第12話 夏芽先輩、そういう声は出さないでください…
「浩紀って明日、暇でしょ? というか、土曜日とかのスケジュール空けておいた?」
「一応は空けてはいますけど」
「じゃ、問題ないね。明日、一緒に水着を選びに行こうね」
プールの掃除も大方終わり。先ほど美玖先生と面談形式で会話もしてきた。
今はすべてやるべきことを終え。
そんな中、先輩は、急激に距離を詰めてきたのだ。
普通に制服を着用しているが、おっぱいの感触は凄まじいものだった。
制服越しにでも伝わってくる、そのおっぱいの重厚感。
この前、夏芽先輩のおっぱいを直接見てしまったことがあったが、予想通りに爆乳であった。
見たというというよりも、見せられてしまったということの方が正しいだろう。
そんなことを思っていると、夏芽先輩は積極的に、その豊満なおっぱいを浩紀の右腕に押し付けてくる。その柔らかさに圧倒され、彼女の制服の中を妄想してしまう。
夏芽先輩との距離感が近づけば近づくほどに、この前見た彼女のおっぱいが脳裏をよぎるのだ。
や、やばい……鼻血が……。
プール掃除している時から、通学路を歩いている今までの間に、おっぱいを感じてばかりなのだ。
さすがに、下半身とかも限界に達し始めている。
「浩紀―、ほっぺ赤いけど、どうしたの?」
そのニヤニヤした彼女の表情、絶対にわかっている。
だから、そういった質問をしてくるのだろう。
ずるい問いかけであり、今まさに、
「浩紀って、これから暇? 掃除したんだし。疲れてるでしょ? どっかに寄っていかない?」
「寄る? どこにですか?」
「それはね、気持ちいいところよ」
「気持ちいい、ところ……⁉」
浩紀は、距離感の近い夏芽先輩の方へ視線を向けることはできず、俯きがちになってしまうのだった。
ただ、ひたすらに、くっ付いている先輩のおっぱいを感じる羽目になったのである。
二人は夕暮れ時の道を歩く。
夕暮れといえども、すでに暗く、あともう少しで夜七時を迎えるのだ。
電灯がついている夜道といっても差し支えのない時間帯。
浩紀の自宅には今日、両親は帰ってこないのである。
多少、遅れたとしても問題はない。
夏芽先輩の方も都合がよく、結果として二人で街中へと向かうことになった。
このまま水着売り場に行ってもいいのだが、先輩は別のデパートにある水着売り場に行きたいらしい。
夏芽先輩には、水着を買う時には結構な拘りがあるらしく。今は先輩と一緒に気持ちよくなる場所に行くことになったのである。
気持ちいい場所とは……。
浩紀は夜道を、先輩と近距離で歩くたびに、どぎまぎしていた。
やはり、気持ちいいとなると、どんなところなのか正直なところ気になってしょうがないのだ。
「それはここよ」
「……ここですか?」
「ええ」
夏芽先輩が案内してくれたところは、街中にあるマッサージ専門店だった。
気持ちいいとは――
確かに、マッサージ店であれば、気持ちいいという感情を抱くのには打ってつけの場所である。
だがしかし、思っていたことと全く違い、浩紀は愕然としてしまうのだった。
「浩紀―、やっぱ、エッチな方を想像してたでしょ?」
「それは、な、ないですから。でも、どうしてマッサージ店に?」
「それは体を解すためよ。さ、入って」
夏芽先輩に背を押され、そのまま入店する事となった。
店内は意外と広い。
マッサージ店といえども、人が手で直接やってくれる場所ではなく、機械がしてくれるところのようだ。
店内を見渡せば、マッサージチェアが何台も置かれていた。
ザッと見た感じ、三〇台以上はありそうだ。
「ご来店ありがとうございます」
店内の奥から、二〇代くらいの女性スタッフらしき人物が歩み寄ってくる。
その女性スタッフ曰く、スタッフから施術してもらえるプランもあるようだ。
だが、その場合、高くつくらしい。
二人はまだ高校生ということもあり、比較的安いプランで体を解すことになったのである。
二人は女性スタッフから簡単な質問を受けたのち、特定の場所へ案内されるのだった。
「これ、結構いい……んッ、き、気持ちいい……ッ、あッ、はああ……んッ」
夏芽先輩はエッチな声を出している。
その隣に今、浩紀はいるのだ。
先輩と共にマッサージチェアに座っている浩紀は、あまりの卑猥さに心臓が飛び出しそうになっていた。
「夏芽先輩……そういう声は」
「浩紀って、意識しちゃう系?」
隣に座っている先輩は、チラッと視線を向けてくる。
「そうじゃないですけど」
浩紀は反応に困り、苦笑いを浮かべることしかできなかった。
「まあ、リラックスできる場所なんだし、いいじゃない。それに、今日はそこまでお客の数も多くないみたいだし」
「そうですけど……」
浩紀はリラックスするというよりも、夏芽先輩のエッチな喘ぎのような声に反応してばかり。
けど、マッサージチェアの圧力を背中に受け、ちょうどいいところのツボを刺激され、浩紀も先輩に釣られるように変な声を出してしまったのだ。
「浩紀って、今は本当に水泳とかやってないんでしょ?」
「はい」
「水着とかも、本当に無いんだよね?」
「それは、中学の卒業と同時に燃やしたので」
「燃やしたの?」
「そうですね。嫌なことが多くて、それで供養するような感じで燃やしたんですよ」
「へえぇ、本格的にやったのね」
「……」
マッサージチェアに座り、体を解している浩紀は無言になる。
やはり、心の中では、水泳とかやりたくないという思いが強い。
しかし、いつまでも逃げてばかりでは何も変わらないのだ。
もう一度、プールの水に浸かれば、できるかもしれないという可能性にかけようと思っていた。
「けど、そんなに恨みがあったなんてね。なんか、ごめんね」
隣のマッサージチェアに座っている夏芽先輩は、申し訳なさそうな表情を見せる。
「え?」
浩紀は、先輩の急な声のトーンの変化ぶりに、先輩の方を見やったのだ。
「だって、本当は嫌なんでしょ?」
「……はい」
「私も少々強引すぎたかなって、ちょっと後悔しているところがあるけど。やっぱりね。浩紀の学校生活を見ていても、どうしても心から嬉しそうな気がしなかったの。浩紀が入学してきた頃から、それが気がかりで。どうしても輝いていた頃の浩紀に戻してあげたかったのよ」
夏芽先輩は淡々と静かな口調で言う。
先輩の気持ちも痛いほどわかる。
浩紀は一度、決めたことなのだ。
だから、水泳部を辞めるとか、そういう発言はしなかった。
ただ、過去と決別したいという思いが次第に湧き上がっている感覚の方が強かったのである。
その間に、二人のマッザージが終わり、チェアの機械音が鳴りやまったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます