そうかそうかつまり君は

「なぁ店長」


「ん?どげんかしたと?」


「いやさ、なんでこことんこつラーメンしかないん?」


「そりゃ、博多と言ったら豚骨やけんよ。というか、豚骨食べて育ってきたから豚骨以外の美味しさ理解できんのよね……


 ま、食べてる人自体は否定せんよ」


「なるほど」


 ガラガラガラ、と音を立てて扉が開く。


「こんにちは~」


「真莉、やっほー」


「いらっしゃ〜い」


「店長、いつもので」


「りょーかい」


 そう言って私は琴路ちゃんの隣に座る。


「……いい匂いやぁ」


「うん、美味しそうな匂いだねー」


「あ、ちゃうちゃう。そっちやのうて、真莉のほうや」


「嬉しいけどさ、琴路ちゃんってなんかちょっとアダルティなんだよね、言動が……」


「……自覚はなくもないわぁ」


「琴路ちゃん、今日は童心に帰って私と缶蹴りでもしよう!」


「……二人で!?」


 まぁラーメンをまだ食べてないのでその後なんだけどね。





「よし!腹ごしらえもできたし、やるぞぉ!」


「お、おー?」


 公園でやる気満々に叫ぶ私と琴路ちゃん。


「まずルール!鬼は相手を見つけたら缶を踏もう!


 そして、逃げる側は見つからないように!見つかったら全力で缶を蹴りましょう!」


「ふむふむ」


「そして、捕まっても他の人が缶を蹴ったらその人は復活!」


「なるほど……ん?」


「制限時間は20分!それじゃあ鬼を決めよう!」


「ちょ、ちょい待ってな。えっと……捕まっても他の人が缶を蹴ったらって……」


「あ、流石に二人は面白くないかと思って店長呼んできました」


「店長!?」




〜ラーメン屋〜


「あれ?今日臨時休業?」


「ここ美味しいから食べたかったんだけどなぁ」



〜公園〜


「遅れてごめんね〜」


「店長!来てくれてありがとう〜。およ?そちらの方は?」


「三人じゃあれでしょ?だから連れてきたんよ。」


「どうも〜。楓の友人だよ〜。気軽にマッキーって呼んでねー」


「かえで……?」


「私の名前だよ〜」


 店長が自分を指差す。……えぇ!?


「店長って店長っていう名前や無かったんか……」


「知りませんでした……」


「ふたりとも酷くない!?」


 ラーメン屋に通い始めてかれこれ2年。店長の名前がついにわかった瞬間でした。


「あれ?そういえばマッキー、仕事は?」


「ん?休みの電話入れたよ」



〜マッキーの職場〜


「……休みだっけ?」


「いやぁ、なんか用事らしくて」


「テンチョよりも出勤してるあの[マッキーの本名]さんが……!?」



〜公園〜


「じゃあ鬼は僕だね」


「私蹴るよ〜。おらぁー」


 店長……もとい、楓さんが蹴った缶は……



 パリーン



「「「「……」」」」




「あの〜、すみません。弁償します……」


「いや、別にいい。窓際にクジャクヤママユの標本を置いていた僕が悪いからね」


「「「「うっ……」」」」


 冷静にそう告げる男性。


「でも……そうかそうか、つまり君たちはそういう感じな方たちか。ちゃんと誤ってくれてありがとう」


「「「「……っ!」」」」


 この人、いい人過ぎるっ!


「弁償じゃなくても、せめて何か……」


「うーん……あ、ならそうだね。僕も一緒に缶蹴りに混ぜてくれ。久しぶりに童心に帰りたいんだ」


「そんなことなら……!」



 この後めちゃくちゃ缶蹴りした。

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