第二話 不審者

 俺と鏡夜は別れスーパーに向かって歩く。まだ、五月なのもあり、もう夕暮れになっている。スーパーで数日分の食材を買ってスーパーを出る。食材を買った帰り道の裏路地で物音がして視線をそっちを向ける。裏路地で壁際に女の子が追いやられ、男5人に囲われている。あーやって露骨に襲ってますよなんて場面初めて見たのだが、そのまま放置するのも目覚めが悪い。曲がり角に買った食材の入った袋を置き、裏路地の中に入って行く。俺に気付いた男達がこっちを向いて叫ぶ。


「おい! 見世物じゃねーぞ! 失せろ!!」


 そんな男の一人の言葉を無視して男達に近づいて行く。そうするとリーダーぽい男が口を開く。


「キン、セイお前らあいつを片付けろ。ゾイ、ライその能力者おんな逃げないように抑えてろ。俺は報告をしておく逃がすんじゃ無いぞ」


 リーダーぽい男の命令を聞いた男2人がこっちに向かって走ってくる。先頭のキンと呼ばれていた男の雑な拳を避けて通り過ぎる時に足を引っかけて転ばせる。すぐ後ろのセイが殴ろうと振るった拳を避け、腕を首に絡め投げ地面へ叩きつける。すぐに後ろにふり返り、振るわれた拳を回転し避け、回転の力を利用し男の顔に拳を振るう。キンと呼ばれていた男は殴られ、地面に伏せる。残りの女を抑えている二人もさっきの2人と同じようにすぐ伸して、襲われていた女の子に話しかける。


「大丈夫...。じゃあ、なそうだな」


 彼女の手を見れば震えている。さすがに怖かったのだろう。あのリーダーぽい男がいつ戻って来るか分からないでここに居続けても良いことは無い。早めにここから離れた方が良いだろう。


「動けそうか。あの男が戻ってくる前にここから移動したい」


「は、はい」


 多少、声は震えてはいるが問題なく動けそうだ。彼女を連れて裏路地から出ようとすると背後から声がする。何処かに連絡しにいっていた男が戻ってきたらしい。何処かに連絡をとっていた時点で、何処かの組織の構成員か、雇われたかの2択な分けだが、多分こいつは前者だろう。


「おいおい。やられちまっているじゃねか。ヤッたのはお前で間違いねぇよな。とりあえず、死ね」


 さっきの男達に比べると振るわれた拳は鋭いが、まだ、足りない。そんな攻撃じゃ俺には傷1つ付ける事は出来ない。その拳を手で掴み受け止め、そのまま男の手を握り、男の顔面めがけて何度も拳を振るう。

 しばらく男を殴り、手を離すと男は地面に倒れた。気絶したようだ。こいつらはここに放置でいいだろうだが、問題は彼女だな。このまま一人で家に帰らせて何かあったら助けた意味が無くなる。家まで送った方が良いだろう。と考え彼女の方に振り返り、彼女をみるとやはりまだ、震えている。このまま家に一人で帰すのも酷だな。それに、鏡夜に一人で帰したって言ったらあいつに殺される気がする。


「また、いつ襲われるか分からない。家までつきそうが、大丈夫か?」


「ひゃい!」


 噛んだのが恥ずかしかったのか青かった顔が赤くなる。彼女の着ている服はうちの学校の制服か。やっぱり助けて正解だった。これで何かあった時に寝覚めが悪くなる。とりあえず裏路地を彼女と出て荷物を買い物袋を持って彼女の家に向かう。その間、何故あの男達に狙われていたか訊いたが、彼女も心当たりがないみたいだった。

 彼女は、暦 霞染かすみというらしく、俺と同じで、料理の為の食材を買いにきた所をあの男達に襲われてしまったらしい。話してわかった事だが、彼女も能力者らしい。彼女自身は、援護系に属すため暦自身の戦闘能力は低いらしい。彼女と話していたらいつのまにか家の前に着いたが、移動中に俺の探知に引っかかる事は無かった。今日は引いたのだろう。しかし、なぜ彼女を狙う? 確かに援護系の能力者は珍しいと言われるが、それでも彼女一人を捕らえるだけではおかしい。いや、彼女一人とは限られないのか。あいつらの仲間が別の所で捕まえる可能性があるからな。そもそも能力者の個人情報が漏洩している時点かなりやばいか。

 さっきの男達について思考を巡らせていると彼女が声かけてきた。


「えっと。あ、あの今日は助けてくれてありがとうございました」


「あぁ別に良い。俺はたまたま通りがかっただけだ」


「それでも、ありがとうございました。また明日学校で会いましょう」


「あ~、また会えたらな。次から気をつけろよ。最近の夜は何かと物騒だ。じゃあな」


「あっ、そうだ。連さん連絡先交換しましょう。次何かあった時に連絡できますし」


 俺が家に帰ろうとすると暦が思い出したように連絡先の交換を提案してきた。特に断る理由も無い。もし、あの男達が組織がらみだったら、このままにするのは最悪、俺が知らない所でさらわれる可能性がある。もしもの時助けられるようにしていた方が良いだろう。


「あぁ分かった」


「また明日」


「そうだな。また明日」


 暦の家から暦が襲われていた路地裏に向かって暗くなった住宅街の道を歩く。

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