第269話、攻略作戦、続行


 マーシャル諸島攻略は続行される。それにあたって、第二機動艦隊は一度立て直し図った。


 内地から急遽、海軍陸戦隊で上陸部隊が編成される。しかし、さすがにすぐとはいかないため、残っている陸軍の上陸部隊には、クェゼリン島を攻略してもらい、環礁を制圧。その上陸戦の状況を見て、余裕があれば、そのままウォッゼ、マロエラップと進み、マーシャル諸島の奪回を進める。


 当初の三分の一になってしまった上陸部隊である。島の攻略には、海軍が全力で支援し、陸軍にこれ以上の損害を出させない覚悟で戦うこととなった。



●第二機動艦隊


・戦艦

 第一戦隊:「播磨」「遠江」

 第三戦隊:「土佐」「天城」「紀伊」

 第四戦隊:「長門」「陸奥」「薩摩」「飛騨」

 第五戦隊:「肥前」「周防」


・空母

 第二航空戦隊:「大鳳」「飛龍」

 第六航空戦隊:「瑞鷹」

 第八航空戦隊:「応龍」「蛟竜」「神龍」


・重巡洋艦:

 第十二戦隊:「吾妻」「六甲」「蔵王」「磐梯」

 第十三戦隊:「阿蘇」「笠置」「身延」

 第十七戦隊:「最上」


・防空巡洋艦:

 第二十一戦隊:「鶴見」「馬淵」「石狩」「十勝」

 第二十二戦隊:「木戸」「岩見」

 第二十三戦隊:「真野」


第一水雷戦隊:「阿賀野」

 第六駆逐隊  :「響」「雷」「電」

 第二十一駆逐隊:「初霜」「若葉」

 第二十四駆逐隊:「海風」「五月雨」「山風」

 第二十七駆逐隊:「時雨」「夕立」


第三水雷戦隊:「揖斐」

 第十一駆逐隊 :「朝霜」「秋霜」「早霜」「清霜」

 第十五駆逐隊 :「初秋」「早春」

 第十九駆逐隊 :「霜風」「朝東風」

 第四十四駆逐隊:「樫」「榧」


第八水雷戦隊:「川内」「神通」

 第七十六駆逐隊:「吹雪」「白雪」「初雪」「磯波」

 第七十七駆逐隊:「浦波」「敷波」「綾波」

 第七十八駆逐隊:「天霧」「朝霧」「夕霧」「狭霧」

 第七十九駆逐隊:「初春」「子日」「春雨」「涼風」


第二防空戦隊:

 第三十五駆逐隊:「大風」「南風」

 第三十六駆逐隊:「早風」「冬風」

 第四十二駆逐隊:「竹」「梅」「桃」

 第四十三駆逐隊:「桑」「桐」



 四つに分かれていた甲から丁までの部隊を全て集め、損傷艦艇を抜いた結果が、以上である。


 沈没艦は14隻。うち空母が「加賀」「大龍」「黒鷹」「紅鷹」が失われた。浮いてはいるものの、離脱を強いられた空母は「赤城」「蒼龍」「瑞鳳」の3隻であり、まったく無傷の丁部隊にいた潜水型空母3隻を加えても、健在空母が6隻しか残っていない。機動部隊としては半減以下である。


 戦艦は沈没はないものの、3隻が離脱。巡洋艦は4隻、駆逐艦7隻が脱落した。第二、第三上陸部隊の護衛部隊で残存した駆逐艦・海防艦に守られて、トラックへと退避した。


 なお、この上陸部隊の護衛部隊でも、空母「雲鷹」「冲鷹」、駆逐艦・護衛艦「欅」「柿」「菫」「竹生」「保高」「伊唐」が沈没している。


 連合艦隊司令部では、この損害に改めて衝撃を受けていた。樋端航空参謀の発言で、作戦続行の雰囲気になったものの、第二機動艦隊の被害は大きかった。


「これは南雲さんでなくても、作戦中止を考えるな」


 草鹿参謀長は、かつて第一航空艦隊で参謀長を勤めた時の上官である南雲を思い出しつつ声に出した。


 第四艦隊の司令長官である角田中将ならどうだろうかと考えつつ、しかし大抵の指揮官なら、中止が妥当と退却したに違いない。


 転移で直接に連合艦隊司令部へのお伺いが可能だからこそ、続行されたものの、そうでなければ現場の判断で、マーシャル諸島から引いていただろう。


「長官、ここは空母の増強が必要なのではないでしょうか?」


 草鹿は進言した。さすがに13隻中、残存6隻は心もとない。


「マーシャル諸島攻略にかかるペースも明らかに低下するわけですし、その間に、敵太平洋艦隊が出てくる可能性もあります。ここは第一機動艦隊から航空戦隊を引き抜いては如何でしょうか?」

「……樋端君。航空隊の補充は必要か?」

「敵太平洋艦隊が全力で出てこない限り、現状で事足ります」


 樋端は答えた。山本は、その樋端と別作業している神明を見た。


「神明君。敵太平洋艦隊に備えて、第一機動艦隊から引き抜きは可能だろうか」


 オブザーバーとはいえ、ちょうど第一機動艦隊参謀長である神明がいるのだ。ついでとばかりに聞いた山本に、神明は淡々と答えた。


「敵が出てきたなら出撃も吝かではありませんが、そうでないなら、インド洋作戦での補充、再編成を優先すべきです」


 きっぱりと、神明は断言した。


「第一機動艦隊の各艦艇にも、間もなく転移装置がつけられますし、敵が出てくるまでは内地でよいと考えます」

「ふむ……」


 神明とて、敵太平洋艦隊が出てきたならば、第二機動艦隊の、特に制空権確保に自信が持てないのは理解している。しかし第一機動艦隊も補給や整備が必要。であるならば、必要であると確定しない限りは動かすべきではない、と言うのだ。


 もっとも第一機動艦隊については小沢中将が決めることであり、参謀長である神明に決定権はない。


「ただ、どうしても空母が欲しいのであれば、九頭島の第九艦隊から、九航戦『翔竜』『龍驤』を借りてはどうでしょうか? あと、内地で『神鷹』がありますから、無人航空隊を積んでくるという手もあります」

「……なるほど。第九艦隊は軍令部の預かりではあるが、マーシャル諸島の奪回に関して言えば、首を横には振らんだろうな。それでいこう」


 山本は決断した。正直、神明の代替案は、気休め程度であり、異世界帝国の太平洋艦隊が出てくれば、結局は第一機動艦隊が出張ることになるだろう。


 ただ、第二機動艦隊の、特に南雲中将あたりには、軽空母とはいえ増援は少し安心感を与えるに違いない。

 などと神明が考えていたら、敵重爆撃機の発進基地がわかったと、通報が入った。


『ジョンストン島の飛行場に、敵重爆撃機を確認!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る