Episode.29 Demon

 映画やドラマで観たが、ゾンビに囓られた人はゾンビになっちゃうんだ!


 やだやだやだ! 何がやだって、『蛸殴たこなぐり使手恵してえ』のままゾンビになって、死んでも死ねないなんて、死んでもやだっ!(←ん?)


「離して〜っ!」


 恐怖のあまり、力が入らなかったが、必死の抵抗を試みた!


 すると……


 あれ? 思ったより簡単に手を振りほどけた! ラッキー♪


 急いでお部屋から出ようとした瞬間……


 巨大な何かがドアを開けて入って来た!?


 それは……


 見上げる程大きくて……


 ツノが生えてて……


 口が耳まで裂けてて……


 まさしく絵に描いたような……


 オ ニ だ ぁ 〜 〜 〜 !


 あわわわわ〜〜〜っ!


 オニが、まじまじと私の顔を見て……


わし酒雨天しゅうてん童子どうじ! これはこれは! 実に美しき女子おなごじゃ! 最高の酒のツマミになりそうじゃわい! わっはっは〜〜」


 ……と言いながら鋭い爪の生えた手をこちらに伸ばして来た!


 ゾンビの次はオニ!? 


 ♪一難去ってまた一難、ぶっちゃけ有り得な〜い♪(←古っ!)


 ど、どうなってんの!?


 私は回れ右して逃げようとしたが、そこにはさっきのゾンビがっ!


 ふぇ〜〜ん💦 もうダメだ〜〜!


 読者の皆様! 短い間だったけど、自称『めぐみ』こと『蛸殴たこなぐり使手恵してえ』を可愛がってくれて本当にありがとうございました(泣)


 ……!?


 えっ!?


 ……ゾンビが私をかばうように背を向けながら、オニとの間に割って入った!?


 そして……


「娘さん! ここは拙者に任せて、安全な所に隠れていなさい……」と、渋〜い声で言った。


 私がお部屋の隅に身を隠したのを確認すると、ゾンビはオニに向かって……


酒雨天しゅうてん童子どうじとやら! こちらの可愛い娘さんに手を出すとあらば、この『烏賊いか十兵衛じゅうべえ』がお相手つかまつる!」と言いながら、スラリと抜いた刀を、悠然とオニに向けた!


 こ、このゾンビが……烏賊十兵衛……?


 やだぁ♥……ちょっと……かっこいい……(〃∇〃)ポッ!


 オニが文字通り『鬼のような形相ぎょうそう』で怒鳴った!


「何を小癪こしゃくな〜! おい! 野郎ども!」


『へいっ!』

おう!』

『キキキッ』


 何かちっちゃこいオニが、群れをなしてなだれ込んで来た!


「このさむらいをコテンパンにやっつけちまえ〜」


 オニがちっちゃこいオニたちに命令した!


 あ〜! 烏賊様が危ない!


 誰か〜! 誰か助けて〜! ……って、他に誰か居るわけないよね💦


「おい……小童こわっぱ


 ……!?


 ええっ!?


 私とオニの間に割って入った烏賊様とオニの間にご先祖さまが割って入った!?(←合ってるよね?)


 ……そして、オニに向かって


小童こわっぱ! 麻呂の顔を忘れたとは云わせぬ! タコ殴りにするでおじゃるぞマジで!」と言った。


 わっぱ!? わっぱの間違いでしょ!?


 ……オニがしばらくご先祖さまの顔を見ていたが……


「あ! ……これはこれは! 奥鳥羽おくとば諏打鼓すだこの旦那! お、お久しぶりですぅ〜! や、やだなぁ! 居るなら居るって言ってくれれば良かったのに〜」


 ……と言いつつ、ちぢこまって正座した! ちっちゃこいオニたちも、へらへらと愛想笑いしながら、お行儀良くしている!


 奥鳥羽おくとば諏打鼓すだこ……? 初耳だなあ……。


 ご先祖さまがこちらを振り返り……


「めぐみよ……麻呂がみかどより『蛸殴』の姓を賜ったのは、この『酒雨天童子』を退治したからじゃ。 麻呂の旧姓は『奥鳥羽おくとば』であった」と言った。


 ……!


 ……旧姓『だこ』!? 『オクトパス』って、英語で『タコ』の事よね? ……偶然だろうけど、我が家は元々、タコとは切っても切れない関係だったのね(泣)


「お、おい、みんな! そろそろ、おいとましようか〜! 帰ってご飯にしよう! 今日はみんなの好きな『肉抜きカレーうどん』よ〜」


「わーい! 楽しみだなあ〜」


「え〜っ……おいら『肉抜きすき焼』が良かったのにな〜」


「こらっ! オニゴロー! 何でも美味しく食べないと、わしみたいに大きくなれないぞっ」


「ちぇっ! は〜い!」


「いい子ね〜〜(ナデナデ)」


 ……『肉抜きすき焼き』って、どんな物か想像つかないが、さっきまでの迫力は何処どこへやら、オニたちはご先祖さまにペコペコ頭を下げながら帰路に着いた。


「おいっ! 烏賊十兵衛……」


「ギクッ」


 ……ご先祖さまが、オニに紛れてお部屋から出て行こうとする烏賊十兵衛を目ざとく見付け、呼び止めた。


「……お主……酒雨天童子と結託して……ひと芝居打ったな……?」


「……あ? ……いや……その……」


 ……シドロモドロだ。


「タコ殴りにするでおじゃるぞ、マジで!」


「ご! ごめんなさいっ!」


 烏賊十兵衛が、赤いタコのお面をご先祖さまに投げつけ、袴を持ち上げてスタコラサッサと逃げ出した!


 ……のちにご先祖さまから聞いたお話では、蛸殴家への恨みから死にきれず、ゾンビになって復讐の好機を狙っていた烏賊十兵衛が、なんと私に一目惚れしてしまったそうなんだ。


 そして、同じく蛸殴家に恨みを持つ酒雨天童子に協力してもらい、私の前で良い所を見せて惚れさせ、付き合っちゃおうって魂胆だったと言う。


 小 学 生 か っ 💢


 烏賊なんて、危うく好きになりかけたけど、あいつ、とんだ『イカサマ』だったのねっ!


 ……おあとがよろしいようで🙇🏻

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