第30話 電話をする俺と恋乃ちゃん

 今度はそれほど待たなかった。


「電話していいよ」


 OKの返事がきた。


 俺は、


「ありがとう。じゃあ電話するね」


 と返信をした。


 これで、恋乃ちゃんに電話ができる。恋乃ちゃんのかわいくて甘い声を聞くことができる。


 俺は恋乃ちゃんに電話をかけようとする。


 しかし、恋乃ちゃんとの電話でのやり取りは、幼い頃にしたくらい。最近は全くしていなかった。


 急激に緊張してきた。電話をかけることができない。なぜこんな時に緊張してしまうんだろう。


 もう少しだ。もう少しで恋乃ちゃんの声を聞くことができるのに……。


 ここで、電話をするのを断念してしまったら、恋乃ちゃんとの仲はそれだけ進むのが遅くなってしまう。


 もう電話をするしかないんだ。電話をすることにしよう。


 俺は恋乃ちゃんに電話をかけた。


 恋乃ちゃんが電話をとるまでの時間。それは長かった。


 時間にして数秒でしかなかったはずなのだけど、数時間分に思えた。


「こんばんは」


 俺がそう言うと、


「こんばんは」


 と恋乃ちゃんは言った。


 恋乃ちゃんの声が聞けた、これだけでも涙が出そうになる。


 この後は、俺の想いを伝えていこう。


「俺、恋乃ちゃんの声が聞けてとてもうれしい」


「ありがとう。わたしも康夢ちゃんと話ができてうれしい」


「夜遅くに電話して申し訳ない。でもそれだけ恋乃ちゃんと話がしたかった」


「気にしなくていいよ。わたしももっと康夢ちゃんと話がしたかったし」


「俺、恋乃ちゃんがそれだけ好きなんだ。どんどん好きになってきている。恋乃ちゃんのことで心の中が一杯になってきている」


「康夢ちゃん……。わたし、まだまだ康夢ちゃんの想いに応えられるだけの女の子になっていないと思う。もっと努力するね」


「いや、今でも魅力一杯の女の子だよ。こんな素敵な子が恋人になってくれたんだ。うれしくてしょうがないよ」


「わたしも康夢ちゃんが恋人になってくれてうれしい」


 俺の想いが今日恋乃ちゃんに通じてよかったと思う。


「デートのことOKしてくれてありがとう」


「わたしの方こそ、誘ってくれるとは思わなかった。まだ付き合い始めたばかりだから、誘われた時は、わたしでいいのかな、と思ったの」


「恋乃ちゃん以外にデートを誘う人はいないよ。これからもいない」


「わたしも康夢ちゃん以外、デートする人はいない。これからもずっと」


 恋乃ちゃんはそう言ってくれた。


「映画を観て、レストランに行こうと思っているんだ。集合時間とか細かいことは、明日までに決めようと思っている」


「ありがとう。いろいろ動いてくれて」


「デートに誘っているのは俺だから、これくらい当然だよ」


「康夢ちゃん、昔から頼りになるね。そういうところも好き」


「これからもっと好きになってもらうよう一生懸命努力するよ」


「わたしも一生懸命努力する」


「今でも好きなのに、もっと魅力的になったら、それこそ恋乃ちゃんのことで心が一杯になると思う」


「そうなれるようにしたいと思っている。幼馴染としてではなくて、恋人として」


「俺も幼馴染としてではなくて、恋人として恋乃ちゃんの心を一杯にしたいと思っている」


 俺達はまだまだ幼馴染としての意識が強い。


 それを恋人どうしとしての意識に変えていく。


「俺、いいデートにしたいと思っている」


「わたしもいいデートにしたいと思っているわ」


 そろそろ夜の十二時になろうとしていた。


 名残惜しいが、そろそろ電話を終わらなくてはならない。


「今日はありがとう。恋乃ちゃんと恋人どうしになれて、とてもうれしかった。恋乃ちゃん、好きだ」


「わたしにとっても、康夢ちゃんと恋人どうしになれて、素敵な一日だった。わたしも康夢ちゃんが好き」


「まだ話をしていたいけど、また明日だね」


「うん。また明日電話で話をしようね」


 恋乃ちゃんも俺と話をしたいようだ。


 デートも仲良くなるのには大切だけど、こうして毎日話すことも大切だろう。


「それじゃ、また明日」


「おやすみなさい」


 こうして、俺達の電話でのやり取りは終わった。


 恋乃ちゃんのかわいくて、甘い声。これから毎日電話で聞くことができる。


 好きと言われるということは、とてもうれしいことだ。


 電話をしてよかったと思う。


 今日一日で、恋乃ちゃんとは、一気に親しくなった気がする。


 しかし、まだまだこれから。


 一緒に仲良く登下校したい。


 晩ご飯を作り合い、一緒に食べたい。


 恋人になったからには、こうしたこともしたいと思っている。


 今日はまだ電話だけで満足している。話すことができたのはうれしいことだ。


 しかし、俺は恋乃ちゃんともっと一緒にいたい。直接話をもっとしたい。


 それだけ俺は恋乃ちゃんが好きだ。


 今日電話でそのことも話そうと思った。しかし、さすがに、それは急ぎ過ぎだと思った。


 まずはデートに全力を注ぐ。


 そして、デートがうまくいき、仲が進んでいけば、そういったこともできるようになるだろう。


 今度の休日が待ち遠しい。


 恋乃ちゃん、好きだ。大好きだ。この想い、まだまだ伝えきれていない。


 デートの時、この想いを伝えていこう。


 俺はそう思うのだった。

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