第7話 先輩のおっぱいの誘惑に負けたくない…

 春風浩紀はるかぜ/ひろきは窮地に追いやられていた。


 浩紀の視界に映るのは、水着。

 だが、紺色っぽい感じのスクール系な水着である。


 特に胸のラインがハッキリとわかる感じであり、谷間まで見えてしまっているのだ。


 浩紀の心臓の鼓動が高くなり始め、どこへ視線を向ければいいのか迷ってばかりである。




 今、この空き教室には、二人しかいない。

 浩紀と、上級生の夏芽雫なつめ/しずく先輩である。


 夏芽先輩は昨日と同様に水着姿で浩紀を誘惑してくるのだ。


 この空き教室に佇む二人。

 先輩は水着姿のまま、浩紀の体に近づいている。


 こ、この距離感って、ち、近づぎるような気が……。




「ねえ、浩紀、私のおっぱいどう? もっと見せられるけど?」

「い、嫌……いいです……」

「また、そんなこと言って、見たいんでしょ?」


 夏芽先輩は積極的に来る。


 もはや、とどまることなく、積極性が高まっている感じだ。


 夏芽先輩は、ちょっとばかし、浩紀から距離を取ると、まじまじと上目遣いで見つめてきた。


 先輩の行動は止むことなく、胸元の水着をずらしながら、谷間がハッキリと見えるようにしてくる。

 さっきよりも鮮明に、胸の谷間のラインが見えるのだ。


 だ、ダメだ……おっぱいが……んッ、それじゃあ、平常心を保てなくなるって……。


 浩紀は瞼を一旦閉じ、深呼吸をする。


 何が何でも、このエロい誘いから逃れなければならないからだ。




「浩紀―、さっきから瞼閉じてない?」

「と、閉じてないです」

「本当?」

「は、はい、本当です」

「へえ、じゃあ、私の方を見つめてくれない、かな?」


 夏芽先輩のニヤニヤ笑いが聞こえてくる。


 先輩は何を仕掛けてくるのだろうか?


 でも、瞼ばかり閉じていると、逃げているような気がして嫌だった。


 それでは、先輩の誘惑に屈しているような気がするからだ。


 浩紀は強気な姿勢で瞼を見開く。


 先輩と向き合うように、立ち向かっていこうとしたのである。




 しかし、それは大きな間違いだった。

 これは夏芽先輩の罠である。


 浩紀が丁度瞼を見開いた時には、おっぱいがあった。

 先ほどまでのように、水着に隠れたおっぱいがあるとかではない。

 そのままの状態のおっぱいがあるのだ。


 スクール水着から解放された、自然体でかつ、色白いおっぱいが、浩紀の瞳に映る。


 予想外の事態に、浩紀の体の動きが止まってしまう。

 まさか、直接見せてくるとは思ってもみなかったからだ。


 夏芽先輩の罠に嵌められてしまったのである。




「せ、先輩⁉」


 浩紀は動揺して、視線をキョロキョロさせてしまう。

 見てはいけなかったものを、まじまじと視界に映してしまったことで、赤面することとなった。


「浩紀って、少しは、興味持ってくれた?」

「そ、そんなの……」

「ねッ、真面目なだけじゃよくないよ?」

「それは、そうですけど……」


 浩紀はまだ、心臓の鼓動を落ち着かせることはできなかった。


 おっぱいは直接見たことは人生で初めてであり、平常心を保てないのである。

 少々活舌が悪くなっていた。




「それでね。今ね、ここに呼び出したのは、プールに一緒についてきてほしいからなのよ」

「プール? で、でも、今は活動自体中止しているのでは?」

「そうなんだけど。来月からね、本格的に始めるから。その掃除の手伝いをしてほしいの」

「掃除? 今から?」

「そうそう。水泳部をもう一度再開するなら、掃除をすることが条件の一つなの。浩紀も入部届を書いてくれたことだし。君も普通に水泳部員だし。お願いね」

「け、けど……今日は」

「今日は何?」


 今から帰宅して、幼馴染の夢の家に行き、久しぶりにゲームをする事。

 それを楽しみにしていた。

 確かに昨日、入部届を書いたのは事実ではあるが、今日から部活をするとは思ってもみなかったのである。


 ようやく、夢との距離感を掴めてきた頃合い。

 このチャンスを無駄にしたくはなかった。


「俺、ちょっと、用事があるので」

「用事? 浩紀、入部届を書いたよね?」

「書きましたけど」

「私のおっぱいを見たよね?」

「そ、それは……先輩が」

「でも、見たじゃん」

「はい……」

「私、浩紀のことが心配なの」

「心配? どういう意味でですか?」

「それはね、真面目過ぎるからよ」

「真面目でもいいじゃないですか」

「でも、素の自分を出せてない感じがするのよね」

「俺は……というか、そこまで先輩に気にしてもらわなくても、大丈夫なので。それと、今日だけはどうしても無理なので。帰らせてもらってもいいですかね?」


 浩紀は真剣に言う。


 多少は恥ずかしさを堪え、頬を紅潮させている。


「そんなに重要な急ぎなの?」

「はい……」

「へえぇ、そう。私のおっぱいを見て? そんなこと言うの?」

「そ、それは、申し訳ないと思ってますけど」

「じゃあ、責任を取って。お願い」

「いや、でも、今日は……で、でしたら、明日からでしたら」

「明日? いいの? 明日だったら参加できる?」

「は、はい……」


 浩紀は真剣に頷いた。


 明日の予定はまだ決めていないのである。

 多分、明日ぐらいなら、プールの掃除を含めて水泳部員として参加できるだろう。




「んん、しょうがないか。まあ、いいけど、私もごめんね、いきなりすぎて」

「いいえ、わかってくれたなら、それでいいです」

「じゃ、明日ね。絶対だからね」

「はい。わかりました」


 浩紀は何とか、先輩との約束をし終えることに成功したのである。


 これで、夏芽先輩は納得してくれたのだろうか?

 定かではないが、一応、先輩から解放された感じである。




「じゃ、浩紀、スマホ貸して」

「な、なんでですか?」

「それは、連絡を取るためよ」

「連絡?」

「いいから」

「ちょっと、先輩⁉」

「これね、浩紀のね」


 夏芽先輩は、浩紀の制服のポケットからスマホを取り出すと、勝手に弄り始める。


「か、勝手には」

「大丈夫。これから、一緒に活動していくんだから連絡は大事だよ?」

「そうですけど」

「……」


 刹那、夏芽先輩の反応が大人しくなった。

 ちょっとばかし、険しい表情を見せ始めると、食い気味に浩紀のスマホ画面を見やったていたのだ。


「どうしたんですか?」

「んん、なんでもないよ。ちょっとね。でも、私のアドレス入れておいたから。これで、一緒に活動できるから。よろしくね」

「は、はい……」


 夏芽先輩からスマホを返してもらった。


 浩紀は一応、スマホ内を確認する。

 が、そこまで変なことはされてはいなかった。


 問題はなかったと、ホッと胸を撫でおろす。


「じゃ、明日ってことで。それと、本格的に水泳の練習をするのは来週からだから、今週の休日に水着を買いに行かない?」

「み、水着?」

「うん、そうだよ。私のいっぱい見せられると思うよ♡」


 爆乳な夏芽先輩から、エッチな誘いを受けてしまう。

 けど、夢の方も大事である。


 ここは、冷静に。

 落ち着いて対応すれば何とかなるだろう。


 そう思っていると、急に、再び先輩は抱き付いてくるのだ。


 水着からでもわかるほどの夏芽先輩のおっぱいを感じなら、心臓の鼓動が高まっていることを意識し始める事となった。


 本当は嫌である。

 夏芽先輩よりも夢の方が好きであり、こんなところで先輩の誘惑に負けてしまったら意味がない。


 浩紀はひたすら、おっぱいのぬくもりから意識を逸らそうと必死になっていたのだ。


 でも、そんなのは難しい。


 夏芽先輩は爆乳な持ち主であり、美少女らしい花のいい香りが漂ってくるのである。


 浩紀はその誘惑に押し負け始めていたのだった。

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