第147話、新編成艦隊で挑む
前衛を失いつつ、敵太平洋艦隊はなお、マリアナ諸島方面への進撃をやめなかった。
敵にも、引けない理由があるのだろう、と、連合艦隊司令長官である山本は思った。
敵主力の戦力については、第六、第七艦隊から知らされている。故に、第三艦隊抜きでも第一艦隊、第二艦隊、そして第七艦隊で対応できると踏んだのだ。
連合艦隊第一、第二艦隊の陣容は以下の通りとなる。
○第一艦隊:戦艦:14 空母:3 重巡洋艦:8 軽巡洋艦:5 駆逐艦:25
・戦艦
第一戦隊:「播磨」「武蔵」(連合艦隊直率)
第二戦隊:「土佐」「天城」「紀伊」「尾張」
第三戦隊:「薩摩」「安芸」「肥前」「飛騨」
第四戦隊:「相模」「周防」「甲斐」「越後」
・空母
第六航空戦隊:「瑞鷹」「黒鷹」「紅鷹」
・重巡洋艦
第十二戦隊:「吾妻」「六甲」「蔵王」「磐梯」
第十三戦隊:「阿蘇」「葛城」「笠置」「身延」
・軽巡洋艦
第二十一戦隊:「高瀬」「渡良瀬」「浦野」
・第一水雷戦隊:「阿賀野」
第六駆逐隊 :「暁」「響」「雷」「電」
第二十一駆逐隊:「初霜」「若葉」「有明」
第二十四駆逐隊:「海風」「江風」「五月雨」「山風」
第二十七駆逐隊:「白露」「時雨」「夕立」「村雨」
・第三水雷戦隊:「揖斐」
第十一駆逐隊 :「朝霜」「秋霜」「早霜」「清霜」
第十五駆逐隊 :「初夏」「初秋」「早春」
第十九駆逐隊 :「沖津風」「霜風」「朝東風」
○第二艦隊:戦艦:4 空母:3 大型巡洋艦:4 重巡洋艦:8 軽巡洋艦:5 駆逐艦:27
・戦艦
第六戦隊:「金剛」「比叡」「榛名」「霧島」
・空母
第二航空戦隊:「蒼龍」「飛龍」「黒龍」
・大型巡洋艦
第七戦隊:「雲仙」「剱」「乗鞍」「白根」
・重巡洋艦
第八戦隊:「伊吹」「鞍馬」
第九戦隊:「高雄」「摩耶」「鳥海」
第十戦隊:「妙高」「足柄」「羽黒」
・軽巡洋艦
第十五戦隊:「黒部」「遠賀」「成羽」
・第二水雷戦隊:「青葉」
第十駆逐隊 :「秋雲」「夕雲」「風雲」「長波」
第一六駆逐隊 :「雪風」「初風」「親潮」「天津風」
第十七駆逐隊 :「磯風」「谷風」「浜風」「浦風」
第三十一駆逐隊:「巻波」「高波」「大波」「涼波」
・第四水雷戦隊:「仁淀」
第四駆逐隊 :「嵐」「野分」「萩風」
第七駆逐隊 :「曙」「潮」
第九駆逐隊 :「朝雲」「朝潮」「峯雲」
第十八駆逐隊 :「霞」「不知火」「陽炎」
第一艦隊と第二艦隊において、戦艦の数、大型巡洋艦の存在を除けば、空母、重巡洋艦、軽巡洋艦の数は同じ、駆逐艦もほぼ同数に近い。
しかし目を引くのは、第一艦隊の戦艦の数だろうか。連合艦隊司令部の第一戦隊『播磨』『武蔵』を除いても、第一艦隊には戦艦が12隻あり、すべて41センチ砲搭載である。
また第一艦隊は、異世界帝国艦や鹵獲されていたアメリカ艦を、再改装して編入したものが多い。
例えば第十二戦隊の重巡『吾妻』らは、米海軍のニューオリンズ級などであり、第十三戦隊の『阿蘇』などは、異世界帝国のプラクス級重巡の改装型だ。第二十一戦隊の軽巡洋艦3隻も、米海軍のオマハ級の改装艦である。
駆逐艦に関しては、第一水雷戦隊は日本艦だが、再編された第三水雷戦隊は、異世界帝国製駆逐艦を日本艦仕様に改装したものとなっている。
連合艦隊旗艦『播磨』。三和作戦参謀は告げた。
「敵主力艦隊の空母は10隻。しかしいずれも30から40機搭載の小型空母であり、数は約300から400機」
「想定される機種は、三分の二が戦闘機、残りが艦攻と思われます」
佐々木航空参謀が言えば、宇垣参謀長は頷いた。
「だいぶ、数を減らすことができた」
「しかし、あまり楽観できる数もありません」
第一、第二艦隊にはそれぞれ空母が3隻ずつ、計6隻ある。
二航戦の『蒼龍』『飛龍』『黒龍』、六航戦の『瑞鷹』『黒鷹』『紅鷹』であり、『黒龍』=『インドミタブル』を除く六航戦の3隻は、ドイツ巡洋戦艦からの改装空母である。
常用機は二航戦は162機、六航戦は192である。二航戦の数が少ないのは、防御を優先した『黒龍』の搭載機数が48機と少ないせいだ。
二つの航空戦隊合計が354機。最小想定ならこちらが上回るが、目一杯積んできている場合は、やや劣勢と言える。
黒島先任参謀が口を開いた。
「しかし、こちらには第七艦隊の航空隊があります」
第一、第二艦隊と同様に、第七艦隊にも『海龍』『剣龍』『瑞龍』の空母3隻がある。9対10。しかし艦載機数では日本側が上回る。
「最低でも敵空母を排除できれば、第一、第二艦隊で敵本隊を撃滅できます」
第一艦隊14隻に加え、第二艦隊の金剛型戦艦4隻、雲仙型大型巡洋艦があれば、数の上でも圧倒できる。
マリアナを巡る中部太平洋決戦は、日本艦隊が勝つ。気がかりがあるとすれば、敵が未知の新兵器を投入した場合くらいか。
「しかし、油断はできん」
山本は重々しく告げた。
「フィリピン海海戦でも、敵旗艦級戦艦は、長距離砲撃戦に対応してきた。他の艦もそうであったならば予断を許さない。各自、気持ちを引き締め、各々任務を遂行せよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※鹵獲改修艦艇の補足
○戦艦
「播磨」:『メギストス』(異世界帝国旗艦級戦艦)
「肥前」:『メリーランド』 「飛騨」:『ウェストバージニア』
「相模」:『テネシー』 「周防」:『カリフォルニア』
「甲斐」:『ペンシルベニア』「越後」:『アリゾナ』
○空母
「黒龍」:『インドミタブル』
「剣龍」:『アークロイヤル』
「大龍」:『レキシントン』
「海龍」:『エンタープライズ』
「瑞龍」:(異世界帝国中型空母)
○重巡洋艦
「吾妻」:『ニューオーリンズ』 「六甲」:『サンフランシスコ』
「蔵王」:『アストリア』
「九重」:『ヒューストン』 「那須」:『シカゴ』
「磐梯」:『インディアナポリス』」
「阿蘇」「笠置」「葛城」「身延」:(異世界帝国重巡洋艦)
○軽巡洋艦
「仁淀」:『エクセター』(重巡から軽巡に変更)
「揖斐」:(異世界帝国軽巡洋艦)
「黒部」:『ホノルル』 「遠賀」:『ボイス』
「高瀬」:『ローリー』 「渡良瀬」:デトロイト』
「浦野」:『マーブルヘッド』
「成羽」:『モーリシャス』
「鳴瀬」:『デ・ロイテル』
「新田」:『パース』
「静流」:『エメラルド』 「靜間」:『エンタープライズ』
・防空巡洋艦
「狩野」:『ダナイー』 「秋野」:『ドラゴン』 「伊佐津」:『ダーバン』
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