第604話、カリブ海潜水艦掃討作戦


 カリブ海にすでに敵潜水艦隊が入り込んでいる。

 日本海軍は、急遽立案した敵潜水艦隊掃討作戦――そ号作戦を実行に移すべく動き出した。


 敵潜水艦の新兵器対策がない第六艦隊は、内地に戻るのを取りやめ、そ号作戦に投入される。

 さらに第六艦隊が抜けた穴を埋める予定で編成された第十二水雷戦隊が、そのままカリブ海へ転移で移動、古賀大将の南米派遣艦隊に合流した。


 第十二水雷戦隊を構成する初桜型潜水駆逐艦は、異世界帝国のロアー級潜水駆逐艦の鹵獲改修した艦である。

 第九水雷戦隊ですでに運用されていたが、潜水艦のような通商破壊の他、護衛、敵潜水艦退治にも汎用的に使える。


 これらの新造の8隻を加え、計16隻が、古賀艦隊の加わった。初桜型は駆逐艦でもあるため、純粋な潜水艦と違い、防御障壁を搭載しているのも、今回の敵潜掃討の面でも多少の無理ができる。


 異世界帝国の新兵器については、魔技研が解析中ではあるものの、現状可能な対策が各指揮官、艦長に通達された。

 それを問題なく実行できる限り、やられることはないと力強く言われたため、新兵器に対する不安は、ある程度解消されている。


 かくて、幾分か余裕はないものの、敵潜水艦隊の迎撃からの掃討作戦、そ号作戦は開始された。



●南米派遣艦隊:古賀 峯一大将


○カリブ海・大西洋警備艦隊


 総旗艦:(航空戦艦):「出雲」

 第五戦隊  :(戦艦):「相模」「越後」

 第五十三戦隊:(戦艦):「安芸」


 第六航空戦隊:(空母):「瑞鷹」「海鷹」「黒鷹」「紅鷹」

 第三十一航空戦隊:(海氷空母):「海豹4」「海豹5」「海豹6」

 第三十三航空戦隊:(特海氷空母):「雲海」


 第十五戦隊 :(重巡洋艦):「妙高」「那智」「足柄」「羽黒」

 第十八戦隊 :(重巡洋艦):「二上」「斑尾」「農鳥」「笠取」

 第六十二戦隊:(転移巡洋艦):「宮古」「釣島」


・第二防空戦隊:「能代」

  第六十四駆逐隊:「清月」「大月」「葉月」

  第六十五駆逐隊:「浦月」「紅雲」「八重雲」

  第六十七駆逐隊:「雪月」「沖月」「風月」「青月」

  第六十八駆逐隊:「天月」「海月」「白月」「浜月」


・第五水雷戦隊・分遣隊

  第二十二駆逐隊:「皐月Ⅱ」「水無月Ⅱ」「文月Ⅱ」「長月Ⅱ」

  第三十二駆逐隊:「如月Ⅱ」「弥生Ⅱ」「朝凪Ⅱ」


・第十二水雷戦隊:

  第八十七駆逐隊:「柏」「黄菊」「初菊」「茜」

  第八十八駆逐隊:「白菊」「千草」「若草」「夏草」

  第八十九駆逐隊:「薄」「野菊」「蓼」「蓮」

  第九十駆逐隊 :「桔梗」「百合」「菖蒲」「海棠」



○潜水艦隊

 第六艦隊:司令長官、三輪 茂義中将


 旗艦:大型巡洋艦:「塩見」

 付属:「伊400」「香取」

 特設潜水母艦:「にくら丸」「ほくろ丸」


 ・第二潜水戦隊:「伊201」「伊202」「伊203」

        :「伊204」「伊205」「伊206」

 ・第三潜水戦隊:「伊52」「伊53」「伊55」「伊54」「伊56」「伊58」

 ・第四潜水戦隊:「伊40」「伊41」「伊42」「伊43」「伊44」「伊45」


 ・第十七潜水戦隊:補給・潜水母艦:「ばーじにあ丸」「あいおわ丸」「迅鯨」

  ・第七十潜水隊 :「伊600」「伊611」「伊612」

  ・第七十一潜水隊:「伊607」「伊608」「伊613」

  ・第七十二潜水隊:「伊609」「伊610」「伊614」


 ・第二十一潜水戦隊:「伊15」「伊23」「伊25」

          :「伊30」「伊31」「伊18」

          :「伊20」「伊22」「伊24」



 カリブ海・大西洋警備艦隊旗艦『出雲』。古賀 峯一大将が率いるは、敵を釣り出す前衛艦隊。

 空母とその護衛を抜いた分、戦艦4、重巡洋艦4、転移巡洋艦1、海氷空母3、駆逐艦6が、カリブ海中央から東へと向かっている。


「偵察機の報告を総合しますと、この海域に敵潜水艦隊が到達している頃だと思われます」


 高田 利種首席参謀が言えば、古賀は首肯した。

 独、英、米――地球製の潜水艦は、潜水時に用いるバッテリーの充電のため、平時は海上を航行している。もちろん、航空機が現れれば即潜航して隠れるわけだが、そういう目撃情報は、数が多いほど積もっていくものだ。結果、日米現地部隊にもある程度、敵の動きを予測させることができた。


「敵が発見するのが先か、こちらが先に発見するか」


 速度を出せば、その分、遠くからでも音が拾える。艦隊の行進とあれば、潜水艦は集まってくるだろう。

 日本海軍は、音ではなく魔力の反射で水中の敵を発見するマ式ソナーを用いている。故に高速航行していても自艦が出す騒音関係なく、潜水艦を捜索できる。


「敵には、食いついてもらわねばなりませんな」


 原 鼎三ていぞう参謀長は真面目な調子で言った。


「敵には、絶好の獲物と思ってもらわねば」

「本来、潜水艦は隠密を活かして活動するものだ。しかし、大集団で運用することで、攻撃力を獲得した一方、潜伏という利点を半ば放棄しているとも言える」


 古賀は言葉にした。


「これは言わば、互いの艦隊を沈めんとする艦隊決戦そのものだ」

「皮肉ですな」


 原は苦笑した。そしてその時はきた。


「索敵機より報告! 敵潜水艦複数が、艦隊針路上に集結しつつあり!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・初桜型潜水駆逐艦『初桜』

基準排水量:1800トン

全長:105メートル

全幅:10.2メートル

出力:5万馬力

速力:35ノット(水中:19ノット)

兵装:12.7センチ単装自動砲×3 艦首魚雷発射管×4 

   61センチ四連装魚雷発射管×1 対潜短魚雷投下機×1

航空兵装:なし

姉妹艦:椎、榎、雄竹、初梅、八重桜、矢竹、葛、桂、若桜、梓、栃、菱、榊、早梅、飛梅、藤、山桜、葦、篠竹、よもぎ、葵、白梅、菊、柏、黄菊、初菊、茜、白菊、千草、若草、夏草、秋草、すすき、野菊、蓼たで、蓮、桔梗、百合、菖蒲、

海棠かいどう杜若かきつばた躑躅つつじ

その他:潜水機能を持つ異世界帝国の駆逐艦。撃沈したものを鹵獲、日本海軍の艤装で改修された。


・雪月型駆逐艦:『雪月』

基準排水量:2900トン

全長:137.5メートル

全幅:12.67メートル

出力:8万馬力

速力:38ノット

兵装:55口径12.7センチ連装両用砲×4 61センチ四連装魚雷発射管×2 

   対艦誘導弾連装発射管×2 25ミリ三連装機銃×6

   対潜短魚雷投下機×2

航空兵装:――

姉妹艦:「沖月」「風月」「青月」「天月」「海月」「白月」「浜月」

その他:回収、鹵獲したフランス海軍の大型駆逐艦モガドール級とル・ファンタスタ級を改装したもの。超秋月型ともいうべき性能を持つ。

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