第36話 婚約への道

「康夢ちゃん、好き」


「俺も好きだよ」


 俺と恋乃ちゃんは、ベッドの上に横たわり、手をつないでいた。


 いつまでもこうしていたいと思う。


 それだけ幸せ一杯の俺達だ。


「今日からわたしは康夢ちゃんのものよ」


 そう言って微笑む恋乃ちゃん。


「俺だって、すべて恋乃ちゃんのものだ」


「康夢ちゃん……」


「恋乃ちゃん……」


 俺達はまた唇を重ね合う。


 キスをするまでは、いろいろ悩んでいた。


 しかし、一度キスをしてからは、抑えがきかなくなってしまった。


 一日中キスをしていてもいいくらいだ。


 恋乃ちゃんも同じ気持ちのようだ。


 その先の方は、キス以上に幸せな気持ちになれるものだった。


 初めてどうしの俺達。


 それはとてもうれしいものだった。


「康夢ちゃん、わたし、康夢ちゃんと一緒の世界に入ることができてよかったと思う。わたし、幸せで一杯なの」


「俺も好きで愛している人と一緒の世界を旅することができて幸せだよ」


「康夢ちゃん、わたし、明日から康夢ちゃんと一緒に登校したい」


「一緒に登校?」


「そう。そして、下校の時、一緒に帰ることができる時は一緒に帰るということで」


 入っているクラブが違うので、いつも一緒というわけにはいかない。


 でも部活がない時など、一緒に帰ることができる時に一緒に帰ることができるのは、うれしい話だ。


 登下校を恋乃ちゃんと一緒にするのは、俺の夢になっていた。


 その夢が実現しようとしている。


「わたしと登下校するのは嫌?」


「いや、大歓迎だよ」


「よかった。もしかしたら嫌がるんじゃないかと思って」


「こんなかわいい人と一緒に登下校できるんだ。嫌なわけがない。そう言ってくれて、うれしい。恋乃ちゃんこそ負担に思わないの?」


「思うわけないわ。好きな人と一緒に登下校できるんですもの」


「恋乃ちゃん……」


「後、晩ご飯も毎日作ってあげる」


「晩ご飯も?」


「それが、恋人にしてあげられることだと思っている」


 恋乃ちゃんのエプロン姿。


 想像するだけでも心が高揚してくる。


「食材の買い物も一緒に行きたいな。康夢ちゃんが良ければだけど」


「もちろんいいにきまっている。恋乃ちゃんの料理、とても楽しみだよ。ただ、恋乃ちゃんに負担をかけることになっちゃうから、毎日じゃなくていい。俺が料理を作って、恋乃ちゃんに食べてもらう日も作りたいと思う」


「気をつかってもらってありがとう。康夢ちゃんの言葉に甘えさせてもらうよ」


「うん。恋乃ちゃんの方こそ気にしないで」


「わたし、今まで康夢ちゃんと疎遠だったから、これからはできるだけ一緒にいたい」


「俺も同じ気持ちだよ。もう一緒に住みたいくらいだ」


「わたしも一緒に住みたいと思っている」


「今は無理だと思う。でも婚約はしたい。今度の正月にはしたいと思っている。そして、結婚への道につなげたいと思っている。恋乃ちゃんはどう思っているの?」


「わたし、さっき、康夢ちゃんが婚約と結婚の話をした時、こんなにもわたしのことを想ってくれたんだと思って、とてもうれしかった。わたしも正月に婚約したいと思っている」


「ありがとう。そう言ってもらってうれしい」


「でも婚約するには、両家の両親がそろっていないと無理だと思うけど。わたしのお父さんはこの正月帰って来るけど、康夢ちゃんの両親は帰ってくるの?」


「それは大丈夫。帰ってくるよ」


「帰ってきても反対しないかなあ……」


「大丈夫。もともと幼い頃からの知り合いだし、反対することはないと思う。もし反対したとしても、康夢ちゃんへの俺の想いを話して、絶対に認めてもらうよ」


「ありがとう。わたしの方も反対することはないと思うけど、反対したら、康夢ちゃんへの想いを話して、絶対に認めてもらう」


「恋乃ちゃん、ありがとう。もう心の中では婚約者どうしだと思っている」


「康夢ちゃん、わたしもそう思っている」


「これからは二人で人生を歩んでいくんだ」


「康夢ちゃん、他の人に心を動かさないでね。康夢ちゃん、魅力が一杯あるから」


「それは大丈夫。俺の心は恋乃ちゃんで一杯だ」


「わたしも康夢ちゃんのことで心が一杯になっている」


「恋乃ちゃん、これからいろいろ出かけたいね」


「わたしもいろいろなところへ行きたい」


「いい思い出を作っていこう。たくさん作っていこう」


「うん。たくさん作っていこうね」


 俺は恋乃ちゃんと唇を重ねた。


 唇を離すと、


「もう少し康夢ちゃんとこうしていたい」


 と恋乃ちゃんは言った。


「俺も同じ気持ちだよ」


 恋乃ちゃんと一緒にいればいるほど、彼女のことがますます好きになっていく。


 できればこのまま一晩中一緒にいたいくらいだ。


 でも夜遅くなってきた。


 恋乃ちゃんはそろそろ家に帰らなければならない。


 名残惜しいが、仕方がない。


 とはいうものの、俺達はまだベッドの上に横たわっている。手もつないだまま。


「康夢ちゃん、明日からは、毎日家にくるから」


「ありがとう。これほどうれしいことはないよ」


「でも、もうちょっとだけここにいさせて」


「うん。ずっといてくれてもいいけど」


「康夢ちゃん、うれしい。そう言ってくれて。好き」


 恋乃ちゃんの唇が近づいてくる。


 俺も唇を近づけ、恋乃ちゃんの唇に重ね合わせていった。

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