第351話、第七艦隊、集結す
セイロン島には日本海軍、第七艦隊が展開していた。
潜水型水上艦艇運用では、おそらく日本海軍で随一の経験者である武本 権三郎元中将が指揮する。
この艦隊は、インド洋のベンガル湾からスマトラ島、マレー半島を含める東側の制海権を確保し、異世界帝国の輸送船などが行き交うアラビア海への通商破壊活動を行っていた。
その戦力は、昨年のセイロン島攻略後よりも増強されている。
○第七艦隊:指揮官:武本権三郎中将
第五十一戦隊:(戦艦3):「扶桑」「山城」「隠岐」
第十一航空戦隊:(空母3):「白龍」「赤龍」「翠龍」
第十三航空戦隊:(空母3):「幡龍」「水龍」「真鶴」
第九戦隊:(大型巡洋艦4):「黒姫」「荒海」「八海」「摩周」
第三十戦隊(特殊巡洋艦2):「初瀬」「八島」
第三十三戦隊(重巡1・軽巡2):「那岐」「滝波」「佐波」
第六十五戦隊(転移巡洋艦2):「来島」「根室」
第七十五戦隊(敷設艦2):「津軽」「沖島」
第九水雷戦隊:特殊巡洋艦:「九頭竜」
・第八十一駆逐隊:「初桜」「椎」「榎」「雄竹」
・第八十二駆逐隊:「初梅」「八重桜」「矢竹」「葛」
・第八十三駆逐隊:「桂」「若桜」「梓」「栃」
・第八十四駆逐隊:「菱」「榊」「早梅」「飛梅」
・第八十五駆逐隊:「藤」「山桜」「葦」「篠竹」
・第八十六駆逐隊:「蓬」「葵」「白梅」「菊」
第十三潜水戦隊(特設潜水母艦3):いくら丸、ろくろ丸、はくろ丸
第六十潜水隊:呂500、呂501、呂502、呂503、呂504、
呂505、呂506、呂507、呂508
第六十一潜水隊:呂509、呂510、呂511、呂512、呂513、
呂514、呂515、呂516、呂517
第六十二潜水隊:呂518、呂519、呂520、呂521、呂522、
呂523、呂524、呂525、呂526
戦艦は2隻から1隻が増加し3隻に。ビスマルク級戦艦『ビスマルク』を改修し、名前を『隠岐』と改めて、第七艦隊に加わった。
元が38センチ連装砲だった主砲は、日本海軍戦艦のベーシック装備となっている45口径41センチ連装砲に換装。機関もマ式に変更し、潜水行動が可能だ。
空母は瑞龍型潜水型空母3隻に加え、元英軍空母改装の3隻が新たに編成された。
通商破壊空母こと、哨戒空母の予定だった『イーグル』は、その船体容量に対し、別用途で潰された部分を格納庫として使用。その構成を変更することで瑞龍型には及ばないものの、艦載機搭載数が倍増可能だったため、哨戒空母ではなく、通常の潜水型空母へと改装された。その艦載機は24機から、2.5倍の60機と、初期の頃の空母にありがちな無駄を省いて適正化が図られた。
かくて、同じく艦首を見直し格納庫を増やした空母『グローリアス』と共に、潜水型空母戦隊の一角を担う。
『イーグル』が『
軽空母『ハーミーズ』は、予定通り哨戒空母に改装。中身も空母として現代のそれにアップデートされた。哨戒空母なので、命名は岬の名前で、『
他、追加艦は、セイロン島を巡る戦いで、敵東洋艦隊が使用していた欧州艦隊の改修艦艇が主となる。
ポケット戦艦、『アドミラル・グラフ・シュペー』は潜水型大型巡洋艦として『摩周』に。
重巡洋艦『ブリュッヒャー』は、改高雄型に近い性能に改装し、『那岐』。
軽巡洋艦『ペネロピ』『オーロラ』が、『滝波』『
だが何より多いのは、敵東洋艦隊を撃滅する前後で、撃沈しまくった潜水艦――Uボートの改修艦である呂500番台の中型潜水艦だ。
トリンコマリー攻略の段階で沈めた輸送艦を改装した特設潜水母艦3隻『いくら丸』『ろくろ丸』『はくろ丸』の支援を受けて活動する、自動潜水艦3個潜水隊27隻が第七艦隊に編入された。
これらは第九水雷戦隊の潜水型駆逐艦と共に、アラビア海の異世界帝国の通商路に進出し、敵船ならびに護衛艦を撃沈しまわっていた。
・ ・ ・
第七艦隊旗艦『扶桑』。武本中将は、来航する異世界帝国大西洋艦隊に対して、如何なる攻撃プランが考えられるか、参謀たちと検討していた。
「まあ、通せんぼしていいなら、敵がスエズ運河で制限されているところを叩くのが楽だわな」
地中海と紅海を繋ぐ、人工水路。スエズ運河会社の建設で1869年に開通したここは、北大西洋と北インド洋を結ぶ水路であり、アフリカ大陸まで回らずともアジアと欧州を繋ぐ海運の要衝である。
現在は、当然の如く、異世界帝国の勢力圏にある。
「しかし、長官。スエズ運河は遠いですよ」
第七艦隊参謀長の阿畑 洋吉少将が、皮肉げに言った。
「アラビア海からはもちろん、紅海に侵入するにしても、こちらも袋のねずみになります」
「わーっとる。いくらわしらの艦隊が潜水機能をもっとるとしても、リスクが高いことはな」
武本が年甲斐もなく拗ねたように言えば、佐賀作戦参謀が片方の眉を釣り上げた。
「内地から第一機動艦隊が増援として来ます。こちらから強行しないのであれば、合流してから策を巡らしてもよいでしょう。今、日本海軍には転移連絡網がありますから、援軍が到着するまで時間稼ぎをする必要もありません」
「魔技研の転移技術様々だな」
武本は肩をすくめる。
転移技術がなければ、内地から増援艦隊が到着するまで、現地の第七艦隊だけで、敵大西洋艦隊の足止めをせねばならないところだった。
それこそ、危険を冒して紅海に侵入し、スエズ運河通行中の敵艦隊を攻撃する、などという策も、本気で検針しなければならないほどに。
「わかりきっていることだが、兵力差は大きい」
第七艦隊は、戦艦3、空母6、大型巡洋艦4、重巡洋艦1、軽巡洋艦4、特殊巡洋艦3、駆逐艦24、敷設艦2、特設潜水母艦3、潜水艦27、合計77隻。
対する敵大西洋艦隊は、戦艦だけで40隻近く、大型空母10を含む、40隻以上の空母と200隻の護衛艦がついている。
「まともにやりあってもまず勝ち目はあるまい。やるとすれば潜水機能を活用した奇襲と漸減くらいが関の山だ」
「やっぱりスエズ運河を叩きますか?」
阿畑が言った。武本は首を傾ける。
「我々しかいなかったならな。だが、スエズを封鎖したとて、遠回りのアフリカ大陸ルートを使えば、時間はかかるがインド洋にまで敵はやってこれる。すぐにでも増援が到着するこちらをしては、時間稼ぎする意味があるかは疑問だな」
たとえば、太平洋に敵がいて、連合艦隊が交戦中、というのなら、時間稼ぎに意味が見いだせるが。
幸い、いまの太平洋に、連合艦隊が総出で当たらねばならないほどの敵はいない。
「ただし、敵の詳しい情報は仕入れておきたいな」
「はっ」
第七艦隊は、第十三航空戦隊の哨戒空母『真鶴』をアラビア海に派遣。敵情偵察に当たらせるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます