溶けてしまいそう?

「……!?」


「どしたん真莉」


「め、めめ……」


「め?」


「メルトが……15周年……!」


「なん……やて………!?」



〜ラーメン屋〜


「で、メルトって何なのさ」


「ありゃ、店長ボカロわからないほうのひとなんや。まぁ、有名なボカロ曲なんよ、メルトって曲」


「なるほどねー。にしても、歌手が何周年とかじゃなくて、一曲が何周年とかで祝われるとは……」


 店長はラーメンを作りながらそう答える。


「ボカロやからなぁ。曲自体が評価されることも多いんよね」


「そうそう。千本桜とか、みくみくにしてあげるとかね」


「にしても、15年経った今でも愛されとうって凄いね、その曲。私も聞いてみようかなー」


「メルトはなぁ、歌詞もええんよ。甘酸っぱくてなぁ……」


「うん、前琴路ちゃんに向けて歌ったら悶絶しながら溶けてたもんね」


「溶けてへんわ!」


 顔を真っ赤にしてツッコむ琴路ちゃんも可愛いなぁ。


「そういう真莉も顔赤くして歌っとったけどな!可愛かったで〜」


「えへ、えへへ」


「「照れ方気持ち悪っ!!」」


「ふたりともひどいー!!」


「ふふっ」


「もう……」


 でも、やっぱりここは落ち着くなぁ。あれから2年……。


「……あれ、メルトと同い年の子って今年高校受験じゃん」


「え、ryoさん高校受験すんの!?」


「違う、そうじゃない」




「ほい、お待ちどさん!」


「うーん、美味しい!頬が溶け落ちるぐらい!」


「やっぱり美味いなぁ、店長のラーメンは」


「あっはっは!これがとんこつパワーよ!思い知ったかー!」


「「ははぁー!」」




「美味しかったでーす、ごちそうさまでした〜!」


「ごちそうさん!また来るで」


「ん、いつでも待っとーよー」


 ガラガラガラ。


「……あ、雨」


「ほんまやな……傘持ってきてへんわ……」


「あ、折りたたみ傘あった!えへへ、相合い傘だね……」


「いちいち言わんでいいっ!」


 ……いつも手を繋いで歩いてるから、近距離なことには慣れてるはずなのに。


 雨が降る中、私達のところだけがぽっかりと穴が空いたように周りと切り離される。そのせいか、より琴路ちゃんのことを意識してしまって……。


「あ、家ついたよー」


「おぅ、ホントありがとな!」


「うん、また明日ー」


「じゃあなー」


 特に何事もなく、いつも通り終わったのでした。



「ホンマは私も折りたたみ傘持っとったなんて言ったら、やっぱり引かれたんかな……」


「え、何お姉ちゃん。また惚気?」


「〜〜っ!ちゃうわ!」



――――――――――――――――――――――

琴路の妹


高校一年生。しっかりもので、いつも姉の惚気話に付き合ってる優しい妹。姉妹の仲は良好。

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