第795話、猛攻の日米航空隊
その日、ムンドゥス帝国前衛艦隊・第三群ならびにパニスヒロス大将指揮する主力艦隊に対して、日米艦隊の空母より発艦した航空隊が連続攻撃がかけられた。
まず先陣を切ったのは、意外なことに、第十五航空戦隊の偵察攻撃隊の彩雲改二だった。
日本海軍哨戒空母戦隊は、海域広範囲に偵察機を放っており、敵艦隊の位置、戦力について、地球側各艦隊に通報を行っていた。
そんな偵察攻撃隊だが、第一機動艦隊司令部からの要請を受けて、敵艦隊に接触している彩雲は、その中で、空中哨戒に上がろうとしている戦闘機を準備しているリトス級大型空母の一隻に、誘導弾四発を撃ち込んだ。
たちまち標的とされたリトス級の飛行甲板を貫き爆発した誘導弾により、格納庫が炎に包まれ、日米艦隊との交戦に備えて準備していた機体が次々に誘爆、炎上した。
この時の、ムンドゥス帝国艦隊の編成は――
●前衛艦隊・第三群:司令長官:ラドラン・マラガ中将
戦艦:オリクトⅡ級×20
空母:リトス級(大型)×5、アルクトス級(中型)×5
重巡洋艦:プラクスⅡ級×10、プラクスⅠ級×10
軽巡洋艦:メテオーラⅢ級×5 メテオーラ級Ⅱ級×10
:アムシル級(防空巡)×5
駆逐艦:エリヤ級×30 カリュオン級×30
その他:揚陸艦×50 輸送艦×30
:ルベル・クルーザー×40 ルベル・キャリアー×10
●主力艦隊:司令長官:パーン・パニスヒロス大将
戦艦:キーリア級超戦艦×1 オリクトⅡ級×20
空母:リトス級(大型)×10
重巡洋艦:プラクスⅡ級×20
軽巡洋艦:メテオーラⅢ級×35 アムシル級(防空巡)×15
:メラン級(潜水巡)×10
駆逐艦:カリュオン級×60 ロアー級(潜水駆逐)×20
これら主力の後方200海里に、輸送船200隻と護衛駆逐艦部隊、さらにイギリス鹵獲艦隊、南米艦隊といった地球側鹵獲兵器の中規模艦隊がついているが、これらは自分たちの防衛を優先とされており、主力の戦いに介入する可能性はほとんどなかった。
なお第三群と主力艦隊の間は15海里ほど離れ、前に第三群、後ろを主力艦隊がついていた。
閑話休題。
最初に攻撃を受けたのは、主力艦隊に所属する空母であった。
パニスヒロス大将は、日本軍の奇襲攻撃隊による攻撃を警戒し、全空母にシールドを展開させ守りを固めた。
が、攻撃は単機であり、これは第一戦闘軍団司令部を困惑させた。
「まだ他にも攻撃隊が潜んでいるはずです」
航空参謀は、パニスヒロスに進言した。
「こちらが艦載機を展開しようとしているタイミングを待って、攻撃しようとしているのでしょう」
地球征服軍の戦闘レポートからして、日本軍の遮蔽航空隊は、集団で一挙に攻めてくる傾向がある。故に、艦隊上空をすでに敵が周回している可能性が高い。
これを受けて、パニスヒロスは、前衛・第三群から、ルベル・キャリアーを5隻、主力に回すよう命じた。リトス級大型空母の艦載機展開の隙を、ルベル・キャリアーの射出型無人機でカバーするつもりだった。
そうこうしている間に、ついに敵性航空隊を対空レーダーが捕捉した。
『航空機およそ250機、南西方向より接近』
その針路上にあるのは、前衛・第三群。指揮官であるラドラン・マラガ中将は、ただちに直掩戦闘機を迎撃に出す。
主力より、敵遮蔽機が、空母を1隻戦闘不能に追いやったという連絡があったため、同様の奇襲攻撃を警戒して、すでに上空に上げていた戦闘機隊は、そのまま空母の上空を張り付く。
その間に、さらに10隻の空母から追加のヴォンヴィクス、エントマ戦闘機を展開させる。ただし、1隻ずつ順番に上げたため、出撃までの若干のもたつきが発生した。
即応の120機の戦闘機が、南西方向――日本軍攻撃隊への迎撃に向かう。続いて空母は、次の戦闘機の準備にかかる。
が、ここで、対空レーダーが、北方より飛行する航空隊をキャッチした。
『アメリカ軍の攻撃隊、計三群接近。各群およそ100機!』
「対空戦用意! 上陸部隊の直掩のルベル・キャリアーから無人機を射出させろ!」
マラガは指示を出したが、キャリアーの半分を、主力にひき抜かれたのを思い出し、苦い顔になった。
射出発進をしたスクリキ無人戦闘機、約120機は、ただちに艦隊防空に移った。その間にも南北から、敵が迫っている。
最初にぶつかったのは、日本軍である。烈風戦闘機
同数の烈風に、異世界帝国戦闘機隊は抑え込まれ、残る機が艦隊に迫る。
この時、主力艦隊からも第三群に向けて、航空機の増援が送られた。日本軍の奇襲攻撃隊を警戒し、ルベル・キャリアーが到着してから戦闘機隊を展開しようとしていたパニスヒロスだったが、リスクを冒しても第三群の援護が必要と判断したのだ。
空母3隻から70機のヴォンヴィクス戦闘機が発艦し、第三群の直掩に参加した。
だが殺到する日米航空隊を前にしては、些か数が不足していた。
烈風、F6Fが異世界帝国戦闘機を引きつけ、交戦している間に、米軍のSB2Cヘルダイバー艦爆、TBFアベンジャー雷撃機が、第三群に攻撃を開始した。
大型ロケット弾による攻撃は、揚陸艦部隊とその護衛の駆逐艦に襲いかかる。巡洋艦やルベル・クルーザーも対空戦闘に参加し、米攻撃機を撃墜するが、それよりも狙われた揚陸艦の被害が大きかった。
米軍機は木をつつくキツツキの如く、前の隊が攻撃した所へ集中した。結果、手薄になった対空陣形の隙間にロケット弾を通して、揚陸艦、輸送艦へ次々に命中、撃破していった。
北から第四波――義勇軍航空隊200機が迫る頃、南から日本軍第一機動艦隊の第二次攻撃隊350機が襲来。
異世界帝国側は、戦闘機を食い荒らされ、これらを迎撃できる機は少なかった。特に日本軍の第一次攻撃隊が、戦闘機オンリーのファイタースイープだったことも大きかった。
第三群の上陸船団と、おそらく空母も全滅するだろう――パニスヒロスと第一戦闘軍団司令部は、そう判断した。日米の攻撃が第三群に集中しているとみて、残る空母からさらなる戦闘機隊の増援を送り出す。
しかし、それを待っていた第二機動艦隊の奇襲攻撃隊が、遮蔽を解いて主力艦隊に攻撃を開始した。
飛行甲板から、先頭から数機の戦闘機が上がったところへ、流星艦攻の1000キロ対艦誘導弾が、リトス級大型空母9隻に集中。発艦間近な機を巻き込み、あっという間に巨大空母を火だるまに変えた。
『敵襲!』
予想された日本の奇襲攻撃隊。しかし各護衛艦の対空レーダーは、発艦を始めた友軍戦闘機に敵機が混じったことで識別をより混乱させた。IFF――敵味方識別はできるのだが、敵味方が入り乱れた結果、標的選別を人の目視に頼らざるを得ない状況となったのだ。
その防空の隙をついて、紫電改二が、巡洋艦や駆逐艦、果ては戦艦に対してロケット弾を撃ち込んだ。
目視による機関砲の対空射撃が精々の中、叩き込まれたロケット弾により、駆逐艦は大破炎上、重巡や戦艦は、艦橋やマストのレーダーや通信装置を破壊される。
二機艦の奇襲により、主力艦隊の空母群は全滅。他の艦艇も少なくない被害が出た。
そして直掩の支援を受けられなかった第三群も、日米航空隊の猛攻により、空母と揚陸艦すべてを喪失するのであった。
ムンドゥス帝国艦隊は、航空機の傘を失ったのである。
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