帰路
一行はヒカリの魔法によって、すっかり元気を取り戻し、ヒカリの発案でアマルティア城へと向かうことにした。
「私たちも……行ってもいいのだろうか?」
「大丈夫っスよ!あっしの影響で、アマルティア国民はみんな悪魔の姿は見慣れてるッス!」
「そうですよカイモスさん!……それに、私は「人間と悪魔の共存」を願っています……。その為には、リーピ村の
「……「神」にそこまで言われちゃ、やるしかねぇな!ハッハッハ!」
カイモスは満面の笑みで、豪快に大笑いした。
そうして、しばらく歩いていた一行だったが、それに最初に気がついたのはミライだった。
「……なんか、前方から、色んな音が聞こえるんだけど……」
そう言われて、一行は耳を澄ます。
ヒカリとミライ、そしてデーオスは、聞き覚えのある足音と叫び声だと、何となく気づいた。
そして徐々に前方から砂煙を轟々と舞い上げ、それが近づいてきた。
「アレは……部隊長?」
パカラッパカラッと足音をたてながら、華麗に馬2頭を操る部隊長。そして引っ張られる馬車の中から、リタとヘクが顔をひょっこりと出して、何やら叫んでいる。
「リタ!ヘク!」
【ヒカリ急に姉ちゃみんな王が心配命令オレは私なんです!!】
リタとヘクが、同時に叫んでいるので、何を言っているのかさっぱり理解出来ない。
ヒヒーン!!
ようやく馬車がヒカリ達の目の前で止まった。
すると、少しフライング気味に、中から双子が飛び出して来た。
「ヒカリ姉ちゃん無事だったのか!」
「良かったですぅ……」
「心配して来てくれたの?」
「だって、急に空が変な雲に覆われて……」
「それで……私達……王様に報告しに行ったら……」
「フォス王もその異変に気づいててさ、オレ達、そのまま頼み込んで……」
「そうなんです!……そしたら王様が……「王直々の初任務は、ヒカリ嬢達の様子を見てくることだ!」って……」
「それで、行き先を知ってた部隊長にお願いして、ここまで来たんだぜ!」
「……そういう事だったのね……。2人とも心配かけたわね、ごめんなさい」
「いや、無事ならいいんだ!なっ?ヘク」
「そうだね!リタ」
双子は顔を見合せ、笑い合った。
「そうだ!ヘクから預かっていたリボン、返さなきゃね」
「は、はい……役に……立ちましたか?」
「とっても!……やっぱり、リタとヘクのご両親は、偉大な方だったのね」
「当たり前だろ!なんせ、オレの父ちゃんと母ちゃんは偉大だからな!」
「り、リタ……同じ事を……ヒカリお姉さんは……言ってくれてるんだよ」
「えっ?そうなのか?」
リタの天然さに、そこにいた一行は笑いに包まれた。
それをきっかけに、ヘクがある事に気がついた。
「あれ?……もしかして……そこにいる……悪魔って……」
「おお!見た目がこんなにも変わってしまったのに、気づいてくれたか!」
「か、カイモスじいちゃん!」
「カイモスおじいちゃん!」
変わり果てた姿など意に介さず、双子はカイモスに抱きついた。
「2人とも、しばらく見ない内に、随分大人になったな!」
「カイモスじいちゃんも、しばらく見ない内に、随分悪魔っぽくなったな!」
「ハッハッハ!こりゃ一本取られたわ!」
「他の皆さんも……悪魔っぽく……なりましたね」
「へへっ!まぁ話すと長いから、気にしないでくれ!」
「……ん?そういえば……結局、悪魔のヤツ、戻って来てないのか?」
「悪魔さん……今頃……何してるんだろう?」
リタとヘクの「純粋無垢」であることが仇となって、事情を知っている者達全員の心は、ギュッと締め付けられる感覚に襲われた。
ヒカリはリタとヘクの目線に合わせるように前屈みになると、2人に尋ねた。
「リタ。ヘク。悪魔のこと……好き?」
「な、何だよ急に!気持ち悪ぃ!」
「ど、どういう……ことですか?」
「いいから教えて?どうなの?」
「うーん……まぁ、オレは好きか嫌いかで言えば……好き……になるのかなぁ」
「私は……ずっと怖かったけど……でも……優しいようなところもあって……気づけば……好きになってました……」
「……そう。それならちゃんと伝えなきゃね」
ヒカリは、ゆっくりと語りかけた。
意地が悪く、何を考えているのかわからない。しかし、雄弁で誇り高く、たった1人で世界を救い、そして、最後まで悪魔らしく散っていった、「ゴルロラヴィン」という真の英雄。
そんな悪魔の最期を、悲痛な思いでヒカリは伝えた。
「う……嘘だろ?あの悪魔が……」
「私は……信じられません!」
「2人の気持ちはよくわかるわ。私だって未だに信じられないもの。でも、もういない……いないのよ……」
今までに見たことも無い程、ヒカリの表情は沈痛な面持ちだった。
双子はそこから全てを察し、悲しみや戸惑いなどの様々な感情が、一気に心の中を渦巻いた。
そして、涙を流さぬよう、必死にこらえ、天を仰いだ。
少しでも声を出してしまえば、泣いてしまう。
そんな状態と葛藤する双子を見て、ヒカリは何も言わず2人を抱きしめた。
それからしばらくして、集まった一行は、アマルティア城下町へと帰路についたのだった。
―― そして、月日は流れ……。
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