第18話 加入
「スーちゃん? へぇじゃあコイツが良く話してたお前の男か!」
筋骨隆々といった体躯に加え、ワイルドな顔つきの男はニカっと笑い白い歯を見せる。
「うん!」
いや「うん!」じゃねぇ。
「俺の名前はドミノってんだ。よろしくな!」
「あ、あぁ……よ、よろしく」
俺はドミノと握手を交わす。
彼の手の皮はとても厚く、相当の鍛錬を積んでいることが分かった。
「エル」
ドミノとの握手が終わると、今度はパーティーメンバーの女の一人……エルと名乗る少女が俺の正面にくるように体を見せた。
非常に小柄だが、その割に不相応な大きさのローブ纏っており、何やら服ならぬローブに着せられている感が否めない。
肩まで伸ばしている茶髪の毛は特に結っておらず自然体で、眠そうな垂れ目が特徴的だった。
「あ、あぁ。よろしく」
如何にも人と関わるのを面倒くさそうに思っていそうな雰囲気だったが、向こうから話し掛けてきたことで俺は少したじろぐ。
しかし何はともあれ、流れるように俺はパーティーの二人と挨拶を交わした。
後は二人だ。
「うぅ……」
しかしその内女の方は俺のことを警戒しているのかエルの後ろに隠れ、おびえた様子でこちらを見ていた。
「ウーリャ。ちゃんと挨拶」
「ぼ、僕の名前は……ウーリャ、です」
エルに促されるように、一人称が『僕』の少女は名をウーリャを名乗った。
「スパーダだ。よろしく」
何だろう。あぁやっておどおどされると逆にこっちが冷静になるな。
ウーリャは良い緩衝材のような役割を果たした。
そしてもう一人の男の方は、
「……」
俺に訝し気な視線を送っていた。
「それでねシェイズさん! お願いがあるの!」
お、何だいきなり切り出すのか。
恐らくあまり俺のことを良く思っていないであろうその男に、リンゼは話を切り出した。
「何だ?」
声音で分かる。
この様子じゃあ、交渉の余地なんて無く断られるだろ。
シェイズという男の様子からそう判断した俺は軽く鼻を鳴らすが、
「あ、あのね。スーちゃんを……私たちのパーティーに入れてほしいの!」
「いいだろう」
それ見たことか……って……ん……?
聞き間違いだろうか。
シェイズの放った言葉が俺の予想と真逆のものに聞こえたんだが……。
「既に噂は広まっている。スパーダ……君は先日、決闘でリンゼに勝ったそうだな? それも、彼女の剣を真っ二つに折って」
「え、あ……あぁ」
俺が答えると、シェイズは訝し気な視線はそのままに、だが口元は確かに笑っていた。
「ならば、断る理由はない」
「え、いやいやいや! だってさっきからアンタ俺のことすごい目で見てるじゃねぇか!」
「ん? あぁ、悪いな。目つきが悪いのは生まれつきだ。初めて会った人間にはよく怖がられる」
自分の目頭の辺りに手をやりながらシェイズは言う。
「い、いやでもよ。俺はBランクだぞ!? お前らに迷惑が掛かるだけだって!」
「構わん。それはこれから鍛錬を更に積んで成長すればいい。それだけの才能がお前にはある」
シェイズから放たれた言葉に、思わず俺は息を呑んだ。
コイツ……本気かよ……。
依然として悪い目つきで俺を見詰めるシェイズ。
その目が、嘘偽りでないことを明瞭に物語っていた。
「ア、アンタがよくても……他の奴らは……」
「あぁ? 俺は別に構わねぇぜ? シェイズがいいってんならな」
「私も、問題ない。リンゼに勝ったなら入る資格は十分」
「……ぼ、僕も……大丈夫、です……」
「なっ!?」
驚くべきことに、俺の加入に対し、文句を言うメンバーは一人もいない。
決闘でリンゼを下したという事実のみが独り歩きし、俺の株を勝手に急上昇させてしまっていた。
「ね? 皆いい人たちでしょ? ちゃんとスーちゃんのこと実力で見てくれるもん」
「……」
リンゼ言葉に、俺は何も言えなかった。
「それじゃあ歓迎するよ、スパーダ。ようこそ、俺達のパーティーへ。改めて、リーダーのシェイズだ」
まだ……間に合う、断れ。
俺の脳内にそんな声が響く。
その通りだ、どう考えたって俺は釣り合っていない。
今からでも全部を説明して、訂正して、俺という人間を理解してもらわなければ。
そう勇み口を開く。
「あ、あぁ……よろしく……」
だが、俺は今朝冒険者を辞める宣言をした人間の言葉とは思えない……想定とは全く異なった言葉を放ってしまう。
……何でだよ……俺。
後悔も束の間、俺はSランクパーティーへの加入を果たしてしまったのだ。
激しい罪悪感に苛まれ、思わず唇を噛み締めた。
◇◇◇
小話:
パーティーは原則として何人以上といったような人数規定はありません。一人でも、十人でもパーティー登録をすればパーティーを作ることが可能です。
しかし人数が多すぎると報酬の割合も低くなってしまうのでどのパーティーも大体5人前後で組んでることが多いです。
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