見せよう、ワシの力の名は『導きの笛』そして、魔神はこいつじゃ。」


そう言ったヤシュアは笛を構え吹きはじめる!!


ピーーーっ!ヒュルルーーーっ!


笛の音が辺りにこだまする…すると俺達の目の前に緑色の光りが現れると、その光は大きく輝いていく!そして、一瞬眩く輝く。

俺はその光に目がくらみ光に包まれた感覚がした。


「うっ…眩し…い。」

俺は徐々に視界が戻っていき目を開けていくと、そこにいたのは緑色に光る鳥の姿をした何かだったのだ。

そして光の鳥はバサバサッと羽音を立てヤシュアの肩に止まる。


「どうじゃ…ワシは”導きの笛”を持つ、魔神具を操るマジェストそしてこれがワシの導きの笛の魔神、『トーンウイング』じゃ。」

突然力を見せられたクロノ!自分とカルマにもあるこの力。

果たして物語はどうなる?

お読み下さりありがとうございました。



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