第764話、トルネード作戦


 義勇軍艦隊司令部の作戦では、オアフ島の南東方向より、潜水艦部隊が侵入。敵の警戒部隊の一角を崩したところを、航空隊が低空にて突入。ホノルル付近海上に停泊している異世界帝国艦隊を爆撃し、撃滅する。


 義勇軍艦隊の空母は6隻、義勇軍支援部隊は装甲空母3隻の計9隻。しかし義勇軍艦隊の空母のうち4隻は艦載機30機程度の軽空母。支援部隊の装甲空母も艦載機各48機と、艦体の大きさの割に少ない。

 ただ空母が9隻も揃えば、計414機と、それなりになる。もちろん、全てが攻撃機ではなく、戦闘機も偵察機もある。

 もっとも、爆撃機としても使えるF4Uコルセア、魚雷搭載が可能なF6Fヘルキャットと、対艦装備で出撃させることはできた。


 とはいえ、艦隊防空に直掩の戦闘機も残すから、全てを攻撃隊に振り向けることはできない。


 そこでT艦隊の空母航空隊に助っ人を頼みたい、というのが義勇軍艦隊からの要請であった。

 空母は5隻と、臨時に組み込まれている哨戒空母が3隻の8隻。しかし『雲龍』を除けば、ほぼ軽空母なので、搭載数という点では、およそ250機ほどの追加となる。


 が、転移中継によって基地航空隊である第三航空艦隊が使えるから、その攻撃力は一気に倍化する。

 T艦隊参謀長の神明は、義勇軍艦隊のロジャー・ミッチェル大佐、支援部隊の樋端大佐と攻撃の方法と手順の確認を行xちた。


 三者の打ち合わせはスムーズに進んだ。義勇軍艦隊のミッチェルは、そもそも幽霊艦隊に参加していた将校であり、神明とは交流があった。故に、互いに魔技研や幽霊艦隊での技術や戦術に通じていて、話が早く進んだのだ。


「少し、火力が足りない」


 神明の発言に、ミッチェルは片方の眉を吊り上げた。


「足りませんか、やはり」

「こちらの航空機は、戦爆が多いからな」

「損傷に追い込めても沈められるまではいかない、と」


 樋端が言い、神明は頷いた。


「T艦隊も空襲の後は、艦隊突撃の二段構えでやっているからな。敵を徹底的に痛打するなら、今回もそれが必要だろう」

「そうですね」


 細部に修正を加えるが、作戦自体は、すでにほほ形となっていた。それぞれの艦隊に変更点を伝え、準備を整えれば、後は作戦海域に転移するだけとなっていた。

 かくて、三つの艦隊による、オアフ島攻撃作戦は実行に移された。


 作戦名は、トルネード作戦。

 そしてその参加部隊は以下の通り。



●義勇軍艦隊:司令長官、ウィリアム・F・ハルゼー中将

      参謀長、ロジャー・ミッチェル大佐


戦艦:「サウスダコタ」「ワシントン」「ノースダコタ」

空母:「エンタープライズⅢ」「サラトガ」

軽空母:「インディペンデンス」「プリンストン」「ベローウッド」「モントレー」

大型巡洋艦:「ユタ」

重巡洋艦:「グッドホープ」「モンマス」「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」

軽巡洋艦:「ガンビア」「ドレスデン」

防空艦:「ニュルンベルク」「ライプツィヒ」「ボルチモア」


駆逐艦:「バックレイ」「パターソン」「ラルフ・タルボット」「ブルー」

   :「ジャービス」「モンセン」「ブキャナン」「マッカラ」「ラフィー」

   :「ファーレンホルト」「ソーントン」「シカード」「プルイット」「ゼイン」


潜水艦:「アルゴノート」「ノーチラス」「ドルフィン」「カシャロット」

   :「ポーパス」「プランジャー」「ガジョン」

   :「U-81」「U-83」「U-84」「U-85」「U-87」

   :「U-88」「U-89」「U-92」

支援艦:「ヴェスタル」、「ネレウス」

補給艦:リバティ級4隻



●義勇軍支援部隊:司令長官、新堂 儀一中将

         参謀長、樋端 久利雄大佐


第十二航空戦隊  :(装甲空母):「黒龍」「鎧龍」「嵐龍」

第五十巡洋艦戦隊 :(重巡洋艦):「栗駒」「高隈」「空木」「羅臼」

第六十六巡洋艦戦隊:(軽巡洋艦):「飛鳥」「生田」「天満」「千種」

第六十七巡洋艦戦隊:(軽巡洋艦):「興津」「国場」


 第二十二駆逐隊:「皐月Ⅱ」「水無月Ⅱ」「文月Ⅱ」「長月Ⅱ」

 第四十六駆逐隊:「蔦」「萩」「菫」「桜」

 第四十七駆逐隊:「柳」「椿」「檜」「楠」



●T艦隊:司令長官:栗田 健男中将

     参謀長:神明 龍造少将


第十五戦隊:(航空戦艦):「浅間」「八雲」

第十九航空戦隊:(空母):「雲龍」「翔竜」「雷鷹」

第十六航空戦隊:(空母):「神鷹」「角鷹」

※第十五航空戦隊:(哨戒空母)「龍飛」「大間」「潮瀬」(臨時編成)

第五巡洋艦戦隊:(大型巡洋艦):「石動」「国見」

第六巡洋艦戦隊:(大型巡洋艦):「筑波」「生駒」

第五十一巡洋艦戦隊:(重巡洋艦):「愛鷹」「大笠」「紫尾」

第二十九巡洋艦戦隊:(軽巡洋艦):「奥入瀬」「十津」


付属:(巡洋戦艦):「武尊」


第十二水雷戦隊:(軽巡洋艦):「水無瀨」

 第二十四駆逐隊:「氷雨」「早雨」「白雨」「霧雨」

 第二十六駆逐隊:「朝露」「夜露」「雨露」「露霜」

 第三十三駆逐隊:「細雪」「氷雪」「早雪」

特設補給艦:「千早」「辺戸」「波戸」

防空補給艦:「新洋丸」「天風丸」



 他、T艦隊には第十七潜水戦隊と、封鎖戦隊四個があるが、こちらはサンディエゴから撤退する敵艦隊攻撃を実施中のため、トルネード作戦に加わらない。


 かくて戦艦・航空戦艦、巡洋戦艦6、空母6、軽空母11、大型巡洋艦5、重巡洋艦11、軽巡洋艦11、防空巡洋艦3、駆逐艦37、潜水艦15、支援艦艇11、計116隻は、ハワイ諸島へ転移ゲートもしくは転移中継装置を使って移動した。


 作戦打ち合わせから半日、夜の間に作戦海域を進む三つの艦隊。すでに潜水艦部隊が敵警戒網の穴を開けるべく先行している。

 間もなく、夜が明ける。義勇軍艦隊の各空母の飛行甲板には、轟々たるエンジン音を響かせ、F4Uコルセア、F6Fヘルキャット、Ju87シュトゥーカD-2改が並んでいる。

 旗艦『エンタープライズⅢ』で、ハルゼーは声を張り上げた。


「GO! 攻撃隊、発艦だ! 異世界人どもを海の底に沈めてやれ!」


 F4Uが先陣を切って、飛行甲板を滑り出した。『サラトガ』ほか、インディペンデンス級軽空母からも航空隊が飛び上がる。

 今頃、日本の空母からも攻撃隊が発艦を行っているはずだ。


「まさか、かつて過ごしたパールハーバーを攻撃しに戻ってくることになるとはな。皮肉なもんだ」


 ハルゼーは独りごちた。それも日本海軍と共に。本当に皮肉なことだ。

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