41.彼 ②

 今幸せか否かを問われて答えに詰まる時は心が安定してるかどうかだけ考える。境遇や運命なんてまるで判断材料にならないんだから。そう彼は言うんだ。時々猫でクラゲでたまには彼女でもある不思議なあの彼さ。

 

 神から捨てられたような顔をして自分の人生を呪うよりそういう星のもとに生まれたんだって全て受け入れてしまえばいいさ。そう彼は言うんだ消し去りたいほどに恥ずかしくて愛おしい記憶の中のあの彼さ。


 そうだよ。よくある感情に支配されたつまらない国のど真ん中の大きな塔に棲んでいる今すぐ殺したいくらいみんなが夢中なあの彼さ。

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