第5話ライブ配信シーン5

洞窟内でドラゴンに襲われかけへたりこんでいるカルマとそのドラゴンを倒し立ち尽くす一人の男。

カルマは男に声をかける。


「クロノ…なの……?」


背中の羽根は閉じていきそして消え去る、男はカルマを肩越しに見ると…フッと気を失う様にその場に崩れ去る。

そして男にしがみつき叫ぶカルマ。


「クロノーーーーーーーーーーッ!!」

俺が目覚めると見覚えのない部屋のベットの上で寝ていたようだ。徐々に思考も追いついてくる…。


「ん…んん………。」


ハッキリ目が覚めると鼻に届いてくるいい香り。


「ん…何かすっげーいい匂いがするな……。」


俺がそんな事を考えてると部屋の奥からトントンという音が聞こえてくる。もしかしてこれは料理を作ってる音なのか?軽快なリズムの調理音を聞きながら周りを見渡すとここはどうやら小さな小屋なのだろう…。俺はその匂いと音についついお腹がなってしまう… きゅるるるる~…


「あ……そういや…この世界でも腹減るんだな…。」


俺がつぶやくと奥の部屋から聞き覚えのある声が届く、どうやら俺が目覚めた事に気づいたようだ。


「クロノ!?気がついたのね?」


透き通る様なその声に俺は一瞬時が止まった気がする。その声の主はカルマだろう、彼女はトントンと足音を立てこちらに近づいてくる。


「お、おう!悪かったな…いつの間にか俺はまた気を失ったんだろ?」


俺はそう問いかけると階段を登ってきたカルマが俺の前に現れたんだ。エプロン姿のカルマはこうしていると凄く綺麗だった。すると突然耳に届くコメント。


『お?クロノ?気がついたのね?』

『マジ凄かったぜクロノ!』

『あんな化け物倒すんだもんな!』


(そうか…俺は気を失ったんだろ…ここに今居てこんなコメントが来るって事は俺は最初のチュートリアルをクリアできたのだろうか?)


そんな事を考えているとエプロン姿のカルマが俺のベットの前の椅子に腰を下ろす。


『っていうか、マジ、カルマちゃん可愛い』

『俺がクロノと変わりてえよ!』など勝手なコメントが聞こえる。

ふぅ〜っと俺はため息を着くとカルマの顔を見つめる。


「カルマ、この世界の事詳しく聞かせて欲しい、それによって俺はこれからどうしていけばいいのか考えたいんだ。」


俺の問いにカルマは表情を陰らせると小さく頷き話し始めたんだ。

「これはね…まずは僕、いや私の事から話さなければいけないの……。」

カルマはそう言うと目を閉じ続ける。

「私はここに来る前は普通のどこにでもいる学生だったのよ…。」

「そうだったんだな?」

俺はそう聞き返すと頷き続けるカルマ。

「そう…あれは今から一年前……。」

「ただいま~!お母さん!今日も部活でお腹ペコペコだよ!今日のご飯なに?」

「おかえり!でもご飯の前にお風呂入ってきなさい!」

「はああ〜い!そういえばお父さんは?」

「今日は、まだ帰ってきていないわね。それより早くお風呂入ってらっしゃい!」


私の日常は両親もいて楽しい学生生活を送っていたわ…この日までは……。

私がお風呂を終えご飯を平らげたのは夜の二十時くらい…その後、父が遅いのは気になりはしたけど部屋に戻りパソコンを起動させる。そこに映し出されたウインドウ画面にはメールが数件届いていた。私のリアル友人から二件、ネッ友から数件…そして、ラストは…見た事もないアドレスからのメールだった。


「誰なんだろうこのアドレス?」


ピロリーン!!


私は見慣れないアドレスに警戒心を抱き困惑しているとまた新しい新着メールが届く。


「至急…?」


メールの題名に至急などと書かれてるなんていかにも怪しいけど…私は嫌な予感がして恐る恐るだけど意を決して開くとそこには!?


『君の父はこのアプリの住人になってしまった…特別サービスとして君には父を救う権利を与えられた。救いたければサインアップログインの事。』


私はその内容に普段ならおかしいとしか思えないはずなのに…嫌な違和感を感じる。何故なら今日に限って父の帰りが遅いのだ。私は冷静なり部屋から母のいるであろう一階のキッチンに行ってみる。辺りを見回しても母の姿がないのだ、テレビの音が微かに聞こえる居間に向かうとそこで私の目に飛び込んできたのは賑やかなテレビのバラエティー番組の出演者の声。


「お、お母さん?」


私の声とテレビの音声だけが部屋に聞こえている。すると私の目に母のスマホが転がっているのが確認できた。私はすかさずスマホを手に取り画面を確認するとそこには私に届いたメール本文と同じものが母宛に届いていた。


『貴女の夫の安否確認はこちら⬇』


その下に貼られたURL。私は母のスマホを握りしめ自分の部屋に戻る。そしてパソコン画面を確認、URLを確認すると同じものだ。私は意を決してまずは先程のメールに返信を試みる。


『私の両親にも同じURLを送りませんでしたか?』


返信を待つ私…胸はドキドキ高鳴り緊張が全身に走った。すると送られてくるメール。


『このURLを開けば答えが分かる。これが最後のメールと思っていただこう。』

「その最終メールらしいメール内容に私はついにURLに入り込むと…クロノ…貴方のようにこの洞窟で倒れていたって訳よ…。」


彼女に起こった出来事を聞いた俺はその後の動向が気になり問うてみる。


「それでさっきの様な怪物が現れたりしたって訳なんだな?」

「そう…何も知らなかった私は途方にくれていると貴方のようにまさかの敵に襲われて…戦うなんて事が出来ない私は逃げてるうちに一冊の本を手にする事ができたの…それが貴方の腕輪みたいな物で私がこの世界で手に入れた力『叡智のえいちのしょ』よ…。」


そう言うと彼女は俺の目の前に一冊の本を取り出すと本を掲げ念をこめる!すると本は光だしふよふよ彼女の目の前で浮き始める。


「こ…これが叡智の書…なのか…。」

「そう…この世界で私が生きていく為の力…魔法というものも使えてそしてこの世界の知識を知れる私がこの世界にやってきた本当の目的は両親を取り戻す事。その為にきっと私にはこの力がピッタリだったんだと思うの…でもね…。」


そこまで話した彼女は現き加減に答える。


「私はこの世界を知ろうとした時、私の能力ではどうにもならない事を知ったの…私達の世界では有り得ないけど…単純に戦える力が…私には足りないの…。」


カルマはその目に涙を浮かべ出す。


「私は…父も母も助けたいの!?」

「あの頃のように幸せな生活を取り戻したいだけなの!!??」

「う…う…ぅぅぅぅ…ぅぅぅぅ………。」


俺は何故か、この子の為に何かできないか…俺に出来る事があるのならば…。


「俺が…お前を守ってやるよ!!」


俺は何の根拠も力をもないはずなのに、口が先に動いていた。

ここから俺達の異世界での生活は始まったんだ。

お読み下さりありがとうございました。それぞれの目的の為、異世界生活が始まった瞬間だったんだ。




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