第29話 デートの準備
その日の夜。
俺はデートについての情報を集め、計画を練っていた。
祐七郎にも電話をして相談した。
祐七郎と新月さんは、小学校六年生からの付き合い。デートの経験も豊富だと思われるからだ。
「お前と新月さん、数え切れないほどデートしてきたんだろう?」
「まあな。でも俺、休日、部活が多かったから、お前が思うほどはしていないぜ」
「新月さん、休日もお前の応援をしていたんじゃないのか」
「それはそうだけど」
「部活が終わった後や試合が終わった後、一緒に帰ってお茶をしたりしていたんじゃないの?」
「そりゃそうだけど」
「それもデートの一種だろう」
「デートっていうのは、二人でどこかに出かけるものだと思うから、ただお茶するだけだと違う気がするけどなあ」
「二人一緒に行動すればデートだと思うけど。まあでも、いいなあ、と思うよ」
「まあ、俺のことはいいから」
恥ずかしがっているようだ。
「お前もいよいよデートをするんだな」
「お前の応援のおかげだよ」
「いや、お前の恋乃ちゃんへの想いが通じたってことだよ。よかった」
「ありがとう」
「それで、デートの計画はもう立てたのか?」
「お前に言われて、告白の前から情報を集めていた。だいたいまとまってはきているんだけど……。恋乃ちゃん、喜んでくれるかなあ、と思って」
「計画を立てるべきだと言ったのは、その場の思い付きでいくと、行きたいところに入れなかったりして、恋乃ちゃんを振り回すことになってしまうと思ったからなんだ。予約しないと入れないところもあるからな。これが、仲違いの原因になる可能性もあるんだし、計画はやっぱり大切だ」
「新月さんとのデートもそうしているの?」
「そう。ある程度は立てていくよ。予約は必要なレストランは予約してから行く」
「お前って、意外としっかりしているよなあ」
「意外はちょっと余計だと思うけど」
「新月さんも、お前のそういうところが好きなところの一つなんだろうなあ」
「俺のことはいいよ。既に計画の大きなところは立てているんだろう? だったら、後は進むのみだ」
「映画に行こうと思っているんだ。それからレストランも」
「いいじゃないか」
「でも喜んでくれない可能性があると思って」
「それこそお前の想いが大切だよ。お前の恋乃ちゃんへの、好きという気持ち。恋乃ちゃんにもきっと通じるって」
「お前も新月さんへはそう対応しているということなんだな」
「そう。まあ俺の場合、デートでも毎回、美人の方を向いただけで怒られちゃうけど」
「デートの時、美人の方を向いちゃったら、そりゃ、新月さんは怒るだろう」
「俺はくらなちゃん一筋だよ。ただ美人がいると少しだけ気がそちらに向いてしまうだけだ」
美人に気が向いてしまうところがなくなってくれば、新月さんとのケンカをする回数も減るのだろうけど。
「お前はそういところがないから、気持ちはすぐ通じると思う」
「そうだといいなあ」
「デートでのことは、細かいところはいろいろある。でも一番大切なのは、心から恋乃ちゃんのことを好きだと想うこと。俺もくらなちゃんのことは心から好きだと想っているんだ」
「ごちそうさま」
「お前にもできるって。だから悩むことはないと思う」
「できるように努力する」
「その気持ちが大切だ。俺は二人をいつも応援しているぜ」
「今日もありがとう」
「じゃあ、またな。また相談に乗るよ」
「ありがとう。また相談させてもらうかもしれないけど、その時は、お願いしたいと思っている」
「ああ、もちろん、いつでもいいぜ」
「バイバイ」
「バイバイ」
通話は終わった。
俺の恋乃ちゃんへの好きだという想いが大切だと祐七郎は言っていた。
そうだ。
今日これから恋乃ちゃんとルインをする。
「恋乃ちゃんが好き」
と書いて送信しよう。
いや、それだけではない。
電話をしよう。電話で、「好き」という言葉を言いまくろう。
とはいうものの、恥ずかしい気持ちはまだまだ大きい。
電話で言いまくるのはまだ無理そうだ。
でもとにかくルインでまず「好き」と書いて送信しよう。
俺はそう決意し、
「こんばんは」
とまず送信する。
そして、
「恋乃ちゃん、好き。大好き」
と書いた。
これを送信しようとする。
しかし、送信することがなかなかできない。
今日直接恋乃ちゃんに、「好き」と言えたのに、なんでルインだと送信できないんだろう。
その間に恋乃ちゃんが、
「こんばんは」
と送信してきた。
そして、その後、
「今日は、恋人どうしになれてうれしかった」
「ありがとう」
と送信してくる。
これはもう送信するしかない。
俺は恥ずかしい気持ちをなんとか抑え込み、送信した。
返事は……。
少し時間が経った後、
「わたしも康夢ちゃんが好き。大好き」
と送信されてきた。
改めて相思相愛になったんだと思う。うれしくてしょうがない。
しかし、こうなると、次は声が聞きたくなる。
かわいくて甘い声。電話でその声を聞きたい。
でももう夜遅くなってきている。迷惑ではないだろうか。
そうは思うが、声を聞きたいという気持ちが抑えられない。
「夜遅くて申し訳ないけど、電話したい、いい?」
と書き、一気に送信した。
迷ってはいけない。結果、
「電話はまた今度で」
と言われても、また明日トライをすればいいだろう。
もしうまくいけば、これからはルインだけでなく電話のやり取りもできるようになる。
俺は返信を待つことにした。
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