第17話 俺はまた、先輩のおっぱいを見ることになった

「夏芽さん、スタイルいいよね。私も若い時はよかったんだけど」


 一旦、掃除の手を止めた橋本美玖はしもと/みく先生は、マイクロビキニを着用している夏芽先輩の方を見やっていた。


「そんなことないですよ。美玖先生も凄くいいと思いますよ。今度、私が着ているビキニを貸してあげますよ」


 夏芽雫なつめ/しずく先輩は突拍子のない発言をかます。


「いいよ。私には似合わないと思うから」


 橋本先生は恥じらいの表情を見せ、慌てながら否定的な態度をとるのだ。


「でも、美玖先生。昔は色々と挑戦していたんですよね?」

「ええ、まあ、そうね」


 挑戦とは一体、どういう意味なのだろうか?

 気になるところであり、浩紀の興奮度は内心、高まりつつあった。


「浩紀。先生って昔、グラビアをやっていたみたいよ」

「え? そうなんですか?」


 意外なことではなく、先生であれば、やっていてもおかしくない。

 先生は普通にスタイルがよく、そういう写真集を出せば、すぐに完売とかするだろう。


 春風浩紀はるかぜ/ひろきは脳内で、そういった事を妄想し始めると、興奮が収まらなくなりそうだった。


「でも、そういう話は、あまりしないでほしいかな。ちょっと、恥ずかしいし」


 美玖先生は頬を紅潮させていた。




 先生は今、ジャージ姿である。

 が、それからでもわかるほどに、胸や腰のラインがハッキリとしているのだ。


 学生時代はそこまでモテたとか、そういう経験はないと言っていたが、見る人が見れば、わかるものなのだろう。


「でも、今はそういう仕事はしていないわ。先生として、生徒の見本にならないといけないし」


 先生は誤解のないように、予めハッキリとした発言をしていた。


「まあ、そういう話より、早く掃除を終わらせましょ。今日中に、プールに水を入れて、準備しておかないとでしょ。掃除が終わったら、職員室にいる教頭先生に話をして、活動をするための正式な許可をもらわないとね」


 先生は再び真面目な表情を見せると、真剣な姿勢でブラシを持ち、掃除を再開していた。


「夏芽先輩もやってください。じゃないと、終わらないですから」

「……もう、皆真面目になって。それで、浩紀は掃除するとこはない?」

「掃除……」


 一瞬、意味が分からず、困惑した状態に陥るのが、ようやく先輩が伝えたかったことの趣旨が分かる。

 浩紀は頬が真っ赤になり、俯きがちになってしまうのだった。




「ねえ、浩紀。もっと、私の水着とか見ておかなくてもいい?」

「いいですから……それより、普通の水着に」

「いいじゃん。どうせ、水とかで汚れるんだし」

「けど……お、俺の」

「俺の?」

「い、いや、何でもないので。あと、ブラシはあっちの方にありますから。持ってこれないなら、俺が持ってきますけど」


 このままだと平常心を維持することが困難になりそうである。浩紀は今手にしているブラシを先輩に渡す。

 浩紀は彼女の方を見ることなく、ブラシが複数置かれているところまで移動するのだった。




 浩紀がプールの床に戻ってくる時には、先輩も真面目な感じに、ブラシ掃除を行っていた。

 けれど、何度見ても、露出度が高いと思ってしまう。

 目のやり場に困り、浩紀は先輩から距離の離れたところで、さっそく掃除に取り掛かる。


「ね、浩紀ー」

「な、なんですか? 今は集中させてください」


 浩紀は釣れない口調で言う。

 背後から気配を感じるが、振り向くことなく、ひたすらに掃除に打ち込んでいるのだ。


「こっち見てよ、浩紀ー」

「掃除の方が先なんで」


 相変わらず、浩紀は頑なな態度で対応する。


「二人ともふざけないようにね。ここはプールの中だし、滑りやすくなっているからね」


 遠くの場所にいる先生から忠告を受けた。




「浩紀ッ」

「ん――ッ⁉」


 再び浩紀の背に接触する大きな膨らみ。

 先輩と出会って、どれほど感じたことだろうか?


 少なくとも、数十回ほどは、その二つの膨らみを堪能していると思う。


 だ、ダメだ……。

 こんなんじゃ、よくない。


 掃除に専念しないといけないという心境になり、浩紀は先輩から急に距離を取ろうとした。


 が、それが一番いけなかったのだろう。


 浩紀は水浸しな床に足を引っ張られ、回転するように滑ってしまうのだ。


「ひ、浩紀?」


 刹那、夏芽先輩は手の差し伸べてきた。

 浩紀は、そんな彼女の手を握ることになるのだが、やはり、尻餅をつくというシチュエーションから逃れられないようだ。


 浩紀は先輩の手を掴んだまま、結果として転んでしまったのである。


「イテテテ……」


 浩紀は尻餅をつく直前に、瞼を閉じてしまった。


「ちょっと、大丈夫?」


 遠くの方から聞こえてくる美玖先生の声。


 だから、今、状況確認のために、瞼を見開いたのである。




 でも、どこか様子がおかしい。

 浩紀の視界には、白いものがあった。

 しかもそれを片手で掴んでいる。


「浩紀? もしかして、私のおっぱい見たかったの? だから、わざと滑った感じ?」


 今、夏芽先輩のマイクロビキニが外れてしまっている。

 ゆえに、彼女のおっぱいはあからさまに丸見えであった。


「でも、こういうのは、二人っきりの方がよかったかな」


 夏芽先輩は余裕を持った態度だが、逆に浩紀の方が戸惑ってしまう。


「ふ、二人とも何をしてるの⁉」


 そのエッチなシーンを先生に目撃され、少々怒られる事となった。


 それからは夕暮れになるまで、浩紀と先輩は、先生の指示に従い、真面目に掃除に取り組むことになったのである。

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