第33話

「まずは、私のところの『猫』について、

 クルに見てもらおうと思うんだけど・・・」

「うんうん。」

慌ただしくクルと一緒に私の家までやって来たところで、

早速、検索画面を開く。


最初にこれを見せた時は大騒ぎだったけれど、

何かを説明する時にはよく使っているし、もうクルも慣れたものだ。



「こちらの『犬』と同じで、私達の民に飼われてることも多いけど、

 一人で気ままに暮らしてる印象も強いかな。

 あっ、動画があるから見てみようか。」

「うーん、私が聞いてる『猫の民』の話と、近い感じはするなあ。

 ・・・むっ、ちょっとはすばしっこいんだね。」

猫が可愛らしい姿でごろごろしているようなものは、

クルが求めているのとは違うだろうから、

狩りの様子をはじめとした、動きが映っている映像を、なるべく選んでゆく。


「・・・何これ。こっちの民って猫が好きなの?」

「そ、そういう人も多いかな。

 もちろん、犬が好きな人だってたくさんいるけど。」

・・・うん、毎回思い通りの動画を検索できるわけではないよね。

『犬の民』の遺伝子に刻まれたものでもあるのか、

クルが少し対抗心を燃やしている気もする。


それじゃあ、犬と猫が仲良くしているような、ほのぼのとしたものは・・・

本題からずれるし、反応が恐いので止めておこう。



「こんなところだけど、クルのところの『猫の民』って、

 やっぱり、こちらの『猫』と似てるのかな?」

「うん、実際に見たことは無いけど、そう思う!

 お父さんから聞いた話と、同じようなところはあったから。」


「じゃあ、その上で見てほしいものがあるんだけど・・・」

「うん・・・? これも『猫』の・・・えっ、えっ? なにこれ!」

クルが良い反応。知らないと、驚くのも無理はないよね。


「これはね、ここに映ってるものに秘密があるんだけど・・・

 明日買い物に行けば、お昼頃には持っていけるかな。」

「ええっ! つまり、こんなことができるってこと!?

 やってみようよ、ハルカ!」


「うん! あっ、その後のことも考えようね。」

「そっか、そうだね。じゃあ私があれを持っていけば・・・」

うん、少しばかり悪い顔になってるよね、私達。

でも、たまにはこんな内緒話みたいなことをするのも良いか。



「あっ、ハルカ。日が沈んできたよ。

 そろそろお肉持って帰らなきゃ。」

「そうだね! すぐに準備するから、少し待ってて!」

さて、元々はクルと狩りに行っている時に、急にこちらに来てもらったので、

『猫の民』の問題があったとはいえ、ご両親にもお礼が必要である。


干し肉もあるし、そこまで気を遣わなくて良いとは言ってくれたけど、

明日もお騒がせすることになるかもしれないから、

こういうところは、ちゃんとしておきたいな。


・・・ご飯は美味しいほうが良いという気持ちが、

クルにも私にもあるのは確かだけど。



「ハルカ、今夜は予定通り、うちに泊まるよね?

 朝に戻る時には、急いで送っていくから。」

「あっ・・・早すぎるとお店が開いてないから、

 ゆっくりでいいよ。」


・・・うん、元々その予定だったのは確かだけど、

午前中に買い物に行って、またクルの側に戻るとなると、

かなり慌ただしくはなるよね。


そうは言っても、急にお泊りを止めたらクルが残念がるし、

私も楽しみにしていたことではあるから、多少の疲れは我慢しよう。

冷蔵庫から取り出したお肉と、いつもの荷物を持って、

既に準備万端なクルのもとへ。明日は上手くいくと良いな。

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