第31話
「あれ? ハルカ、何してるの?」
「この植物を紙に書き写してるの。
私のところでは見かけないから、調べてみようと思って。」
今日はクルの世界にやって来て、いつものことではあるけれど、
狩りと、食用の野草や果物採取のお手伝い。
・・・いや、ほとんどクルがやってしまうのだけど。
ちょっと休憩という時に、ペンとノートを取り出して、
簡単なスケッチとメモを書いていたら、クルが覗き込んできた。
「うん・・・? ハルカのところに無いのに、調べるの?」
「えっとね、本当はあるけど私が知らないだけなのか、
実際に無いけど、似た種類の植物が私のところにあるのか、
それとも、どれにも似ていないのか・・・ってことを調べたいんだ。」
「そ、そうなんだ・・・難しそう・・・」
「うん、実際難しいとは思うけど、植物の特徴ってね、
葉っぱの形とか、花とか実に出てくるから、
この植物とあの植物は近い仲間だって、調べる人もたくさんいるんだ。
だから私も書き残しておいて、向こうにある図鑑と見比べるの。」
「ふうん・・・私はやっぱり、食べられるかどうかが一番大事だな。」
「あはは、それは確かに大事だね。
そういうところに注目してる人達は、私のところにもいるけど、
やっぱり私達の民って、調べるのが好きなのかも。」
「うん、私から見ると、すっごくそう思うよ。」
ちょっと思い付いたことを言ったら、クルが強めにうなずいてきた。
自分と違った視点からの意見は大事だって、時々耳にするけれど、
これもクルがいるからこそ、感じられることかな?
「ねえ、私のところとクルのところって、繋がってるし、
みんながみんなじゃないけど、行き来が出来るでしょ?
じゃあ、動物や植物って、どれくらい似てるのかな。」
せっかくこんな話題になったので、
最近考えていたことを、クルにも話してみる。
「私とクルは言葉が通じるし、『ウサギ』と呼んでる動物も、
少し大きさは違うけど、似た形だったよね。
『犬の民』と私のところの『犬』も、耳や尻尾はほとんど一緒だし。」
「うーん・・・そう言われてみると、ちょっと気になるかも。」
「ねえ、クルが無理せず行ける範囲でいいから、
こちら側のこと、私はもっと知りたいな。
ほら、あの時見せた、私のところの地図みたいなもの、
こっちのも作ることができたら、すごく楽しそうじゃない?」
「あっ! それ、私もやってみたい!」
思いのほか、熱く語ってしまった気もするけれど、
クルも乗って来てくれた。
そういえば、初めて地図を見た時は興味津々だったよね。
「それから、私もハルカのところ、もっと見てみたいな。
遠いところまで行けば、あの変わった四角いので見せてくれたもの、
本当に見られるんでしょ?」
「もちろん! 私以外の民もいっぱいだから、
気を付けなきゃいけないけど、行きたいのは私も一緒だよ。」
検索画面の向こう側にある景色を・・・
きっと食べ物もだろうけど、クルも楽しみにしているようだ。
「それじゃあ、ひとまずの目標として、
お互いのところをもっと旅してみよう! ってことでいいかな。」
「うんっ!」
周囲の数多くの人達に、クルの正体を明かすわけにはいかない、私が住む世界。
逆に、何が待っているか分からない、クルが暮らす世界。
口で言うほど簡単ではないだろうけど、私達は一つの決意を固めたんだ。
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