Episode.10 "True Blue"
宏美の漠然とした不安を取り除くには、この方法しかない……んだけど……
この作戦の成否は、全て
瀬楠っ! ……私、あんたの『宏美への愛』を信じるからねっ!
よし、作戦決行っ!
……私は立ち上がり、瀬楠の肩に手を回しながら「ねぇ、瀬楠ぅ~……宏美、疲れてるみたいだから、
……『ふ・た・り・で』の部分は、映画かドラマの見よう見まねで、可能な限り色っぽく迫ってみました♡
『ビシッ!』
……瀬楠が、肩に回した私の右腕を渾身の力で払い除け……
「ざけんじゃねー! お前、顔は可愛いけど、最っ低の女だな!」……と、吐き捨てるように怒鳴った。
店内は静まり返り、宏美は驚いて立ちすくんでいる!
やった! OK! 作戦大成功〜!
……もし瀬楠が私の誘いに乗るようなら、作戦は大失敗だし、何より私の大切な友達の宏美を不幸にしてしまう所だった。
あんたを信用して正解だったよ、瀬楠! グッジョブ!
……気付くと店内は水を打ったように静かなままで、ギャラリーは私達の動向を見ている。
……おっと! 最後の仕上げ……
「何よ! あんたみたいな男、私もお断りよ! あっかんべぇ~~~!」
……人類史上、これ程までに
私は『悪女』を演じたまま、人々の刺さるような視線を一手に引き受けつつ、お店を後にした。
……数分歩いて、人通りの無い場所に出た。
私はお店の方を振り返り……
『ひろみ! 脅かしちゃってごめん! でも……安心したでしょ? 瀬楠とお幸せに♡』
……と、祈りを込めて呟いた。
……あ……あれ?
作戦は大成功で、とても清々しい気持ちのはずなのに……
……涙が……止めどなく流れてくる……。
……瀬楠は、もう手の届かない人になっちゃった。
その上、私……瀬楠に嫌われちゃった……。
『最っ低の女』って言葉が、未だに耳の中で
……更に右手には、瀬楠に腕を払われた時の痛みが、まだしっかりと残っている……。
……私……やっと自分の本当の気持ちに気付いた……
『瀬楠の事を大好きだった』……って……。
自分が選んだ道とは言え、今の私……とても孤独で、世界でたった一人だけ取り残されたような気がして……自分で自分が可哀そうになった……。
「ふえぇぇぇぇ~~~~~ん」……と、人目が無いのを良い事に、座り込んで声を上げて泣いた。
そんな私を、街灯だけが気の毒そうに、暖かい光で照らしてくれていた。
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