第37話 康夢ちゃんとの思い出・幼い頃から小学生まで (恋乃サイド)

 わたしは浜海恋乃。高校二年生。


 幼馴染の夏島康夢ちゃんが好き。


 わたしは幼稚園の頃から康夢ちゃんと一緒だった。


 幼馴染はもう一人いる。


 居頭祐七郎ちゃん。


 三人でよく遊んだものだ。


 祐七郎ちゃんは、幼稚園の頃から運動が得意だった。


 今、サッカー部で活躍しているけど、その頃からサッカーの才能はあったように思う。


 幼稚園生の時点で、既に周囲の女の子からの人気もあった。


 しかし、わたしは、最初から康夢ちゃんが好きだった。


 もちろん幼稚園生だったので、恋の対象としてではないが、一緒にいて楽しかった。


 祐七郎ちゃんも、いい人だとは思っていたけど、康夢ちゃんに対してもっていたような「好き」という想いは持たなかった。


 祐七郎ちゃんの方も、わたしには大して興味はなかったようで、小学校に入ると、三人で遊ぶことは少なくなり、やがて康夢ちゃんと二人で遊ぶようになっていった。


 小学校三年生まではクラスも同じ。


 学校から帰ると、すぐに康夢ちゃんの家に行った。


 一緒にゲームをして、アニメを観る毎日。


 この頃は、今思っても楽しい時代だった。


 わたしはその頃から、漠然とではあるけど、康夢ちゃんと結婚できたらいいなあ、と思うようになっていた。


 まだまだ恋というものには到達していなかったけど、康夢ちゃんのことを大切な人だと思う気持ちは少しずつではあるが、強くなってきていた。


 この頃の康夢ちゃんはどう思っていたのだろう。


 わたしと毎日遊んでいたので、淡いながらもわたしに好意を持ってくれていたんだと思うけど……。


 そんな毎日が変化したのは、小学校三年生の時。


 この頃から、淑女としてのたしなみを身につけさせたいという両親の方針で、お稽古事の教室に通うようになった。


 これで、結構な時間がとられるようになった。


 康夢ちゃんと遊ぶ時間はそれだけ減ってしまうことになったが、それでも週二日以上は遊べていたし、クラスも一緒で、夏休みなどの休みは毎日に近いぐらい遊ぶことができたので、それほど大きな変化だとは思っていなかった。


 大きな変化があったのは、小学校四年生の時。


 康夢ちゃんと初めてクラスが別々になった。


 最初は、大したことはないと思っていたんだけど……。


 クラスでは、新しい女の子の友達が増えた。


 その人達と遊ぶことが増え、次第に康夢ちゃんの家に行く回数が減った。


 夏休みの頃までは、まだ週一日ぐらいは行っていたのだけど、二学期になると、行くことは少なくなっていった。


 当時のわたしは、女の子たちと遊んだり、おしゃべりをする方が楽しいと思っていたというのもある。


 しかし、それ以上に大きかったのは、わたしが思春期に入り始めていたということだ。


 康夢ちゃんも、一人の男の子。


 そう意識するようになると、話すだけでも恥ずかしい気持ちになるようになっていた。


 幼馴染としての「好き」から、恋の対象としての「好き」に変わり始めていたのだと思う。


 その為、わたしの方が、康夢ちゃんのことを避けるようになっていた。


 そして、康夢ちゃんと疎遠になる決定打となったのが、小学校五年生の時。


 二学期になって、久しぶりに康夢ちゃんが、家で遊ぼうと声をかけてきた。


 康夢ちゃんにとってはとても勇気のいる行動だったと思う。


 わたしと疎遠になっていた時間を少しでも取り戻そうとしていたのだと思う。


 しかし、クラスの女の子と遊ぶ約束をしていたわたしは、あっさりと断ってしまった。


 康夢ちゃんと遊ぶこと自体、恥ずかしくなっていたというところも大きい。


 今思うと、康夢ちゃんをなぜ避けてしまったのだろうと思う。


 わたしと康夢ちゃんが疎遠になってしまった大きな原因は、わたしが康夢ちゃんのことを避けてしまったからだと思う。


 そうしていなければ、祐七郎ちゃんとくらなちゃんと同じように、小学校の時点で恋人どうしになれていた。


 そう思うと、今でも康夢ちゃんには申し訳ないことをしたと思う。


 それ以降、康夢ちゃんと話すことはなくなってしまった。


 まだその時は、わたしの康夢ちゃんへの気持ちが整理されてくれば、まだ話すことができるようになるだろうと思っていた。


 幼馴染なんだし、それは大丈夫だろうと思っていた。


 わたしは康夢ちゃんが好き。


 恋ではまだないと思うけど、一番いいと思っているのは康夢ちゃん。


 それでいて、康夢ちゃんのことを避けているわたし。


 当時も、わたしはいったい何をしているんだろう、と思っていたのだけど、心のコントロールって難しい。


 小学校五年生になると、そんなわたしに告白する男の子が現れた。それも何人も。


 康夢ちゃんだけでなく、男の子と話すこと自体苦手になっていたわたしの、どこに魅力を感じたのだろうか。


 もちろんすべて断った。


 しかし、小学校六年生になって、同じのクラスのある男の子と付き合っているといううわさが流れた。


 その男の子と仲良くしゃべっていたというだけで、そういう噂が流れたのだ。


 わたしは、男の子が苦手になっていたので、なるべく男の子とは話をしないようにしてきた。


 それが、その男の子とは、どうしても話さなければいけないことがあったので、そこそこの時間、話をしていたのだった。


 すると、もう次の日から、わたしとその男の子のことで、クラスの中は盛り上がっていた。


 あの男の子に興味がなかった浜海さんが、仲良く話をしている。


 二人は付き合っているのでは。


 という風に。


 その男の子は、わたしに興味は持っていたようだけど。特に好きだと思っていたわけではないようだった。


 わたしもその男の子も、相手には特に興味はない、と言ったので、噂は自然におさまっていった。


 しかし、その噂は、他のクラスに流れて行っていた。


 康夢ちゃんもその噂をを聞いていただろう。


 そのことについて、康夢ちゃんと話をしたことはなかったけど、嫌な気持ちになったのは間違いないと思う。


 この点についても、康夢ちゃんに話をすべきだったと、今になって思う。

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