第3話 ライブ当日(前編)

●はじめに(読みとばしても支障ありません)


皆さま、こんにちは。筆者です。


この物語を書き始めて、まだ間もないですが、"お気に入り"と"いいね"を頂けて、とても嬉しいです!!ありがとうございます!!


1話と2話を読んで、気づいた方もいらっしゃるかと思いますが、この作品に出てくる"七瀬みのり"さんは、私の推しをモチーフにしています。それこそ私の生きる源と言っても過言ではありません。笑


私は今、大学生で、卒論を書いている時期です。息抜きとして、これからも気ままに書いていけたらと思いますので、よろしくお願いします。


長文失礼しました。


権兵衛


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


(ここから本編)


ついにこの日がやってきた。

七瀬みのりライブツアーは今日で千秋楽。横浜公演。会場は横浜にあるアリーナ。相当な数の来場が見込まれる。


「おはよー」

「どうも」


日差しが照りつける正午、咲(さく)と駿也は待ち合わせに決めていた近くのファミレスで合流した。


「入場が17時で開演が18時なのに、正午から集合するの、少し早くない?」


咲の疑問に駿也はやや食い気味で返答する。


「物販と特設ブースがあります!」

「は、はぁ」


少し驚いた咲をみて、駿也はふと我に返ったように訂正する。


「あ、ごめんなさい。オタクが出てしまいました」


少し経つと咲はくすりと笑いだした。


「なんで謝るの?その熱量、伝わってきた。立花君の気持ち」


「好きなものに夢中になれるっていいことだし、幸せな瞬間だよね」


咲はなんとなく口走ったが、自分で何を言っているのかよく分からなかった。

何言ってんだろ……雰囲気だけ良さげなこと言っちゃった。変に思われたかな?


一方の駿也は少し感動していた。

やっぱりこの人。良い人だ!

カッコいいなぁ小田さん。


「ところで物販と特設ブースについて詳しく教えて」

「あ、はい。まずライブ前はファン達の間での情報戦です。特にみのりんのライブ前はそれぞれ別の時間から開催されたりするんです。そうした情報をSNSで拾い、すぐ向かえるように早めに現地に集まったんです」

「ふむふむ」

「物販はタオルやTシャツ、ペンライト、それこそ"あおり"等、通信販売と同じ商品が売られています。買い逃しがある場合はそこで買います」

「なるほど」

「そして特設ブースはファンクラブ総合案内の他に、当日販売限定のポスター、写真。屋台や夢ガチャが行われています」

「夢ガチャ?」

「はい。夢ガチャとは、当たれば実際のライブ後にみのりん本人とお会いして写真が撮れるという、まさに夢です。このためだけに早く来る人も少なくありません」

「実際に会える……!」

「でも当たるのは5組だけということらしいです。よほどの運がなければ、当たりませんね」


そうこう喋りながら2人は昼食を済ませ、いざ物販会場に向かった。


『えーこれより、物販を行います。4列になって、お並び下さい』


14時の知らせと共に、ものすごい隊列は一歩一歩進む。もちろん2人もその中に混ざっている。


「ひえー。すごい人。こんなに並ぶんだ」

「これがライブ前って感じがして、良いんです」

「某夢の国より並んでるんじゃない?」

「まあ我々にとって夢の国ですからね」


約40分並び、2人の購入は済んだ。


「あおり!!手に入れたー!」

「次は特設ブースでガチャ引きに行きましょうか」

「そうだねって……うわめっちゃ並んどる!!」

「流石に1時間超えそうですね」

「でも……並ばなきゃ引けない!」

「ですね」


意を決して、2人は行列に並ぶ。

その間、2人は七瀬みのりの曲、イントロクイズで時間を潰すのであった。


『〜〜〜〜〜はっ』

「サンシャインフラワー!」

「わっ、立花君。早すぎワロタ」


『くっ』

「「血と涙」」

「同時でしたね」

「これだけ唯一、前向きになれなかった曲だからね。わかったよ」


イントロクイズは終始、駿也の無双状態だった。流石の咲も若干引き気味だった。


「立花君、強すぎ」


ようやく2人に夢ガチャの順番が回ってきた。


まずは駿也から回す。

ガラガラと音を出した後、2周ほど回って、白い球が出てきた。


「あー、残念。ハズレでした。残念賞は一言ダミヘ(ダミーヘッドマイクの略)です。S向けか、M向け、どちらにしますか?」

「えーっと、Mで」

「へー。立花君て」

「いやいや。そういうことじゃ」

「うんうん。隠さなくても良いんだよー」


駿也はダミヘが設置されている隣のブースへと行く。その間に次の咲がガチャを回す。

ガラガラと音をたて、中からは赤色の球が出てきた。


『おめでとう〜おめでとう、君は幸せ〜』


七瀬みのりの曲「おめでとうのマーチ」のサビが流れると係の人がベルを鳴らした。


「おめでとうございます!当たりです!」

「うおー!やったー!」


そこにダミヘでセリフを聴き終えた駿也が出てきた。


「えっ!?小田さん!凄すぎ!!」

「当たったー」

「もしかして、おふたりはお連れさんですか?」

「あ」

「はい!そうです!」

「でしたら、1組5人までなら、okですので、良かったら、お連れさんも」

「えっ!ありがとうございます!」

「それではライブ終了後、この特設ブースに立ち寄って下さい。ご案内いたしますので」

「「はい!わかりました!」」


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


*豆知識(ダミヘセリフの内容)

夢ガチャの残念賞のダミヘセリフだが、その中身はS向けか、M向けかに分かれていた。

S向けは、ただ一方的に虐めたくなる。


『ねぇ、もっと聴いてってば。寂しいにゃん』


M向けは、ただ一方的に罵られる。


『ねぇ、聴きなさいよ!この豚!』


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○


ガチャを引き終え、あっという間に入場の時間となった。


「そういえば、立花君、座席見た?」

「はい。自分も一階でした」

「そうなんだー。じゃあ入場もなんとなく一緒だね」


入場の列はとても長く。会場入りしたのは、入場開始から15分が経った頃だった。


「小田さん。まずは自分座席とトイレの位置を把握しておきましょう!」

「イエッサー」

「それでは小田さん。またライブが終わったら、ここに集合しましょう」

「イエッサー!」


咲は言われた通り、自分の座席とトイレを確認し、指定された席へと向かう。


「えっと……C列、うわ前から3列目!?近い!そして、15番と……ここかって、え!?」


咲の座る席の隣には、駿也が座っていた。


「立花君!隣だよー、となり」

「えっ!?小田さん!?」


(やったー。立花君が隣りなら、ペンライトの色とか、ライブのルールとか見よう見まねが出来るー)

(小田さんが隣か、なんかちょっと嬉しいけどなぁ。大丈夫かな)


そうした2人の気持ちの整理がつくやいなや、開演の幕があいた。照明は暗く落とされ、真っ暗なステージのスクリーンには、ライブツアーの始まりを告げるカウントダウン。

辺りにペンライトが光る。各々の表情は分からないが、振り方からその熱気が伺い知れる。ちなみに声出しはNGである。


(5・4・3・2・1・0……)


『ねぇ、聴こえる君たちの声が〜〜〜♪』


ステージ中央から、照明に当てられ存在感を増した天使が透き通った声で会場の雰囲気を飲み込んだ。


咲はあるアニメの伝説級の海賊のセリフを重ねる。

(七瀬みのりは実在する!!)



○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

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