第4話 帰り道(美麗side)

恋をしたのは初めてだった

最初はただの気が合うだけの友達だった水瀬君

でも今は違う。私の大好きな人。大切な人になった


6時間目が終わり部活に行こうとする水瀬君に声を掛ける

「水瀬君!」

「どした?」

水瀬君を好きになってから、変わったことがある

それは話しかけたり目を合わせるだけでも緊張しちゃうこと

「今日一緒に帰りたいんだけどだめ?」

それでも好きな人とできるだけ一緒に居たいと思うのは普通のことじゃないだろうか

それに最近、水瀬君は同じサッカー部の子たちとずっと話してて私とはあんまり話してくれてなかったから。ちょっと寂しかった。だからたまにはこんなお願いしてみても大丈夫だよね

「俺今日部活あるから帰り遅くなるよ?」

「私も今日部活あるからそれは平気!」

「りょーかい!それじゃあ部活終わったら校門で集合ってことで」

「分かった!」


放課後家庭科部の時間

お菓子のレシピ本を眺めていると

「みーれいっ!あれ?お菓子作るの?」

そう後ろから話しかけてきたのは紗香

「うん。今日水瀬君と一緒に帰るからなんか渡せたらいいなって」

「へー何作るか決まった?」

「クッキー作ろっかな」

「いいじゃん!部活終わりでも食べやすいし」


それから生地をオーブンで焼いている間席についていると紗香が

「そういえば最近美緒前と比べて元気になったよね」

「そうかな?」

「そうだよー!前より笑顔が増えたっていうか!てか話変わるんだけど、もしかして水瀬となんかあった?」

「えっ。なんもないし!」

この前のことはまだ誰にも話していない。多分水瀬君も誰かに言ったりしてないはずだから私と水瀬君だけの秘密になっている。だから紗香にもこのことは話したくない

「休み時間水瀬の方チラチラ見てるのは?」

えっ!ばれてた?

恥かしさで頬が熱くなってきた

「き、気のせいじゃない?」

「ふーん。じゃあなんで今日は水瀬と一緒に帰る約束したの?」

「それはたまたま帰る時間が同じだったから」

それから紗香は考え込むようにしながら

「もしかして二人って付き合ってる?」

「付き合ってないし!!」

つい大声で言ってしまった

そのせいでほかの部員から好奇の目線を送られる

「ごめんごめん。じゃあほんとになんもないんだ」

「……うん」


            晴side

今日は木花に一緒に帰ろうと誘われていた

だから部活が終わった後。樹には悪いが伝えておかなければいけない

「樹ー!悪いんだけど今日一緒に帰れないわ」

「はっ!もしかして浮気!?俺を差し置いて誰と帰るつもりだよ!」

「じゃ待たせてるから。明日はがんばろうな」

そう言って俺は樹の言葉を無視して校門へ向かう

校門に着くと綺麗な白髪をなびかせた少女がこっちにむかって手を振っていた

「部活お疲れ様ー!」

「木花もお疲れ!」

そうして俺たちは駅に向かって歩きだした

歩きだして少しすると

木花は鞄から可愛くラッピングされた袋を取り出すと

「……よかったらこれ水瀬君にあげる」

「クッキー?」

貰った袋を見てみるとそこにはハートやクマなどの形をしたクッキーが入っていた

「うん。部活で作ったの」

「嬉しいありがとう」

あの木花が俺のために作ってくれたんだと思うと素直に嬉しかった

「食べてみてもいい?」

「食べてたべて!」

クッキーを一枚口に運ぶ

「んん!美味っ!」

甘すぎずサクサクしててお手本のようなクッキーだった。普通にお店に並んでてもおかしくないぐらい

「ほ、本当?嬉しいな」

頬を少し赤くしながら笑顔で喜んでる姿を見て、やっぱりかわいいなあと思う

見てるだけで癒される

「じゃあまた今度作ってあげるね!」

「まじ!?楽しみにしてる」

「うん。だからまた今日みたいに一緒に帰ってくれると嬉しいな」

「こんな美味しいお菓子ももらえて木花と一緒に帰れるならもちろん」

「そっか~えへへ」

今日の木花はなんだか表情が緩み切ってる気がする

まあこっちとしてはそっちのほうが眼福なんだけど

「そういえば明日は水瀬君の試合だったね。楽しみだなー」

「俺はすごい緊張してるけど」

「かっこいい姿期待してるよ?」

「プレッシャーかけないで!?」

でもまあ木花たちの前でかっこ悪い姿を見せるわけにはいかない

「でも頑張るよ」

「うん。明日はいっぱい応援するからね!」

「ありがとう」

そんな風に話しているといつの間にか駅についていた

「水瀬君と話してたらあっという間だったね」

「俺もそう思った」

もうちょっと話したかったな

でも電車は待ってくれないから

「じゃあまた明日」

「うん。また明日」

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