第26話 いよいよ告白へ
俺はいよいよ今日の放課後、恋乃ちゃんに告白をしようとしていた。
朝からずっと緊張している。
あれから午前二時頃までデートの情報を集めていたので、睡眠が不足しているが、緊張しているので、眠さはそれほどない。
相変わらず食欲はないままだ。
朝は何も食べることはできなかった。
昼ご飯、といってもパンと牛乳だけど、牛乳は飲むことができたが、パンは半分食べるのがやっと。
「今日も食欲がなさそうだな。食べないと力が出ないぜ」
祐七郎が心配そうに言う。
「ルインのやり取りがうまくいかなかったのか?」
「いや、なんとかやり取りはすることはできた」
「よかったじゃないか。それじゃ食欲があってもいいんじゃないか?」
「ルインのやり取りはできたんだけど、それ以上に進みたくなってきた。俺、今日の放課後、恋乃ちゃんに告白しようと思っているんだ」
「いよいよ告白するんだな。よく決断した」
「そうなんだけど……。緊張しちゃって、食欲がないんだ。もう断られたらどうしょう、それが心の中を大きく占めてしまっている。いっそのこと、告白しない方が心は安定するんじゃないかと思って」
「緊張するのは仕方がないこととは思う」
「お前もそう思うんだな」
「俺だって、くらなちゃんに告白する時は緊張したから、気持ちはわかる。俺の場合、昨日も言ったけど、実際何度も断られたしな」
「やっぱりお前って、すごいやつだと思う。俺、恋乃ちゃんに断られたら、もう立ち直れないかもしれない。昨日お前に『断られたっていいじゃないか。お前の想いが本物だったら、何度でもアプローチすればいい』と言われて、その時はそうして行きたいと思ったんだけど、放課後が近づいてきて、また弱気になってきているんだ」
「まあ俺もお前と同じような状況だったからな」
「そうだったの?」
これは驚きだ。
「食欲はなくなるところまではいかなかったけど、俺もいつもより食べることができなかったんだよ。それだけ緊張していたんだろうな。告白する度にそれを繰り返していたな」
「お前のことだから、最初から強い心で、新月さんに告白していたんだと思っていたよ」
「俺も最初はお前と同じで弱かったところはあったと思う。でも回数を重ねていく内に、絶対に、くらなちゃんのことを恋人にしたい、という気持ちが強くなっていったと思う。もちろん、くらなちゃんが、他の人のことを好きになっていれば、あきらめたかもしれない。でもそういうところはなかった。ということは、俺の気持ちがどんどん強くなれば、好きだという気持ちが強くなれば、くらなちゃんはきっと恋人になってくれると思ったんだよ」
「そういう気持ちが大切だと言うことなんだな」
「まあ付き合ってみると、毎日ケンカばかりしているところはある」
「今日の朝もケンカしていたよな。よく毎日ケンカできると思うよ。嫌になったりしないの?」
「それはないな。恋人どうしになってよかったと思うことは、それ以上に一杯あるんだよ」
「のろけてくれるね」
祐七郎は少し顔を赤くする。
「まあ、俺のことはいいよ。とにかく緊張するなとは言わない。でもそれ以上に恋乃ちゃんのことが好きだという気持ちを強く持つんだ。そうすればうまくいく」
「俺は恋乃ちゃんのことが好きだ。その気持ちをもっと強く持てるようにする」
「その気持ちだ」
「ありがとう。いつも相談に乗ってくれて」
「いいってことよ。気にするな。俺は二人の幼馴染なんだ。誰よりも二人が幸せになることを望んでいるんだ。今日成功すればいいと思うけど、今日もしうまくいかなくても、あきらめることはない」
「お前の言う通りだな」
「じゃあ、放課後、うまくいくことを願っている」
そう言って祐七郎は微笑んだ。
そして、放課後がやってきた。
俺の人生の中でも、最大のイベントになるだろうと思う。
「とにかくお前の想いを伝えることが大切だ。俺は二人がうまくいくように願っているよ」
祐七郎が俺に温かい言葉をかけてくれる。
「ありがとう」
そう言って、俺は教室を出た。
まだまだ緊張している。胸のドキドキも大きくなってくる。
断られた時のことをどうしても思ってしまう。
やいなさんとりなのさん。彼女達に振られた時のことを思い出してしまう。
つらい思い出だ。またそのつらい思いを今日してしまう可能性もある。
しかし、今日俺はそれを乗り越える。
恋乃ちゃんに告白し、恋人どうしになり、ラブラブな人生を歩んでいく。
祐七郎も言っていたが、それには恋乃ちゃんに対する、好きという気持ちを強くしていかなくてはならない。
そう思いながら歩いて行く。
そして、待ち合わせ場所のグラウンドの端に着いた。
待ち合わせの時間までには、後十分ほどある。
秋晴れのいい天気。
夕方が近づいてきているので、少しずつ寒くなってきている。
ここは、悲しみ苦しんでいた俺を恋乃ちゃんが救けてくれた場所。
今日ここで、俺は恋乃ちゃんに告白する。
これからの二人の人生の旅立ちともいえる場所に、なってくれるといいなあ、と思う。
俺はベンチに座り、恋乃ちゃんが来るのを待った。
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