夜道の出来事
彼氏の家から自宅へ帰る道すがら、街灯すらない山道でかれこれ二十分以上、おかしな女に追いかけられている。
白いワンピースを纏い長い黒髪を振り乱しながら、裸足で私の車を追いかけてくる。この世の者とは思えぬ形相だ。スピードを上げても、全く諦める素振りがない。
もう! うっとうしい! なんなのよ!
車を急停止させ、シフトレバーをRに入れる。アクセルを思いっきり踏み込むと、ドンッという音と共に女の姿が消えた。
車を降り、携帯電話のライトを使って車の下を覗き込む。……誰もいない。周囲を見渡しても女の姿は確認できなかった。
なーんだ、あの女幽霊だったのね。
ホッと胸を撫で下ろし運転席に戻った。車を発進させようとちらっとバックミラーに目をやると、頭から血を流した女がニタァと笑みを浮かべて後部座席に座っている姿が映った。
何よ、あんた幽霊じゃなかったの?じゃあこれから本当に幽霊になってもらわなきゃ。私の車を汚しやがって。まったく、数時間の間に二人も殺すことになるなんて、今日は本当に碌でもない日。
うんざりした気分で助手席に投げてあるバッグから血のついた小型のナタを取り出し、後部座席のドアを開けた。
夢か現か ユウヤミ @yumaxxx
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