Episode.32 Think!

「ねえ、さえこ……」


 私は、夢心地の冴子に話かけたが、返事が無い。


「さ え こ っ て ば っ !」


「……ん〜⤴?」


 冴子がスローモーションのようにゆ〜〜っくりとこちらを向いた。 


 あ〜あ。 ……あのしっかり者の冴子が、こんなにボーっとしちゃうなんてね……。


 私は、そんな冴子に、どうしても言わなければならない、今言わないとあとで必ず後悔すると思った言葉を口にした。


「……私、さえこのためならどんな事でもするし、もしさえこが世界中の人を敵に回すような事になっても、私だけは味方になるつもりよ。 ……でも……」


「……? ……『でも』?」


「……私、さえこがあの人と付き合うのは……素直に喜べない……」


「え? ど、どうして!?」


 冴子は一瞬で泣きそうな顔になり、聞き返してきた。


「……このまま二人が結ばれても、さえこが本当の幸せになれると思えない……」


「どうして? 『中山道 冴子』が『水戸街道 冴子』に変わるだけよ! 確かに最初は戸惑うかも知れないけど、すぐに慣れるわ! 安心しなさい! はっはっは!」 


 あちゃあ〜〜! 笑い方までそっくりになってきた!


「私が心配してるのは名前そこじゃない! 70歳以上年上の人と結ばれて、さえこが本当に幸せになれるのか? ……って事よ!」


「めぐみ、何言ってるのよ! 幸せになれるに決まってるじゃない!」


「さえこ、良ーく考えてよ! ……あのコーモン様は、もうすぐ100歳でしょ!? 身体だってどんどん弱ってくだろうし、それに……」


「それに?」


「い……いや……その……」


 私は一番伝えたかった言葉を口にする前に、顔や耳が熱くなるのを感じて口籠くちごもった。


 ……だって、結婚したら……


 ……当然


 ……アレとかコレとか……


 ……ねぇ(〃ω〃) ←お年頃♡

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