第199話、第一機動艦隊、補充中


 7月1日、山本五十六大将の乗る戦艦『播磨』は、タウイタウイ泊地に到着した。


 随伴するのは、須賀中尉ら能力者の操る軽巡洋艦『川内』、潜水駆逐艦『吹雪』『白雪』『磯波』『浦波』と、幽霊艦隊から日本海軍に返還された軽巡洋艦『天龍』、そして鮫島艦隊残存艦である戦艦『常陸』、空母『隼鷹』『龍鳳』『瑞鳳』、駆逐艦「楓」「欅」「柿」である。


 戦艦『常陸』は大破、自力航行不能だったので、『播磨』によって曳航されての帰還となった。

 もっとも『播磨』にしても、艦構造物に少なからぬ被弾、損傷があり、修理が必要だった。


 燃料の補給と最低限の補修ののち、『播磨』は、『天龍』『川内』らと共に内地へ移動。『常陸』は工作艦による応急修理ののち、シンガポールはセレター軍港にて本格的な修理が行われる予定だ。


 連合艦隊は、懸念であった敵機動部隊を二つ、撃破に成功した。

 だが、第八艦隊を撃破した新種の航空戦艦を含む小部隊は、ニューギニア島南部方面に入られ、追撃は不可能となった。ニューギニア島とオーストラリア、双方から挟まれた海域ゆえ、日本軍も下手に踏み込めないのだ。


 かくて、中部太平洋を巡る戦いは膠着状態になるが、次の作戦のための準備、練成が進められていた。


 まず、海軍としては、マーシャル諸島の奪回を掲げ、陸軍にも協力を求めた。

 その陸軍からは、海軍にインド洋――正確にはベンガル湾の制海権を確保してもらい、東南アジア方面から侵攻している異世界帝国軍の補給線に圧力をかけて、同軍を壊滅させる作戦への協力を要請されている。


 インド洋作戦と仮名称がついているこの作戦は、陸軍も敵の後陣を突く遊撃戦闘師団の準備が間もなく完了するということで、海軍はかねてから派遣予定だった第一機動艦隊の再編成と出撃準備にかかっていた。


 かくて、7月15日。第三艦隊旗艦『伊勢』の艦橋で、小沢治三郎中将は機嫌がよかった。


「実に勇壮だ。真新しいものが揃うと、何とも気分も晴れやかになる」

「そうですね」


 神明作戦参謀は同意した。


「新しいという言葉は、いいものです」


 その視線の先には、再編成された航空艦隊の姿がある。



○第一機動艦隊


・戦艦

第二戦隊:「大和」「武蔵」「美濃」「和泉」

第六戦隊:「伊勢」「日向」

第七戦隊:「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」


・空母

第一航空戦隊:「大鶴」「紅鶴」「黒龍」

第三航空戦隊:「翠鷹」「蒼鷹」「白鷹」

第五航空戦隊:「翔鶴」「瑞鶴」「祥鳳」

第七航空戦隊:「海龍」「剣龍」「瑞龍」


・大型巡洋艦

第九戦隊:「黒姫」「荒海」「八海」


・重巡洋艦

第十五戦隊:「妙高」「那智」

第十六戦隊:「利根」「筑摩」「鈴谷」「熊野」


・特殊巡洋艦

第二十九戦隊:「北上」「大井」「木曽」

第三十戦隊 :「初瀬」「八島」「九頭竜」


・防空巡洋艦

第二十四戦隊:「狩野」「秋野」「伊佐津」


第一防空戦隊:軽巡洋艦「大淀」

 第六十一駆逐隊:「秋月」「照月」「涼月」「初月」

 第六十二駆逐隊:「新月」「若月」「霜月」「冬月」

 第六十三駆逐隊:「春月」「宵月」「夏月」「満月」

 第六十六駆逐隊:「青雲」「天雲」「冬雲」「雪雲」


第七水雷戦隊:軽巡洋艦:「水無瀬」「鹿島」

 第七十一駆逐隊:「氷雨」「早雨」「白雨」「霧雨」

 第七十二駆逐隊:「海霧」「山霧」「谷霧」「大霧」

 第七十三駆逐隊:「黒潮Ⅱ」「早潮Ⅱ」「漣Ⅱ」「朧Ⅱ」

 第七十四駆逐隊:「山雲Ⅱ」「巻雲Ⅱ」「霰Ⅱ」「夕暮Ⅱ」


・敷設艦

 第七十五戦隊:『津軽』『沖島』


 第十七潜水戦隊:補給・潜水母艦3:『ばーじにあ丸』『あいおわ丸』『迅鯨』

 ・第七十潜水隊 :伊600(特マ潜水艦)、伊611、伊612

 ・第七十一潜水隊:伊607、伊608、伊613

 ・第七十二潜水隊:伊609、伊610、伊614



 第三、第七艦隊を中心に、改修・再生艦の補充を加えたその陣容は、戦艦10隻、空母12隻、大型巡洋艦3、重巡洋艦6隻、ほか巡洋艦12隻、駆逐艦32隻、潜水艦9隻、敷設艦ほか補助艦艇5隻となる。


 第一機動艦隊の空母群は、一個航空戦隊3隻、それが4個航空戦隊で編成されている。

 リトス級改の大鶴型2、翔鶴型2、翠鷹型2の大型空母と、『黒龍』(インドミタブル)、『白鷹』『祥鳳』の直掩空母、そして海龍型が3隻。


 主力となる大型空母2隻に、戦闘機を中心にした直掩空母1隻の組み合わせが、3個戦隊と、潜水機能を持つ中型空母3隻の編成が1個戦隊である。


 第一機動艦隊には奇数の番号の航空戦隊が所属しており、近々編成が予定されている第二機動艦隊には、偶数番の航空戦隊が配備されることになっている。


 ほか艦艇に目を向けると、修理再生組からは、中部太平洋海戦で大破した戦艦『武蔵』が、修理のついでに『大和』と同様の改修を受けて配備された。日本海軍は、同型を最低2隻揃えて運用する傾向にあるのだ。


 第一次トラック沖海戦で沈んだ戦艦『日向』、重巡洋艦『那智』、軽巡洋艦『大井』も、僚艦と同様の改装を受けて復帰している。


 また冬月型駆逐艦は、異世界帝国駆逐艦の素材を利用し、秋月型を参考に再生、建造された艦だ。それまで機動部隊の防空を担ってきた大風型より大型で安定性があり、防空能力も秋月型に匹敵する。故に改秋月型とも呼ばれている。


 艦は揃った。しかし、司令長官である小沢をより機嫌よくさせたのは、別に理由がある。青木航空参謀がやってきた。


「長官、来ました」

「うむ」


 空母『大鶴』へ着艦しようとしている航空機が数十機。その機体は、待ちに待った新型機だ。


 零式艦上戦闘機五三型と、艦上攻撃機『流星』、艦上偵察機『彩雲』である。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・冬月型駆逐艦:『冬月』

基準排水量:2700トン

全長:135メートル

全幅:12メートル

出力:6万馬力

速力:35.5ノット

兵装:長10センチ連装高角砲×4 6連装魚雷発射管×1 

   対潜短魚雷投下機×2 25ミリ三連装機銃×6 

航空兵装:――

姉妹艦:「春月」「宵月」「夏月」「満月」「花月」「清月」「大月」「葉月」

「山月」「浦月」「紅雲」「春雲」「八重雲」

その他:撃沈した異世界帝国駆逐艦を合成して改修した駆逐艦。秋月型に準じた性能があり、艦隊防空に活躍した。


・狩野型防空巡洋艦:「狩野」(ダナイー)

基準排水量:4800トン

全長:144メートル

全幅:14.1メートル

出力:6万馬力

速力:33ノット

兵装:50口径12.7センチ単装高角砲×5 8インチ単装光弾砲×4

   53センチ三連装魚雷発射管×2  対潜短魚雷投下機×1

   25ミリ三連装機銃×4 25ミリ単装機銃×8

航空兵装:――

姉妹艦:「秋野」(ドラゴン)、「伊佐津」(ダーバン)

その他:異世界帝国との戦いで撃沈された英国製D型軽巡洋艦を、幽霊艦隊が回収、防空艦に改修したもの。主砲を新式の50口径12.7センチ自動高角砲に換装。障壁弾を使用可能としつつ、光弾砲を装備しており、高速直射戦闘に対応している。魚雷発射管が減らされている一方で、機銃が増強された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る