Episode.09 Blue

「……で、でも、もしも瀬楠せぐすくんの名前が『瀬楠』じゃ無かったとしたら……どう?」


 宏美が目を潤ませながら聴いてきた。



 宏美? どうしちゃったの?


 前は、こんな子じゃ無かった。 ちょっと幼さはあったけど、もっと元気ハツラツで、悩みなんて持ち前の元気で吹き飛ばしてたのに……。

 


 これ……もしかして『マリッジブルー』?


 結婚を控えた女子が、精神的に不安定になっちゃう事があり、それを『マリッジブルー』と言うらしい。


 食べる物もセーブしてるようだし、何より色々と将来が不安になっている時なんだろうな……かわいそうに……。


 私は出来るだけ明るい声で言った。


「『もしも』の話はめようよ。 それより……あっ」


 瀬楠が戻って来た。 宏美は泣き顔で崩れたメイク顔を瀬楠に見られたくないからか、うつむいてしまった。


「ん? どうした? てっきり昔話で盛り上がってると思ったのに!」と、瀬楠が心配そうに宏美を覗き込んだ。


 瀬楠……優しいな……。


 ……!


 そうだっ! 宏美を安心させる、良い方法を思い付いちゃった!

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