Episode.08 Q and A

 何? 今の……!


 私、瀬楠せぐすとは、どう考えても縁が無いから、何とも思ってなかったはずなのに……


「な……なにバカ言ってんのよ! ひろみ、お腹が空き過ぎて、脳に栄養が行き渡って無いんじゃないの!?」……と冗談交じりに言ったが、宏美は真顔で……


「めぐみ、瀬楠くんとお話する時、いつもイライラしてるじゃない? だから私……きっとめぐみも瀬楠くんの事を好きなんだろうな……って思ってた……」


 ……確かに『好きか? 嫌いか?』と聴かれれば『嫌いでは無い』が、名前の事を考えたら絶対に好きにはならない。 ……ってか、好きになっちゃいけないんだ!


「ひろみ、安心して! 私は瀬楠を絶対、絶対、絶〜〜対、好きにはならないから!」


「……何で? 瀬楠くんも、きっとめぐみを好きよ? ……めぐみがその気になれば瀬楠くんだって……」


「大丈夫! 無人島にあいつと二人だけで漂着しても、私は絶対、あいつとは結婚しないから!」


「……逆にどうして? 瀬楠くんはとっても素敵な人なのに、なんでそこまで否定するの?」


 ……あいつが素敵かどうかは、個人の嗜好の問題だから敢えてコメントを控えますが、私には確固たる理由がある!


 ……致し方なし……その理由わけを教えてあげましょう……。


「さて、ではここで問題です。 ……私と瀬楠が結婚したら、名前が変わります。 どういう名前になるでしょう? 二通ふたとおり答えよ!」


 急展開で驚いたのか、宏美が真ん丸な目で私を見返したが、すぐに考え始めた。


 今、宏美の脳内では……


瀬楠セックス 使手恵して~』と『蛸殴たこなぐり 信太しんだ~』の2種類の解答が導き出されているはずだ。


 そして!


 ……案の定、清純な宏美が小さく悲鳴をあげ、耳まで真っ赤にして顔を押さえた。


「ね? 判ったでしょ? 私があいつと『絶対に結婚しない』って断言した意味……」


 宏美はまだその名前の衝撃から立ち直れていない模様……。

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