第161話、日本軍、襲来


 サイパン、テニアン、グアム島の攻略は、進んではいたものの、現地を守る異世界帝国守備隊は、未だ抵抗を続けている。

 日本海軍は、第一艦隊の戦艦、巡洋艦群による艦砲射撃を実施し、陸軍の支援を進めた。その一方で、トラックに残る敵艦隊を撃滅すべく、第二、第三艦隊を動かした。

 その戦力は以下の通り。


○第二艦隊:戦艦:4 空母:3 大型巡洋艦:4 重巡洋艦:3 軽巡洋艦:4 駆逐艦:12


・戦艦

第六戦隊:「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」

・空母

第二航空戦隊:「蒼龍」「飛龍」「黒龍」

・大型巡洋艦

第七戦隊:「雲仙」「剱」「乗鞍」「白根」

・重巡洋艦

第九戦隊:「高雄」「摩耶」「鳥海」

・軽巡洋艦

第十五戦隊:「黒部」「遠賀」「成羽」 


・第二水雷戦隊:軽巡洋艦「青葉」

第十駆逐隊 :「秋雲」「夕雲」「風雲」「長波」

第一六駆逐隊:「雪風」「初風」「親潮」「天津風」

第十七駆逐隊:「磯風」「谷風」「浜風」「浦風」



○第三艦隊:戦艦:1 空母:5 重巡洋艦:3 防空巡洋艦:8 軽巡洋艦:1 駆逐艦:13


・戦艦

単独旗艦:「伊勢」

・空母

第一航空戦隊:「瑞鶴」

第三航空戦隊:「翠鷹」「白鷹」

第五航空戦隊:「大龍」

第九航空戦隊:「翔竜」

・重巡洋艦

第十一戦隊:「利根」「鈴谷」「熊野」

・防空巡洋艦

第十七戦隊:「米代」「岩見」「宇治」

第十八戦隊:「六角」「中津」

第十九戦隊:「狩野」「秋野」「伊佐津」


第一防空戦隊 :軽巡洋艦「大淀」

第十四駆逐隊 :「楓」「欅」「柿」

第三十五駆逐隊:「大風」「西風」「南風」

第三十六駆逐隊:「早風」「夏風」「冬風」

第六十一駆逐隊:「秋月」「照月」「涼月」「初月」


各艦種の合計は、戦艦5隻、空母8隻、大型巡洋艦4隻、重巡洋艦6隻、防空巡洋艦8隻、軽巡洋艦5隻、駆逐艦25隻である。


 第二艦隊は、マリアナ諸島攻略支援のため、重巡洋艦戦隊と第四水雷戦隊が留まるが、主力である金剛型戦艦、雲仙型大型巡洋艦は参加している。これらは万が一の水上艦隊戦になった際の保険である。

 第三艦隊は、先日の敵重爆撃機からの誘導弾攻撃で、空母戦力は半減している。第九艦隊から、高高度戦闘機『青電』を搭載する『翔竜』を借りて、空母は5隻となった。

 また護衛艦艇にも脱落している艦はあるが、空母の数からすると充分過ぎる。


 トラックにいる異世界帝国艦隊は、戦艦4隻、重巡洋艦4隻、軽巡洋艦5隻、駆逐艦16隻ほか、守備隊として魚雷艇が十数艇。六つの飛行場と砲台が複数存在する。


 邪魔になるのが、飛行場であるが、その航空戦力は、敵太平洋艦隊撃滅直後に飛来した攻撃隊をかなりの数撃墜しているので、正規の数よりも消耗しているのは確実だった。

 そしてこの日本海軍の動きは、異世界帝国側も把握した。



  ・  ・  ・



 異世界帝国トラック駐留軍は、先日の第七艦隊がトラックを掠めた事件によって、その捜索に振り回された。


 結局、その姿を見つけることができず、高いレベルの緊張をはらんだ捜索と警戒は、徒労に終わった。

 だが、それならそれで、マリアナに展開する日本艦隊の警戒は引き続き行われていて、その結果、新たに敵艦隊が進撃しているのをキャッチした。


 今回は、トラック外の拠点の陸軍航空隊を頼りにはできない。ニューギニア方面の基地が立て続けに叩かれた報告は、トラック守備隊にも届いている。重爆撃機部隊による援護は受けられない。


「いよいよ日本軍が狩りに来たと認識してよいだろう」


 トラック駐留艦隊のイリスィオス中将は、最期の時が近づいていると覚悟した。頼りの航空戦力は、トラック飛行場の残る基地航空隊のみ。イリスィオスの艦隊には、空母は残っていない。


「太平洋艦隊が壊滅し、カスパーニュ大将が戦死された今、次の司令長官の命令が発せられるまで、我々は現状維持に務めなければならない」


 つまり、逃げることはできないわけだ。参謀たちの表情も重苦しい。


「しかし、タダでやられるわけにはいかん。1機でも多く、1隻でも多く、敵を血祭りに上げて、皇帝陛下への忠義とする! 各艦、出撃準備にかかれ!」


 イリスィオスは、艦隊に出撃を命じた。トラック守備隊の航空隊に、上空支援を頼む。それがおそらく、より多くの敵に出血を強いる最善手だ。


 泊地を出たのは、いざ日本機動部隊から空襲を受けた際、自由な艦隊運動を行うためだ。回避運動を取るには、環礁は狭すぎる。

 トラック泊地を出て早々、トラック守備隊の警戒機より通報が入った。


『敵攻撃隊、艦隊に向かって接近中! その数およそ270!』


 ただちにトラックの各飛行場から、ヴォンヴィクス戦闘機が発進。イリスィオスの艦隊に迫る日本軍攻撃隊の迎撃に向かう。


「これはやられるな」


 イリスィオスだけでなく、駐留艦隊の多くの兵が同じ思いを抱いていた。遥かなる故郷を離れて、別の世界で屍となる……。それはとても虚しいものがあった。


「艦隊、対空戦闘用意!」

「対空戦闘、用意!」


 かくてトラック駐留艦隊に、日本海軍の航空隊が殺到した。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

・白鷹型空母『白鷹』

基準排水量:1万8000トン

全長:221メートル

全幅:30.1メートル  水線幅:26.6メートル

出力:15万2000馬力

速力:33.3ノット(水抵抗軽減で36ノット)

兵装:40口径12.7センチ連装高角砲×6 25ミリ三連装機銃×12

航空兵装:艦載機×57

姉妹艦:

その他:スカパフローで自沈したドイツ巡洋戦艦『フォン・デア・タン』を空母に改装したもの。装甲重量分を資材に変え、50メートルの船体延長を図った。蒼龍型空母と同等の性能を持つ。


・翔竜型実験空母『翔竜』

基準排水量:1万6042トン

全長:182メートル

全幅:29.2メートル  水線幅:33メートル

出力:12万馬力

速力:30.3ノット(水抵抗軽減で33ノット)

兵装:40口径12.7センチ連装高角砲×5 25ミリ三連装機銃×9

航空兵装:艦載機×40

姉妹艦:

その他:スカパフローで自沈したドイツのカイザー級戦艦を空母として改装したもの。魔技研でも、魔法装備の実験艦として改修されたため、他の改装空母と異なり、大幅な船体延長はされていない。発着艦用拡張甲板、魔法防御装甲、魔式カタパルトを搭載。さらに機関も魔式とされる。サイズは軽空母だが、魔法防弾装備の装甲甲板により、防御力も高い。

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