第三話 遭遇

 さっきとは逆に暗い住宅街を一人で歩いてきた道を戻る。家へ帰る前にさっき気絶させた男達を確認しとくか。何か手がかりになる物があれば、男共と関わってる組織が分かるかもしれない。男達を気絶させた裏路地に入ると男達は消えていた。まあ、時間が空いたからその間に逃げられたか、もしくは、組織に回収されたかだな。裏路地から出ようとしたが、地面に何か落ちてる見つけ拾う。拾った物はボタンのように見える。ボタンに彫られている模様には見覚えがあった。その模様を見た瞬間に過去の情景が再生される。

 人や町が燃える匂いを、家族を燃やす炎を、町に火を放った奴らの胸に付いた模様、過去の地獄を思い出す。同じ模様まさか、俺達の家族を殺した組織がこの辺りに来ているのか。目的は? 暦を狙った理由は何だ?クソッ! 今考えても推測するための情報が足りない! いったん家に帰ってまた、情報収集を行うしかない。

 ボタンをポケットにしまい立ち上がろうと視線を上げた。そこにはさっきまで、だれ一人居なかった目の前に奴が立っていた。中世のスーツのような服を着込み、モノクルを付けた奴が俺の前に立ち俺を見て邪悪に嗤う。声が出ない。奴から放たれる存在感は威圧へと変わり、俺の体を襲う。今にも崩れそうな体を溢れ出る黒い感情が倒れないように支え、奴を睨ませる。


「いやはや、皆様お久しぶりですな。いや、皆様からしたらそれほど時間は経過していませんね」


 "男は、自身を睨みつける連を見て再度、口を開く"。


「あぁ、あなたは初めましてですね。再度、名乗らせてもらいましょう。私は、『混沌』と名乗らされている者です。さあ、プロローグは終わり、新たな物語が始まりました。今度こそ私を殺しに来なさい。私は、世界の果てで待って居ますよ。フフフ」


 奴は嗤いながら姿を消す。それと同時に奴からの威圧は消え身体が元通り動くようになる。なんだあいつは、まるでこの世界が物語のように……。いや、あいつの事を後回しだ。今、家に帰って情報収集は明日するしかないな。

 俺が、家の帰った頃には7:30を回っていた。家に帰ったは良いものの鏡夜の説教をくらう羽目になった。鏡夜に事情を説明をして30分ぐらい説教の後解放され、夕食を食べた。ちなみに夕食は唐揚げだった。

 気は進まないが、鏡夜にさっきの裏路地にあったボタンについて話さないといけない。俺達の仇の組織が関わっている可能性があるなら、無視できないのもあるが、俺があいつらの行動を邪魔した時点で狙われていても、何もおかしくはない。


「鏡夜、洗い終わったら少し話しがある」


 洗い物が終わった鏡夜は俺の前の椅子に座る。


「鏡夜このボタンの模様に見覚えがないか」


 さっき拾ってきたボタンを取り出して机の上に置く。ボタンの模様を見て鏡夜の顔が険しい顔に変わった。


「これは、何処で見つけたんだい?」


 鏡夜の顔に怒りの表情をのぞかせながら聴いてくる。鏡夜もあの事を忘れていないようだった。


「さっき説明した男達を気絶させた裏路地に落ちていた。多分、気絶させた男から落ちたか、回収しにきた仲間が落としたのどちらかだろうな」


 どちらにしても、あの男達があの組織に関与している事が確定してしまった。つまり、暦は組織に狙われている事も確定してしまった。どうするべきなのか。組織の狙い自体が不明なのもあって、彼女を捕まえられて何が起きるか分からないのが怖いな。


「連。彼女、暦さんだっけ。彼女をできる限り登下校を付きそうなり、方法で守った方が良いじゃない?」


 鏡夜からそんな事が提案される。さすがにそれはやり過ぎじゃないか? そもそもだ。組織の目的が彼女を標的として行おうとした誘拐かは、まだわからない。


「今、彼女があいつらの標的だったか分からない。みたいな事考えただろ」

 

 鏡夜の心を読んだような一言が見事に刺さる。


「そもそも、彼女を組織が行おうとしている事の一部を知っている時点で、彼女は組織の攻撃の標的に必ずなってるのは、考えなくても分かるだろうに。連は本当に時々、馬鹿になるよな」


「うぐっ」


 確かに、考えてみれば当たり前の事だった。思考を切り替えないといけない。何をしようとしているかは知らないが、あの時と同じように好きにさせてたまるか。


 鏡夜と二人であの後、話し合った翌日、俺は暦の家の前に立って彼女が家から出て来るのを待っている。あの後、鏡夜と話し合った後、暦に連絡してもしもに備えてこうして待っているわけだが、なぜ俺だけなんだ。解せない。人との関わりは、俺の一番苦手な事だと分かってやってるだろこれ。しかも、俺が家を出る時もニヤニヤしていたし何を考えてんだか鏡夜は。


 そんな事を考えていると玄関の扉が開き、暦が家から出て来る。1つに束ねられた白い髪が日に照らされ、水色の瞳が輝いて見惚れた。昨日は暗く分かりにくかったが、メチャクチャ美人だ。あまり、見るのも失礼なのだ。すぐに思考を切り替える。


「おはよ暦さん」


「おはよう、連君」


 軽く挨拶をして、すぐに本題へ入る事にする。一応昨日に説明したが、念のために訊いとくか。


「知らない俺がお前と一緒に登下校して良かったのか? お前も分かっていると思うが、教師に説明して護衛してもらった方が安全なはずだ」


 そもそも昨日助けてもらっただけで俺を信用して一緒に行動して良かったのかは分からない。もしも嫌ならば、無理に一緒に行動する必要はない。


「ううん。大丈夫、無理はしてないよ。むしろ、私からしたら都合がいいと言いますか...。」

「それよりも、学校行かないと遅刻しちゃうし行こう」


 

 暦は、何かを言ったように聞こえたが、何も無いというのだから何もないんだろう。

 暦は俺の横を通り過ぎて学校に向けて歩く。暦の顔が一瞬赤くなったように見えたが、気のせいだろう。俺は、少し先を歩く暦に追いつき、暦の隣を歩く。

 そう、あの頃のように。まだ、奴に奪われる前のよ...う......に......。


 俺の視界に田舎のような舗装があまりされてない道とよく知る少女が俺の前を歩んでいく。

 俺は、彼女と田舎道を歩いていた。その彼女と約束をして分かれた。その後にあの地獄があるとも知らずに。ただ、明日の再開を楽しみd...。

 

 まて、今のは誰の記憶だ? そもそも、こいつは誰だ? こんな記憶俺には。今、思い出されたような記憶に思考を巡らせると突然、頭が割れるのではないかと思うほどの激痛が奔る。身体が燃えるように熱い。神経を焼き切るような痛みが全身に奔る。痛みに耐えかねて俺は膝をついて地面に倒れてしまった。


「連君⁉連君大丈夫‼れ……ん……。……く……。……ん」


 その痛みは過去を再生させる。目の前の光景が変化する。炎の中を歩く一人の男、邪悪に笑い消えゆく姿を見た。その瞬間、俺の視界は暗転し気を失った。


 ~~~~~~~~


 連と暦さんがそろそろ学校に登校してくる頃かな。いや~、ついに連にも風が吹いてきたのかな。連は元々美形なのに顔を髪で隠しちゃうし、あのちょっと無愛想な態度のせいで誰かに声をかけられてなかったからな。なにげ、連のファンの子も学校にはちょくちょくいたんだけど……。

 連!? この感じ、連が気絶したのか! なんで? いや、考えていても埒が無い今すぐ連のもとまで行かないと。急いで学校の教室から出て連が居る暦さんの家に向かって走る。

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